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ページ公開:2015/04/14


OUT LIVEアウトライブ Be Eliminate Yesterdayビー・エリミネイト・イエスタデイ


プラットフォームプレイステーション
開発サンソフト
発売サンソフト
発売年月日1997年 7月
ジャンル3DダンジョンRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ2ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
緊張感あり 暗い バリエーション豊富に 声優は豪華
BGMは暗い
粗い 原作あり、
「アウトライブ(1989、PCE、サン電子)」





・ゲーム概要

 1989年にPCエンジンで発売されたゲーム「アウトライブ」をベースに製作された3DダンジョンRPG。
 TVゲーム黎明期には異色的なロボット物の3DダンジョンRPGとして発売された「アウトライブ」の世界観や基本システムを骨組みとして、グラフィックの3D化やキャラクターボイスの追加といったメディア面のアップグレードを施した一本だ。
 とはいえ、内容自体にも多くの手が加わってオリジナル版とは別物になっており、以下はあくまでプレイステーション用ソフト「アウトライブ Be Eliminate Yesterday」のレビューとして行うこととする。


・ゲームの流れ

 本作は未知の惑星に眠る古代遺跡を「ダンジョン」として、人型機動兵器「FW(ファイティング・ウォーカー)」による探索を行ってゆく内容を持つ。
 それぞれの遺跡の探索は遺物の発見や強敵の撃破といった目的を持つ「ミッション」として扱われ、インターミッションやイベントとまとめられたステージクリア式のゲームとなっている。

 うち、ダンジョン内のシステムはなかなか個性的だ。
 壁や柱が並べられた中を主観視点で行動し、左右に向き直って四方を確認しながら敵キャラクターやアイテムを探してゆく・・・という3Dダンジョンの基礎を押さえつつ、本作はそれらの行動を「ターン」ではなく「時間」によって管理しているのである。
 「時間」というのはリアルタイムのことでは無く、ターンより細かく分けられた進行の管理の単位の事だ。
 これといった用語として定義されていないため、以下では混乱を防ぐ意味で便宜的に「クロック」と呼ぶこととする。

 ダンジョン中で行動するとその行動に応じてクロックが経過し、また経過したクロックに応じて敵の行動や回復の処理が反映されて行くこととなる。
 例えば一歩移動する時間を1クロックとすると、近距離用のサブマシンガンは攻撃に8/256クロックかかり、広範囲を攻撃するミサイルは32/256クロックかかる、といった具合だ。
 こちらと同速度の敵であれば、移動ではターン制のように等間隔で移動するものの、攻撃時の硬直ではコマ送りのように少しずつ移動してくる事になるわけである。
 「×」ボタンではターン送りならぬクロック送りも出来、クロックの調整は敵との位置関係を整えるうえで重要な要素となっていると言える。
 また、武器には攻撃後に「リロード」を挟む必要もある。
 本作はこのリロード時間で武器の時間単位の使用回数を調整しており、サブマシンガンであれば1〜3クロック程度、ミサイルであれば4〜5クロック以上かけて弾丸やエネルギーを最充填しなければならない。
 強力な武器ほどリロードに手間取ることとなるので、その射程や攻撃範囲を含め武器の使い時は良く見極めたいところ。
 本作の主人公機「ZERO」はこれら武器を同時に4つまで搭載できる設計となっているため、回転率を揃えた組み合わせ、距離を補う組み合わせ、瞬間的な火力を高める組み合わせ、といった装備の選択が重要なゲームバランスになっていると言えるだろうか。

 ・・・ただ、攻撃するたびに何クロックと足踏みを行わなければならないのは戦術面とは別に面倒くささの目立つところ。
 攻撃の硬直とリロードを一体化できなかったのかと、少々惜しく感じる部分だろうか。


・FWのカスタマイズ

 さて、本作の主人公機「ブラウディス」についても触れておきたい。
 機体名は「ZERO」、外見は白地に黄色のトリコロールカラーで、頭部のアンテナや胸の排気口がなんとも連邦のアレっぽい。
 両肩、両手、にそれぞれ武装を取り付ける事が出来、両手には取り回ししやすい銃タイプの物を、両肩には反動の大きいミサイルタイプの物を中心に装備可能である。
 本体のパーツは、
 防御力を決定する「アーマー」、
 特定の攻撃に耐性を得る「コーティング」、
 耐久力を決定する「フレーム」、
 索敵や回避能力を決定する「センサー」、
 エネルギーの容量を決定する「コンデンサ」、
 シールドの能力を決定する「ジェネレータ」、
 回避率を左右する「ナーヴワイヤー」、

 からなり、「ファクトリー」で画像とスペック付きのカタログからそれぞれアップグレードが可能となっている。
 なかなか妄想が広がるところだが、3Dダンジョンとしてもっぱら主観視点でゲームの進む本作、こうしてカスタムした機体を見る機会がないのはもったいないところだろうか。
 パッケージ裏ではこれを様々なカスタマイズが可能と推しているのだが、装備はともかくパーツの方は順々に上位互換のパーツへ付け換えて行く形となるのでこの文句は少々首をかしげるかもしれない。

