サイトトップ/ゲームレビュー/遊戯王 フォルスバウンドキングダム 〜虚構に閉ざされた王国〜
ページ公開:2016/09/13


遊戯王ゆうぎおう フォルスバウンドキングダム 〜虚構きょこうざされた王国おうこく


プラットフォームゲームキューブ
開発コナミ
発売コナミ
発売年月日2002年 12月
ジャンルフィールドモンスターバトル
プレイ人数1人 (※対戦・トレード要素なし
セーブデータ3ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
壊滅的 ダイジェスト バリエーション低下 過去作の再録多し かなり粗い 「真DM」シリーズの派生形





☆今回のレビューはキャラクターゲームのレビューとなります。☆
※※今回のレビューは多めのネタバレを含みます。※※


・ゲーム概要

 週間少年ジャンプで連載されていた人気漫画「遊☆戯☆王」内の「マジック&ウィザーズ」をアレンジして商品化したカードゲーム、元祖「遊戯王 デュエルモンスターズ」。
 本作はこれに登場するモンスターと原作の登場人物たちをキャラクターとしたRTS(リアルタイムストラテジー)だ。
 遊戯や海馬たちが中世風のファンタジー世界「王国キングダム」の中でモンスターの軍団を率いる武将となり、圧政に苦しむ民たちの反乱を成功に導かんと奮戦して行く・・・という内容である。
 特に草原や荒野と言った戦場を往く3Dモンスターの雄姿は本作の魅力とされ、その最たる姿として「三幻神」が収録され物語の鍵ともなっている。

 また本作は「遊戯王 真デュエルモンスターズシリーズの流れをくんだ作品でもあり、キャラクターや音楽などの一部が使いまわ・・・再登場となっている。
 その他の特徴としては、本作には封入カードが無かったほか、遊戯王関連のゲームとしては珍しく対戦やトレード要素が一切無いという点が印象的か。
 遊戯王のモンスターたちが息づく虚構の世界観、彼らが展開する戦場、それを指揮する戦術性、魅力となりうる要素は多数秘められていると思うのだがさてその実現度は・・・?


・ストーリー

 本作の物語は武藤遊戯とその仲間たち、または海馬兄弟が新進のコンピューターグラフィックス関連会社「SIC社」に招待されるところから始まる。
 いわく、王国やバトル・シティの参加者、または海馬コーポレーションの社長に「マジック&ウィザーズ」を題材としたVR(仮想現実)ゲーム「キングダム」のテストプレイを案内したいということであった。
 やがて磯野という懐かしい顔に出迎えられた一行は恐る恐る「キングダム」のプレイ媒体を身に付け、不安と期待が入り混じるまま虚構の空間に圧倒されるものの・・・。
 次の瞬間、一行の意識はぷつりと途絶えてしまう。
 しばらくして各々が目を覚ましたとき一行は「キングダム」に五感を奪われており、虚構の世界の登場人物として囚われてしまっていたのだった。

 ・・・というのが主な導入部だ。
 暴君ヘイシーンによる圧政に苦しむシグワース帝国、中世イギリスをベースとしたロンドバル大陸、モンスターとそれを操る能力者「マーシャル」、と世界観はオーソドックスなファンタジーものである。
 この中で遊戯は民たちの自由を勝ち取る反乱軍のリーダーとして、海馬は王の意のままに反乱を鎮める近衛騎士団の団長として、「遊戯編」・「海馬編」それぞれの劇中劇を演じて行くこととなるわけである。

 しかし、この虚構世界の中では遊戯・海馬一行の他にも見覚えのある人物が多数登場することとなる。
 孔雀舞、インセクター羽賀、ダイナソー竜崎、といったデュエリストに、既に故人であるはずのバンデット・キースやペガサス・クロフォード、戦いを終えて故郷へと帰ったイシズ・イシュタールやリシド・・・。
 彼らには「人物本人」とそれをモデルにした「キャラクター」が入り混じっているもののいずれも遊戯や海馬たちの関係者であり、「キングダム」とこの事態の裏には遊戯や海馬たちを知る謎の人物の影がちらつきだすのだった・・・。

 ・・・評価にもつながるので少しネタばらしするが、この人物とは海馬コーポレーションの元研究員で、「神」を電脳空間に召喚する事に固執し今回の一件を起こしたという。
 それゆえに言動が全体的に傲慢不遜、常に遊戯や海馬たちを見下して小馬鹿にするうえに窮地に陥ると汚い奥の手も平気で使うという、まとめるとぽっと出の小物悪役という人物である。
 その設定はアニメ版の海馬乃亜、遊戯王Rの天馬夜行、と一部重なる部分があるが、彼らとは比べるべくもなく魅力に欠ける存在だろう


