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ページ公開:2017/12/05


PROJECTプロジェクト GAIARAYガイアレイ


プラットフォームプレイステーション
開発アール
発売翔泳社
発売年月日1997年 10月
ジャンル3D対戦シューティング
プレイ人数1〜2人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
「チャロン」に類似 未完 既視感強し 粒ぞろい 大味 ツインスティック操作対応





・ゲーム概要

 プレイステーション初期に翔泳社から発売されたロボット対戦ゲーム。
 各プレイヤーが自身のロボットを背後からの視点で操作し、相手の攻撃を避けながら射撃や格闘攻撃を駆使して戦闘する・・・という基礎はロボットゲーならばおおむね共通することと思うが、本作は特に「ダッシュ」を用いた高機動戦闘やロボットそれぞれの立ち位置、ヒロイックなアクションが否応なく「電脳戦記バーチャロン」を彷彿とさせる一作。
 一応「必殺技」という独自のシステムが取り入れられており、また「チャロン」がリリースされないプレイステーションでのリリースであったわけだが、果たしてこのゲームは「バーチャロン」の代わりとなり得たのか、あるいはそれを超えることができたのか・・・見てゆくこととしよう。


・ゲームシステム

 繰り返しになるが本作はロボットを背後から見て移動や攻撃を操作する設計。移動は十字キーで、加えて「ダッシュ」、「ジャンプ」、「右武器」、「左武器」、「左右旋回」、「スペシャルアタック」、に対応したボタンがある。
 「右武器」は連射力に長け直進する武器、「左武器」は広範囲を攻撃したり追尾力を備えていたりと当てやすさを重視した武器、がそれぞれ設定される傾向にあり、また移動中や空中など機体の状態によって繰り出される攻撃が変化する。
 特に近距離においては右武器が近接武器や格闘攻撃の使用に切り替わり、相手との格闘戦を行うこととなる。
 「バーチャロン」で言えばLWとRWというところだが、この2種にゲージや弾薬などは設定されておらず、ゲーム中は基本的に撃ち放題である。

 「左右旋回」を同時押しする「しゃがみ」はこのゲームの重要な動作で、これを入力するとその場にしゃがみ込み遮蔽物に身を隠しやすくなるほか「スペシャルウェポン」の使用ゲージを溜めて使用可能とすることができる。
 「スペシャルウェポン」はゲージが溜まり切った状態でのみ使用できる必殺技で、地上では広範囲や高追尾力の射撃攻撃を、空中では対地突進攻撃を行うよう設定されている。
 当たれば3割超という高威力を誇る割にゲージはほんの一・二秒で溜まるので、対戦では弾幕を張って相手を回避に集中させる、強力な攻撃で転倒させる、ボムを投げて爆風に隠れる、などしてしゃがむ隙を作っていかにしてゲージを溜め、必殺技を放っていくかがカギとなるところだが・・・。

 ぶっちゃけたところほとんどの攻撃は地形に隠れてやり過ごせてしまい、さらに地形に隠れることで安全にゲージ溜めを行えるため、対戦では逃げの選択肢を選びやすい気がしてならない。
 当然地形に隠れてしまえば相手にとってもゲージを溜めるチャンスとなるわけだが、相手のほうが多くゲージを溜めた状況ならむしろこの行為によって状況を五分に持ち込め、さらには逃がすまいと焦った相手に必殺技を使わせるという誘導効果も期待できる。
 また本作は妙にジャンプ関連の性能が低く着地時の硬直も長め、放物線を描いて飛ぶ攻撃や地形を貫通する攻撃もごく限定的なため、地形に隠れた相手への攻撃手段が非常に限られているのだ。
 空中必殺技がかろうじて有効なくらいだが強制的に相手に接近することが不利となる機体もあり、またゲージが溜まった状態でジャンプするというわかりやすい予備動作をとってしまうので予見されやすいなどこちらはこちらでリスクがある。
 「ゲージ溜め」の概念がある必殺技の存在と「地形に隠れる」という回避行動に対する有効打のなさ、この二つが最悪な形で噛み合って本作は「バーチャロン」に倣った爽快感を自身で殺すような消極的な対戦バランスに仕上がっているのである。

 なお、本作にも相手を索敵する「ジャンプ」と「しゃがみ」による「ジャンプキャンセル」というアクションがある。
 が、ジャンプキャンセル時の降下がほぼ自然落下なうえ着地で硬直も発生するのでこのアクションで索敵するのははあまり有効ではない。
 対して「ダッシュキャンセル」時にも索敵が働き、また硬直が短く即座に攻撃に移れるので本作ではこれを中心に行うとよいだろう。
 「ズキューン」という独特の効果音もあり本作の特徴的なアクションなのだが、足を止めることからあまり回避に役立たずこの点も対戦バランスに影響しているのが残念なところだ。