 なお、些細なことだがこれら武器の操作にも触れておきたい。
 「」ボタンと方向キーで攻撃したい敵を選択し、L・Rボタン各種で武器の使用を決定、再度「」ボタンで発射。
 両手の武器がそれぞれL2・R2、両肩の武器がそれぞれL1・R1、と直感的に割り振られており、機体の操縦を体感させる設計だ。
 複数箇所の武器を同時に発射することも可能であり、LR全てを同時に押し込んで一斉掃射を行うのはなかなか小気味よいだろう。

 また、それら武器やパーツを調達するための資金まわりのシステムもなかなか特徴的だ。
 本作で資金を得る手段は、主に「撃破ポイントの換金」、「デュエリングのファイトマネー」、「アイテムの売却」、の3つだ。
 先ず「撃破ポイントの換金」についてだが、本作に登場する敵キャラクターは基本的に超古代文明の遺跡を守る警備メカであり、本人たちは現代文明の通貨を落とさない。
 一方でそれら敵キャラクターを撃破した実績が「ポイント」として貯まり、これを役所で換金することで資金として扱えるという形になっているのである。
 手間は増えるが、設定のリアリティを強調した形だと言えるだろうか。

 反面「デュエリングのファイトマネー」や「アイテムの売却」では、現金がそのまま獲得できる。
 特に、FW同士の対戦によってファイトマネーを獲得する「デュエリング」は本作がロボゲーだという事を意識し直すユニークなシステムだ。
 デュエリングにはF〜Aまでの「ランク」が存在しており、プレイヤーは自分と同ランク以下の相手を選んで対戦、勝利することで相手に応じたファイトマネーを獲得して行くこととなる。
 本作ではストーリー上用の無いダンジョンには立ち入れないようになっているため、ここでの金策は重要だ。
 この際の対戦相手「デュエリスト」はそれぞれに名前、顔グラフィック、コメント、と自分の機体を持っており、なかなか個性が感じられると言えるだろうか。

 ・・・ただ、本作の「デュエリング」は町の移動などに関係なく常に一定の対戦相手が用意されており、またそれぞれのキャラクターはデュエリング以外での出番がない。
 原作「アウトライブ」では町のNPCとデュエリングを行って味方として行くというシステムがあったのだが、本作はシステム面でキャラクターの個性を活かせておらず、投げっぱなしにした状態と言えるだろうか。
 また、資金を稼ぐ場合は繰り返し対戦するであろう高ランクのデュエリストほど人数が少ないという難点もある。
 上級者ほど人口が少なくなってゆくのはリアルといえばリアルなのだが、資金調達の手段である以上は食傷感ばかりが気になる形であるかもしれない。


・ストーリー

 地球連邦の樹立後間もなく、人類は銀河宇宙に進出した。
 やがて、白鳥座・エリダヌス星系で異星人トリテアと遭遇、誤接触により、恒星間戦争へと突入した。エリダヌス大戦の勃発である。

 同じころ、惑星ラフラ=デニスの地下遺跡から、トリテア人をも上回る未知の古代技術と超兵器が発見された。まだ謎の多いラフラ文明の技術を一部応用して、地球連邦軍は新たな機動兵器を開発した。
 単身搭乗用二足歩行型戦闘ユニット、
 FLX-010:通称ブラウディスである。
 ブラウディスの実戦投入が、戦況を優位に変えていったのである。
 やがて、『地球・トリテア講和協定』により三十年に及んだエリダヌス大戦は、いずれを勝者にすることもなく、終結した。
 大戦時の前線となった広大なエリアは、不可侵領域と定められ、人々は<エデン>と呼んだ。

 大戦から百年が過ぎた頃、<エデン>の未開惑星ステープルで、ラフラ=デニスの古代遺跡と類似した文明の痕跡が発見された。

 この時はまだ誰も、その遺跡が、人類が受け継ぐ事になる恐怖の遺産であることなど、知る由もなかった。

 (説明書より抜粋)

 ・・・と、基本的にはSF作品だが「超古代文明」の影響が強いあたりはファンタジー色の強い内容だ。
 とはいえ、「秘密結社クラフト」、「古代神ハスター」、「カオス遺跡」、といった作中の単語から読み取れる通りその内容はファンタジーと言ってもダークファンタジー、「クトゥルフ神話」の要素が取り入れられたものである。
 作中の物語は難解なうえ読み進めるほどに陰鬱な表現が増す仄暗い物となっているので、少々覚悟が必要かもしれない。


