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ページ公開:2016/05/31


PROJECTプロジェクト ARMSアームズ


プラットフォームプレイステーション2
開発バンダイ
発売バンダイ
発売年月日1999年 6月
ジャンルアクション
プレイ人数1〜2人 (対戦モードあり)
セーブデータ50KB以上


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
かなり単調 死ぬほど忙しい人向け 再現度良好、漫画版寄り ハードロック調 かなり粗い 人間は決してARMSには負けはしない





※今回のレビューは若干のネタバレを含みます※
☆今回はキャラクターゲームのレビューとなります☆


・ゲーム概要

 週刊少年サンデーで連載されていた「ARMS(原案協力:七月鏡一、作:皆川亮二)」、およびそのアニメ化作品「PROJECT ARMS」を題材としたアクションゲーム。
 原作は「ARMS」という謎の機械生命体を体に宿した少年少女たちを主人公として、ARMSの秘密を知りその入手をもくろむ研究組織「エグリゴリ」や、自身の中に宿るARMSそのものの強大な力に抗い生き抜く様を描いた内容で、本作は原作の第4部までの戦いを再現した物となっている。
 ステージ攻略型のゲームとしてARMS達が繰り広げた「戦闘」部分をフィーチャーした内容は強大な力を振るう爽快感を期待する物なのだが、さてその内容は・・・?


・ARMSのアクション

 では、早速ではあるが「ARMS」を用いたアクションを通してアクションゲームとしての本作を見て行くこととしよう。
 本作はステージ攻略型の形態を取っており、3Dのマップの中を多数出現する敵を蹴散らしながら進行、道を阻む中ボスを倒しつつ、マップの最奥地に待ち構えるボスキャラクターを倒してステージをクリアして行くこととなる。
 この中で主人公が取れる攻撃アクションは主に

 ・生身で格闘する「通常攻撃」、
 ・ARMSの能力を用いて広範囲を攻撃する「ARMS攻撃」、
 ・ARMSの能力を応用して遠距離を攻撃する「遠距離攻撃」、

 の3通りがあり、また通常攻撃の連打からARMS攻撃へと派生させる「コンボアクション」や、空中に退避する「ジャンプ」及び「ジャンプ攻撃」といった概念もある。
 ステージ中では毎回100体前後という大量の敵が出現することとなり、この量的な不利を「ARMS」の豪快なアクションで切り開いてゆく爽快感がこのゲームの魅力と言えるだろう。
 また、この3種の攻撃は「」ボタンに「L1」・「R1」ボタンを組み合わせることで使い分けるという操作系であり、右手・左手を意識して動かすあたりは体の一部にARMSが発現する主人公らとの一体感を意識した演出なのかもしれない。

 ほか、ステージ中に登場し、攻撃する事で派手に爆発して周囲を攻撃できる「ドラム缶」の存在も本作の破壊のカタルシスに一役買っているだろうか。
 ただ、本作は視点の操作システムがかなり貧弱で「」ボタンでキャラクターの向きに合わせて移動するのみ、右スティックに機能が割り振られておらず遊んでいるという難点がある。
 敵集団を相手にするゲームだけあって自分の周囲をグローバルに把握したい場面が多々あるのだが、スティックを倒しての見渡しは不可、カメラのズームイン/ズームアウトもなく、画面端にあるミニマップ機能がせめてもの救いと言う辺りは余計なストレスがたまる設計と言える。


・1Pモード

 では、アクション内容を確認したところで実際に本作のメインモードをプレイして見るとどうだろうか?
 「New Game」を選択すると突如ロック調の音楽が流れだして「Stage1 Aisora City」を襲撃する義手を付けた兵士たちが映し出され、これに応戦するように4人の少年少女たちが飛びだして兵士たちを蹴散らしてゆく。
 あっけに取られている間もなくプレイヤーは一人の少年を操作している状態となり、画面の奥から大挙して押し寄せてくる兵士たちと他の3人の仲間たちとで見る見る間に戦闘が始まってしまう。

 ・・・そう、本作はプレイヤーにストーリーを説明する気が一切無いらしいのである。
 なぜこの4人の少年少女たちが戦っているのか?この兵士たちは何者なのか?どういった経緯でこのような状況に陥ったのか?
 恐らく、原作を未読の方にはこのような疑問が湧いて止まらない事だと思う。

 そして、原作を既読の方はなぜ既に恵が加入しているのか?なぜ一面でいきなり藍空市が襲撃されているのか?ここで戦闘するのはエグリゴリのサイボーグ部隊では無くレッドキャップスの面々では無いのか?という別の疑問で頭が溢れんばかりだと思われる。
 次のステージではこの超展開がさらに加速、鐙沢村が舞台となり、キース・レッドが登場後10秒くらいでグリフォン形態になってジャバウォックと対決するという時系列も舞台も登場人物も遥か彼方と言うフリーダムっぷり。
 X-ARMYは?レッドキャップスの面々は?というかカツミはどうなった?それらの疑問は口にする間もなく、「Stage2 GALLOWS BELL」によって物語の舞台はアメリカへと光より速くブッ飛ぶこととなる。