・ストーリー

 ・オーパーツ「ニューロン」
 200X年南半球全域の大規模な地殻変動の最中、崩れ落ちたオーストラリアのエアーズロック地層から「ニューロン」と呼ばれるオーパーツが発見される。
 この「ニューロン」はマンマシンインターフェースとしての脅威な性能を誇り、およそ人間に可能なあらゆる操作をごく単純な信号に変換し転送できることが判明する。

 ・プロジェクト・ガイアレイ
 その半年後、日本札幌市内に突如巨大な隕石が飛来、隕石内部に存在する「未確認生命体」により、市内は甚大な被害を被った。
 連邦局はこのデータを収集、いつ現れるかわからない「未確認生命体」に対抗すべく「ニューロン」を搭載する、開発中の人型兵器「ニューロンキャリア」の量産計画「プロジェクト・ガイアレイ」を実行することに決定。その量産候補に6つの機体が選ばれる。
 もっとも優れたデータを持つ機体のみが量産化されるため、6つの機体は互いに試験戦闘を繰り広げることになる。

 ・ニューロンキャリア
 発見されたオーパーツ「ニューロン」を搭載する人型兵器の総称。
 パイロットは外部のPS(パーソナルシステム)コントローラから、「ニューロン」に信号を送信することにより操縦することができる。

 (説明書より抜粋)

 色々と突っ込みどころがある気もするが、特筆すると「実際にロボットを操縦していることをゲームをプレイしているように見せかけている」という設定がまんま「バーチャロン」なのはいかがなものだろうか、という点か。
 他には「本作のエンディングでプレイヤー機体1種類のみが量産体制に入ってしまうと物語が次回作につながりそうにない」ことも気にかかる。
 一方次の項で軽く触れるが本作の物語は未知との遭遇部分で終了しており、続編を作る気があったのかなかったのかは判断に困るところである。


・機体紹介

 以下では本作に登場する機体を紹介するが、参考として「電脳戦記バーチャロン」の機体と比較する一文も添えてゆく。
 あちらを未プレイの方にはお目汚しかと思うが、特徴を語るうえでは避けて通れないためどうかお付き合いいただきたい。

 ・LEVERTAD (リベルター)
 ゼネラルマシーンズ社製造。「もっとも汎用性の高い標準機」。
 スパークライフルを基本装備としボムとビームソードで殲滅力や格闘能力を補強、高い汎用性を獲得している。
 連射力の高い右武器に爆風が残って障壁となる左武器、デザイン的にはパンダカラーにツインアンテナなど「パトレイバー」に近いデザインだが性能的には「テムジン」のポジションだろう。
 必殺技は扇状に弾をバラ撒く「レイブラスト」と、ビームソードを構えて突進し縦回転斬りを見舞う「フライングレボリューション」。
 全体的に攻撃の硬直が長い傾向にあり攻撃の追尾性能も低く、イマイチこれといった強みに欠ける。

 ・EXALSIS (エクサルシス)
 デフィエレクトロニクス社製造。「空力特性に優れている」。
 肩部のウィングスラスターや鋭角的な形状から見て取れる通りの空中高機動機。
 右武器は連射力の高いビームマシンガン、左武器は扇状に発射するするミサイルスラッシュ、地上必殺技は胸部から青白い追尾エネルギー弾を発射する「ボディエナジー」と、清々しいまでの「バイパー2」
 ただ空中必殺技はビームソードを構えてきりもみ突進する「ファイナルストーム」で、追尾力に長ける遠距離武器がミサイルしかないあたり空中での選択肢は物足りない感がないでもない。
 むしろ地上で移動しながらミサイルをばらまく戦法で途切れることのない弾幕を張れることが圧倒的で、制圧力に長けた機体と見たいところだ。

 ・AUDACE (オーダス)
 トゥーゲントファブリーク社製造。「重火力装備にもかかわらず、軽敏な移動力を持つ」。
 大型の「アトミックバズーカ」を主力武器として携え、人型兵器ならではの射角の広さや対応能力の高さを利点として活かしている。
 左武器の「ストッピングマイン」という存在もありパッと見のシルエットは「ライデン」だがバイナリー・ロータスはなし。地上必殺技である地形を貫通する「ファイアーブラスト」は「ドルカス」の要素だろうか。
 近接攻撃と空中必殺技「サマーソルトアタック」(ビームソードで縦回転)ではバズーカで殴るのではなくビームソードを取り出して攻撃し、イマイチ特徴に欠ける感が。(一応、バズーカで殴る格闘攻撃はある)
 一番の強みは地形を貫通する必殺技の存在。通常攻撃はどれも当てづらい感があるが地形に隠れながら必殺技を連発するチキンプレイをとるとなかなか厄介な機体である。