 また、細かい事なのだがゲーム開幕において磯野から「プレイ時間は数時間を想定しております」という言葉がある。
 実際にプレイした後で振り返ると「八汰烏」といい「ファイバーポット」といい想定外にも程があるなどと頭を抱えるところである。


・ゲームの流れ

 本作はRTSとして、草原や荒野と言った地形を持つマップの上で「マーシャル」という単位のユニットを動かし、敵マーシャルの殲滅や「拠点」の解放を目的としたシナリオを攻略して行く流れとなっている。

 「マーシャル」とは本作の骨子となる存在で、遊戯や海馬といったデュエリスト、および彼らに3体のモンスターを設定し、アイテムなどを持たせてひと固まりとした形態のことを指す。
 3体のモンスターはそれぞれデュエリストの「攻撃が得意」、「守備が得意」、といった指揮能力を受け、また移動や戦闘においてはRPGの1パーティーのように同時に行動してゆく。
 この3体の選択はなかなか重要で、例えば機械王のように同族を強化するモンスターは同族で組ませた方が良いし、サンダー・ドラゴンと二頭を持つキング・レックスなどはアイテムによって「融合」が可能、バーバリアン1号・2号などは特殊な連携攻撃を使用可能になる事もある。
 モンスターの能力値は・・・まあ後述するとして、こうしてシナジーを持つモンスターを組ませるのが本作のセオリーというところだろうか。

 また、モンスターに持たせるアイテムについてはファンタジーという世界観をフルに押し出した設計だ。
 ブルー・ポーションやレッド・ポーションが回復アイテムとなるのはもちろん、戦士族だけが所有できる装備アイテム(例:ドラゴン・スレイヤー)や魔法に長けた者のみが扱えるスクロールアイテム(例:ミラー・ウォール)などが登場し、OCGの世界観をそのままRPGの形に再現しようという試みが垣間見えるわけである。
 ・・・ただ、一歩下がって見て行くと「せいなるまもり」やら「ダークネス」やらと大半はオリジナル名称の物であり、先の試みについては単なる虚像だったのかもしれないが。

 「拠点」はマップ上に存在する町や城といった建造物で、ここにマーシャルを重ねると中に収容し回復やアイテムの補充と言った恩恵を受けさせる事が出来る。
 また対空・対地砲といった施設によって防衛の助けともなり、中立・敵軍に属する拠点は自軍のマーシャルが侵入する事で「解放」し報酬の軍資金を得る事が出来る。
 ゲーム中では敵の防衛する拠点を攻略して奪い取る事がシナリオのクリア条件となる事も多く、ともすればこの「解放」をゲームの大部分における目標として見てもいいかもしれない。


 さて、こうして争奪する目標があり、自軍と敵軍が存在するのなら、当然そこには「戦闘」が発生する
 のだが・・・。
 一旦ここまでの要素を振り返ってみよう、するとそこにはRTSながらもRPG的な要素が多数取り入れられていた事に気づく。
 マーシャルはパーティー、アイテムはそのまま、拠点はRPGの町で、さらにそれぞれが「大群のスケール感と操作の簡略性」、「OCGの再現度(は、やや怪しいが)と装備選択の戦略性」、「世界観の掘り下げとシナリオ目標の明確化」、といった具合に上手くRTSとRPGの要素が噛み合っている。
 またRTSというとせわしなく複雑でとっつきづらい感じもするジャンルだが、こうしたRPGらしさからプレイヤーの抵抗感を緩和する効果も期待できるだろう。
 そう、ここまでは良いのだ。
 だがそんな本作の戦闘はマーシャル同士によるエンカウントバトル制を採用しているのである。

 どういう事か。マップ上で動かした自軍マーシャルと敵軍マーシャルが接触すると「エンカウント」が発生して専用の戦闘画面に移行し、そこでターン制の戦闘が開始されるのである。
 これもRPGのシンボルエンカウントの変形と考えれば一見問題は無いのだが、本作は複数のマーシャルを同時に指揮するRTS。
 ターン制バトルなだけあって一戦一戦が時間を取り、複数のユニットが連続して戦闘に入ればその時間はさらに倍加、そもそもマップを見ている途中で戦闘画面に切り替われば作戦の考案が邪魔されるなど、いざ組み合わせてみると問題点しか見えてこない