・原作再現度

 本作の視覚的な原作再現度は、決して低くはない。
 やや面長すぎるきらいはあるが主人公たちの容姿は原作(絵面の濃いアニメ版と言うよりは漫画版)の特徴を押さえており、テクスチャの質もTシャツのしわが描かれる程度に細かい。
 体に備わったARMSも攻撃などで柔軟に変形し、また単行本の表紙やタイトルロゴを飾る「ジャバウォックの爪跡」はARMS攻撃のエフェクトとしてその形を見る事が出来る。
 覚醒状態のARMS同士で繰り広げられる戦闘も体が大きい分のスケール感があり、断片的なゲーム画面を見れば期待感をくすぐられる事だろう。

 ただストーリーについては前述の通り、ステージ間を補完するようなイベントも無く、プレイヤーは説明書に書かれた数行のあらすじ・キャラクター紹介から想像で保管するのみだ。
 パッケージ裏に「圧倒的戦力を誇る「エグリゴリ」に対し、戦いを挑むオリジナルARMSたちの活躍を完全再現!!」と書かれているアオリ文はちょっと景品表示法に引っかかるレベルじゃないかと老婆心を抱かずにはいられないところである。

 何と言っても、ゲームシステム的な出番を作れなかったのか何なのか「原作のメインキャラクター(と、言える人物)の半数程度が未登場」と言うのは痛い。
 戦闘での出番がないためかアル・ボーエンが未登場、X-ARMY編が丸々カットされているため「天使」ユーゴーが未登場、普通の人間であるためか「ブルーメン」が未登場、ゲームバランスが壊れるためか人間的な成長を描くシーンが無いためか「風」が未登場、(なのになぜか「ボビー」が操作キャラとして登場、)と、とてもではないがキャラクターゲームとは思えない内容である。
 というか、作中でキャラクターにセリフが一切なく全員が終始無言なあたりホントにキャラゲーとする気はなかったんじゃないかと思いたいくらいである。


・対戦モード

 さて、本作にはプレイヤー同士でキャラクターを競わせる「VSモード」もある。
 1Pモードでは使用できなかった高槻涼以外の3人とそれぞれの覚醒形態が初期から解放されており、また1Pモードを攻略する事で敵キャラクターが少しづつアンロックされて行く。
 1Pモードもまた1周クリアする事でキャラクターセレクトがアンロックされるので、どうせ内容も薄い事だし 1周クリアしてからがこのゲームの本番と言うところだろうか。

 で、キャラクターを解放し実際にプレイして見るとどうかと言うと・・・。

 一応全キャラクターに遠距離攻撃があり、相手の遠距離攻撃にタイミング良くARMS攻撃を合わせる「弾き返し」というシステムもあるものの、高槻涼のジャバウォックなど近距離型のキャラクターは飛び道具型の相手に圧倒的に不利な条件が付いている気がしてならない
 特にARMSが戦闘向きでないため銃火器で戦う久留間恵はかなり上位に食い込むキャラクターで、システム上ガードが無いため距離を取って銃を連射しているだけで固めが可能、出の早い浮かせ技が有ってキック一発からお手玉開始、そもそも銃弾が弾き返しの効果を受けないという暴れっぷり。
 人間は決してARMSには負けはしない!
 これ以上のぶっ壊れキャラとしては飛び道具でも狙えない頭上へ逃げて踏みつけ攻撃で一方的に奇襲を仕掛けられる巴武士か、遠距離攻撃連打で原作通り逃げ場の無い圧倒的な弾幕を形成できるチェシャキャットかといった面々が思い当たるのだが、まあ対戦バランスには期待しない方が精神衛生上よろしいと思われる


・まとめ

 「ARMS(ないし「PROJECT ARMS」)」の世界観を再現して強大な「力」を振るう爽快感の演出に取り組んだゲーム
 ・・・だとは思うのだが、いかんせんストーリー面の薄さによってプレイヤーは置いてけぼり、ゲーム中では素性不明の敵の群れの中を暴れ回って突破するという展開が何度も繰り返されるため食傷感を感じやすい。
 この食傷感には、何の説明も無しに登場するキース・シリーズが全員同じ顔で名前と服装だけが違うエリアボスのような扱いとなってしまっているあたりも響いてしまっているだろうか。

 またステージ中で破壊できるオブジェクトの種類が少ない(ゲーム全編(VSモード含む)通して「ドラム缶」が設置してあるくらい)、対戦プレイに対応しているのにメインゲームで協力プレイが無い、など細かい部分でゲームとしての物足りなさも感じられるだろうか。
 原作で実現しなかった夢の対決を再現するといった楽しみはあるが、原作を読んでいるとキャラクターが物足りず、原作を読んでいないと展開についてゆけず、どうにも惜しい一本である。





・関連作品

スプリガン ルナヴァース本作と同じく皆川亮二氏作の漫画「SPRIGGAN」を題材としたアクションアドベンチャーゲーム。
ただ、その内容は・・・。


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