 ・TENERITAS (テネリタス)
 ゼネラルマシーンズ社製造。「軽敏な動きで遠距離に強い」。
 魔法の?バトンを持った女性型機体で、ロングヘアーに当たるパーツは挙動に合わせて揺れる構造となっている。
 右武器は「シューティングスター」、左武器は「ハートボム」、地上必殺技は「スタージュエル」。「フェイ・イェン」がハート中心なのに対してこちらはスター中心というところだろうか。
 ちなみに空中必殺技はビームバトンを構えてきりもみ回転しながら体当たりする「ハニーダイブ」。
 売りとしている機動力だがあまり飛び抜けたものでもなく、エクサルシスの左武器をボムにしたくらいの無難な性能である。

 ・SYURA-DO (シュラドー)
 銀星工場社製造。「近距離戦闘を得意とする」。
 忍者をモチーフとしており強力な近接武器「レイブレード」を装備、機動力と合わせて格闘戦では他の機体を圧倒する。
 開幕の間合いで既に近接武器が使用可能となるあたり「アファームド」を想定していることは間違いないだろう。
 とはいえ右武器「シュリケンスライサー」と左武器「ハイパーボム」の性能はリベルターと同等、さらに地形を貫通する地上必殺技「ソニックブレード」を持つなど遠距離攻撃も充実しているあたりは目立った欠点のない機体と言える。
 なお空中必殺技は縦回転の「ミラージュブレード」。近接攻撃に忙しいのであまり必殺技の出番は多くないかもしれない。

 ・FIDUCIA (フィドゥーチア)
 川嶋重工業社製造。「最も強力な遠距離武器を持つ」。
 右武器は波状のエネルギーを発射する「パルスレーザー」、ここは「バル・バス・バウ」で、左武器の「ホーミングミサイル」は「ベルグドル」だろうか。
 最も強力な遠距離武器は地上必殺技の「フォトンキャノン」のことだが、撃つ前の硬直が長く追尾性能もないので先読みなしに当たることはないだろう。
 基本戦法としては弾速と追尾性能から避けづらく高威力なミサイルの連打。必殺技はリスクが高いので封印し、たまにパルスレーザーを混ぜるくらいの戦い方に落ち着くか。
 ちなみに空中必殺技「パトリオットアタック」を含む格闘攻撃はビームソードを取り出さないアームパンチ。フォルムが人型からかけ離れているあたりもこの機体だけデザイナーが違うのだろうか?

 ・LONGEVIT (ロンジェヴィテ)
 中ボス。川嶋重工業社製造の「連邦軍重機動戦略兵器」。
 ホバーによって浮遊する下半身に水平に伸びた長い肩、長い主砲を折りたたんだそのシルエットは戦艦とともに「バル・バス・バウ」と「ヤガランデ」を想起させるものである。
 右武器はカッター状のビーム、左武器はホーミングミサイル、地上必殺技は主砲発射。武器の性質的にはフィドゥーチアと同様だが、挙動や威力の観点ではほぼ上位互換だろうか。
 横回転しながら主砲でブン殴る空中必殺技など見た目も映える機体である。
 なお、ロンジェヴィテステージには一切の障害物がない。真っ向から打ち合うしかないので覚悟しよう。

 ・UNTITLED
 ラスボス。おそらくは隕石内部に潜んでいた未確認生命体の一体だが、単独で行動しておりこの接触で彼らの謎が明らかになることはなかった。
 「バーチャロン」において相当する機体はないが、スマートで肩のとがったフォルムなどはだいぶ「エヴァンゲリオン」っぽさがある。
 リベルターの必殺技サイズの弾丸を発射する右武器にエクサルシスのミサイルと同系の左武器、地上必殺技はロンジェヴィテらと同様の巨大ビーム発射。
 機動力も高く攻撃性能についていえばラスボスにふさわしい強さと評せるだろう。
 なお、ここのステージも障害物がない。このあたりを見ると障害物に隠れる戦法の有効度には開発途中で気づいてしまったが、根本的な解決ができなかったのでは・・・と邪推するところである。

 ・VIGOUREUX (ヴィグルー)
 隠しボス。米軍所属の機体らしく他のニューロンキャリアとは根本的に設計思想が異なるようだ。
 右武器はバルカン、左武器は相手をゆっくりと追尾する浮遊機雷、格闘や必殺技では拳を用いて攻撃するという肉弾派である。
 ラスボスと比べると目立った強さがあるとは言いづらいが、非常にバランスの取れた機体だと言えるだろう。