 基本設定がこの状態で、さらに本作の場合は細かな仕様についてもまるで道理に沿わない設計が目に付く。
 例えば「エンカウントが発生した地点にカーソルがフォーカスされる」ため戦闘が発生した後は毎回マップのどこを見ているのか確認しなければならないし、反面任意のマーシャルをフォーカスするには「アイコンモード」へと切り替えてからマーシャルを選択するという手間がかかる、カーソルの選択範囲は調整できるが移動速度は変更不可、といった具合だ。
 そしてトドメは「本作はキャラクターの移動指示や情報確認の際にゲーム時間が停止しない」という事。
 すると先ほど列挙した仕様も相乗効果的に悪質さを増し、「移動先を指定しようとカーソルを動かしている最中に戦闘が発生するとマーシャルの選択画面を開くところから操作し直しになる」、「2箇所以上で戦闘が発生するとカーソルがあちこちにワープして退避命令一つ出せなくなる」、などという最悪とさえ思える操作性となる。

 反面「味方が近くにいる状態でエンカウントすると守備力が上がる」、「敵を複数の方向から挟み込むとダメージがアップする」、といった隊形の要素は一切無く、戦闘は常にマーシャル同士の1対1の構造。
 結局マップ上に表示されるのもマーシャルの中心に設定した1モンスターだけで大群を動かす感覚も無い始末、この設計はただひたすら残念というほかない。


・戦闘の流れ

 さて、マップ上での戦闘の流れを確認した後は戦闘画面での戦闘の流れについても詳しく見てみよう。
 1マーシャルが3体のモンスターで編成される通り本作の戦闘は3体のモンスター同士が向き合った構図を取り、「攻撃」、「防御」、「アイテム」といった行動をランダムにターンが回ってきたモンスターが1体ずつ行って行く形式。
 「ランダムに〜」ということで敵側が3連続で動く事もあれば同じモンスターが2連続で動く事もあり、この辺りは運の要素が強く含まれる。
 ただ、ターンが回って来ても行動にはモンスターごとに用意された「AP(アクションポイント)」という行動コストを消費する必要があり、手数についてはモンスターのステータスが明確に現れることとなる。
 また、両軍がAPを使いきった場合は「判定」で勝敗を決めて戦闘が中断されることとなる。

 ・・・この「AP制」が本作のもう一つの失敗であろう

 というのは、ターンの順番がランダムである事を行動量の上限で補ったことの反動としてか、本作の戦闘は一度に動く数字が小さく、しばしば全員のAPを使いきるような持久戦となるバランスに整えられているのだ。
 「遊戯王デュエルモンスターズ」と言えば一回の戦闘でモンスター同士の勝敗が付く明快なカードゲームだが、これではまるで逆である。
 モンスターのAPは成長するごとに増え、序盤は3〜5、終盤では2ケタに入るモンスターも登場してくる。
 これに一回の戦闘に参加するモンスター数「6」をかけた数十回の行動が戦闘ごとに発生し、しかもそれで決着が付くとは限らず、シナリオに登場するマーシャルの数がさらに乗算されて行くこととなる。
 こうなってくると3Dモンスターによって繰り広げられる戦闘、つまり「数秒間かけて繰り出されるモンスターの通常攻撃」全てがプレイ時間の引き延ばしとして重く、重くのしかかってくるのである。

 また、ゲームバランス的にも良くない。
 相手より先にAPの尽きたモンスターは無抵抗になぶり殺されるだけの存在となってしまうし、多少攻撃力が高かろうとAP数に開きがあれば攻撃の機会にも影響が出て結局総与ダメージが逆転するという事になりかねない。
 あの「ブルーアイズ」は素のAPが4(最大育成時・相性ボーナスなし)、AP7(同条件)のベビー・ドラゴンの方が活躍してしまうことだってありうるのだ。

 こうして戦闘のテンポも最悪と思える水準であり、「プレイ時間は数時間を想定しております」の一文はゲーム全編通して数時間どころかシナリオ一つで数時間かかかるというなんとも想定外な形で実現してしまうわけである。


・コレクション要素

 せめてもの救いを求めるようにマーシャルを構成するモンスターの収集方法について見てみると、残念ながらこれも面白みがない。
 具体的にはシナリオの途中でマーシャルと共に加入する、特定のマップを徘徊する「野良モンスター」として遭遇するのでこれを倒す、特定の拠点を解放すると救出できる、とおおむねこんなところ。
 仲間にしそびれる事が有っても任意のモンスターを積極的に加入させる方法は無く物語に流されるのみだ。