 ・・・斜体部の機体紹介は説明書より抜粋。要は、本作の基本機体6機は初めから「電脳戦記バーチャロン」の何機体かの立ち位置をなぞらえてデザインされているわけである。

 しかもそれでいて機体の武装のいくつかは相互にコンパチ、空中必殺技に至っては「ビームソードを構えて回転突進」以外ロクにアイディアがなかったのかと問いたくなるようなワンパターンぶり。
 こうも独創性が低いとなると、やはりプレイする側としては既視感を繰り返し味わうこととなり印象が陰ってゆくのは必至だろう。

 また、ボスステージで障害物がないことに触れたとおり各キャラクターには対応したステージがデザインされており、それぞれで地形の形状も異なる。
 ステージに合わせた戦略を練るのが対戦のポイントと言いたいところだが・・・。
 なぜか、対人戦に限ってステージ選択ができず地形が固定となっている
 音楽の変更だけはできるのだが、「バーチャロン」のデストラップステージを模したような巨大な障害物でお互いが隠れているこのステージは基本的なデザインとは言い難いところだ。
 当然地形に隠れる戦法も取りやすく、単純に飽きるということもあって本作の対人戦はあまり長く盛り上がらないことだろう。


・まとめ

 ゲームシステムからストーリー、ロボットのデザインまで「電脳戦記バーチャロン」を模したと思われる本作。
 しかしそこかしこに不出来な要素が見て取れ、独自色として取り入れただろう必殺技も「逃げ」を誘導する改悪となっている気がしてならない。
 「電脳戦記バーチャロン」をプレイ済みで本作の存在を知った人に浮かぶであろう、「パチモン」という印象そのままに留まる出来といった一本である。

 ただロボットのデザインは極端に悪いというわけではなく、3Dモデルを自由な角度から眺める隠しモードの存在もあってロボデザイン目当てで本作に興味を持つのは悪くない。
 個人的には、シンメトリーで両腕からビームソードを出せるエクサルシスのデザインやアクションが本家バイパー2よりも好みかもしれない。
 また音楽は意外なほどの粒ぞろいで、EDMのようにハイテンポなエクサルシスのステージ曲「Umi ni Ikitaina」、コーラス入りで運命的な対決を演出するロンジェヴィテのステージ曲「Communication From Ghost」、は特に必聴の出来だ。
 ゲーム部分に期待しなければ、という酷な条件の下でだが、リアル系ロボットのデザインや刺激的な音楽に目がない人は機会があれば手に取ってみてほしい。


・余談

 なお、今回の内容は酷評となったがそれは本作そのものが不出来だったからであり、「電脳戦記バーチャロン」のパクリだったこと自体はあまり問題視していないと明記しておきたい。
 個人的には、オリジナリティの強いゲームに対しそれを真似る「模作」が登場する事自体はさほど悪く思っていないのだ。
 例えば、近年では「マインクラフト」とその類似作が目に付くだろう。
 キューブ単位で構成された世界観の中で資源を集め、それらを材料に道具や建材を「クラフト」して生活を整えて活動範囲を広げたり敵から身を守ったりしてゆくというゲーム群だ。
 具体的な名前を挙げるとキリがないが、当サイトでも紹介している「クリエイティバース」や、「ドラクエ」シリーズの「ドラゴンクエストビルダーズ」、もっとリアリティのあるものでは「7 days to die」も当てはまるだろう。
 これらをまとめて「パクリ」と切り捨てることもできるが、それぞれが独自の魅力をデザインして実現しようとしているならばそこに価値を見出したい。
 元になったゲームがあるとしても、独自に新たな楽しみや世界観を加えることができれば別個の発展形として評価したいのだ。
 一方でこうした模作の登場が元となったゲームの方向性を狭めかねないという危惧や、特許法で保護されるように商業的な悪影響があるという問題もあり、「パクリ」を完全に許容できるわけでもないのだが・・・。
 最古のコンピューターゲームの一つ「スペースウォー!」が自由に公開されたことがその後のコンピューターゲーム史の基盤となったことを思うと、模作というのも分野全体でみれば発展の一助となりうるということを忘れてはならない思うのである。





・関連作品

・「電脳戦記バーチャロン」シリーズセガのロボット対戦ゲームシリーズ。
第一作はダッシュやジャンプからなる爽快なスピード感を持ち味とし、これを自動ロックオンの概念や「ツインスティック」という独特な筐体で余すとこなく実現した快作。
続編「オラトリオ・タングラム」はその正当進化系としてより高いスピード感とターボボタン同時押しによる攻撃のバリエーション増加を実現し、
「フォース」はネットワークを利用したタッグ対戦プレイや機体バリエーションというコンテンツの増加を実現した。
「マーズ」に見られるように世界観も練られており、いくつかのメディアミックスや「スーパーロボット大戦」へのゲスト参戦も果たした、オリジナルロボットを用いたロボゲーの代表作といった存在である。


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