 そのうえで、本作に登場するモンスターは全177体(融合・変化含む)。
 インセクトクイーン、磁石の戦士α〜γ、ブラック・マジシャン(パンドラ仕様)とバトル・シティ編のモンスターが登場した反面「真デュエルモンスターズ」シリーズからは大幅にボリュームダウンし、「ワイト」、「ゴキボール」、「ドリアード」、といった準レギュラーどころも収録に落選。
 一方で本作には同名モンスターを複数入手するシステムが無く海馬の3体のブルーアイズに「アズラエル」、「イブリース」、「ジブリール」、と名前が加えられて別モンスター扱いになっているという采配もある。
 そしてこのゲームの目玉でもある「三幻神」だが、これは「遊戯編」・「海馬編」・クリア後の隠しシナリオで戦闘中限定の召喚用アイテムが手に入るという形で、残念ながらマップ上でその姿を見る事は出来ないようだ

 また、この一件についてもトドメがある。
 ゲームには「チャレンジモード」という戦闘のみをプレイするモードが用意されており、ここではゲーム開始前から遊戯・海馬編それぞれの全てのマーシャル、編成可能なモンスターが最大育成状態でコンプリートされているのだ。
 コレクションの楽しみについては、こうしてえげつないネタバラシの存在によって抱きえないものだと思われる。


・ゲームバランス

 マップに地形の概念はあるが障害物・侵入不可地形の概念が(ほぼ)無く、敵は自軍の本陣に一直線に突っ込んでくる。
 そんな単純な設計なので自軍のマーシャルも中継地点の設計が出来ず目標地点まで一本道に突っ込む以上の指示が出せない。
 そんな単純な設計なので敵は移動中の自軍マーシャルが「見えていない」らしく、拠点に突っ込むことしか考えていない。
 そんな単純な(略)ので大半のシナリオで敵の行動が「大将:本陣待機、残り:全員突撃」から始まる。
 そ(略)のでシナリオ中では撃破したマーシャルが一定時間で「リスポーン」し物量を底上げしている。

 ・・・とまあ、ここでも結構な破綻ぶりである。
 基本システムからああなのだから、まあ自然な結果ではあるが・・・。


・まとめ

 コンセプト自体には魅力があるものの、実際の内容を見ると戦闘周りのシステムが極めて劣悪でその魅力を実現できていない一本。
 遊戯王ゲーとして見れば「真デュエルモンスターズ」シリーズの方がはるかに魅力的で、RTSとして見れば操作性もゲームバランスも壊滅的、RPGとしてはイベントも物語も貧弱で、原作「遊☆戯☆王」を未読の場合はキャラクター達のやりとりに馴染めない恐れもある。
 ・・・ただ、「真デュエルモンスターズ」シリーズのファンという視点では使いまわ・・・再登場するキャラクターやBGMにキャラゲーとしての驚きを見いだせないでもない。
 特に遊戯編に登場するマーシャルの一人「フィズディス」は、過去どういう形で登場していたか思い出すとちょっとした感動がある
 ・・・かもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・「ブルー・ポーション」などのアイテムはシナリオ終了後に使用可能数が全快し、一度入手したら消滅する事は無い。
 ヒーリングを購入するより安上がりな事もままあるので積極的に利用しよう。

 ・「みはり台」が有れば対地・対空砲の射程が伸びるが、となりの拠点をカバーできるほどの効果は無い。
 ぶっちゃけ死に設備である。

 ・自軍マーシャルもリスポーン可能。死亡したモンスターの回復手段は限られるが、これならどこでも可能で資金もかからないぞ。
 (反面リスポーンまでの長い時間や積極的に全滅する抵抗感があるが。)

 ・「ゆうごう」持ちモンスターは強力だが、マヒやこんらんの効果で封じる事が出来る。メタとして用意しておきたい。

 ・エンディングに声優の記載がある割に本編では影も形も出てこない、というか既に死亡しているマリクは「遊戯編」・「海馬編」の後に登場するある人物のシナリオで・・・。

 ・ゲームを周回すると敵や自軍の初期モンスターのLvが30ずつ上がって行く。
 が、マーシャルや途中加入するモンスターはLv1のままなので相当えげつない。持ち越したアイテムで食い下がろう。





・関連作品

遊戯王 真デュエルモンスターズ 封印されし記憶「真DM」第一作。「闇遊戯の秘密に迫る」をコンセプトにしたストーリーであったが、すっかり「無かったこと」にされた一本。
ポケステとリモコンで天下が取れる。
 
遊戯王 真デュエルモンスターズII 継承されし記憶「真DM」第二作。「パーフェクトルール」という独自ルールを採用し、チェスのような盤上での移動の概念を取り入れた意欲作。
戦闘アニメーションに関してもより美麗となったが、音楽含めバリエーションは絞られたか。
 
・「遊戯王 デュエルモンスターズ」シリーズその他ゲーム版シリーズ。その多くは付属カードが本命で、ゲーム内容自体は不出来。
ただ、本作の前ではそう言うのもはばかられるか。
 


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