・キャラクター

 ・アイ=ノーデンス (CV:山寺宏一)
 主人公。かつて帝国宇宙軍の最強部隊「デアデビル」の部隊長として活躍した凄腕FW乗りで、現在はある事件を機に除隊して非合法な運び屋として活動している。
 だが当時の血なまぐさい過去はぬぐいきれず、今回はかつての上官であるエイモス将軍の計略によってアリス捜索の任務を押しつけられることとなった。
 性格は一見冷淡な皮肉屋だが、それは本来のキレやすく激情型な自分を押さえるための物らしく、結果として性格が歪んでいる。
 作中では特に心を開くという事も無くずっとその性格なので、あまり主人公らしくない

 ・アリス=ソマーズ (CV:椎名へきる)
 ヒロイン。惑星ステープルに眠る「カオス遺跡」の発掘チームの主任研究員を務める人物。また、アイの恩人であるラバン大佐の娘でもある。
 現在は一ヶ月前の発掘調査より消息不明となっており、遺跡の調査を急ぐエイモス将軍からアイへと捜索の任務が出されることとなった。
 性格は典型的な学者肌といった人物で、遺跡の調査や保護を第一に考える一方でそれを軍事利用しようとする人物や組織には危機感をあらわにする。
 作中では中盤までその行方を追うため本人の登場が遅く、それでいて主人公より遺跡の方に夢中なのであまりヒロインらしくない

 ・エイモス=アルデバラン (CV:非公開?)
 帝国宇宙軍の将軍であり、かつてのアイの上官。
 惑星ステープルに眠る超文明の遺物を目的として私的に活動しており、行方不明中の発掘主任の捜索を都合のよい優秀な部下へと押しつけた。
 一目で警戒するような悪人顔であり、アイやアリスについては上手く利用しているだけなのであまり味方だと思えない

 ・ジョウ=ムラサメ (CV:速水奨)
 貿易商<ラディカル商会>のオーナー。
 真っ当な貿易商として利益を上げる裏で遺跡の盗掘品の取引も行っており、今回は犯罪組織<ソルプレッサ>に接触しようとしたものの失敗。
 消息を絶った営業マンの情報を集めるために腕の立つデュエリストを探しており、特A級の経歴を持つアイに依頼を持ちかけることとなった。
 紳士然とした振る舞いの一方で一般人らしからぬ鋭い眼光を見せており、アイは上手く利用し合おうとする一方である種の警戒心を抱いているようだ。

 ・ジョディ=ウェイトリー(CV:折笠愛)
 <ラディカル商会>の管理を任されている女性。
 ムラサメと同様只者ではないらしく戦闘オペレーターとしての能力もあり、作中ではアイのオペレーターとして活動する。

 ・ボルク (CV:小林清志)
 惑星ステープルで執り行われている「デュエリング」競技の胴元を務める人物。
 第一遺跡アテナを発見し、発掘の拠点として一大都市を築きあげた先代ボルク=クラインの名と遺志を継いで活動しており、「カオス遺跡」の発掘にも積極的に取り組んでいる。
 ムラサメの依頼によって旧市街地でひと暴れしたアイに目を付け、デュエリングと遺跡発掘の両面で手を組もうと持ちかけることとなる。

 ・サマラ=ラスムッセン (CV:藤田淑子)
 遺跡発掘のためににぎわったアテナ旧市街地を根城とする最大の犯罪組織<ソルプレッサ>の女ボス。
 アイを坊や扱いするなど女ボスらしいしたたかな人物であるが、最近は別の犯罪組織<クラフト>との騒動に疲弊しているらしい。


 ・・・キャラクター同士のやり取りは全体的に殺伐としており、皮肉こそあれ冗談や雑談の類は滅多に見られない。
 NPCとの会話もおおむねその調子なので、プレイ後の後味は非常に疲れるものとなっているだろうか。

 事務的な相手とはいえ、ア○ミラのごとく胸を強調したデザインの武器ショップ店員が本作における数少ない癒しかもしれない。


・まとめ

 「時間」の概念によって3Dダンジョンの内容にリアリティと戦略性を与えている本作。
 ロボットという世界観とシステム面の要素もマッチしており、ダンジョン周りはそこそこ魅力的だ。
 ただしストーリーやキャラクター面は重苦しいうえにひねくれており、これが所々ビジュアルやサウンドのデザインにも表れているため、ゲーム全体としては疲労感の積もる内容にまとまってしまっているだろうか。
 あまり気楽に楽しめる内容では無いということを踏まえ、システム面にどれほど興味を抱いたかで手に取るかどうかを判断したい一本だ。

 ちなみに、クトゥルフ神話モノとしてはそれほど再現にこだわっていないので期待しない方が吉である。


・ワンポイント攻略

 ・最初のダンジョンには落とし穴の向こうにあって回収できないアイテムがいくつかある。どうしようもないのであきらめよう。
 ・最初に買い替えたいパーツはセンサー。初期パーツが貧弱なので1段階アップグレードするだけでもだいぶ楽になるはずだ。
 ・ダンジョンを終えても機体は回復していない。メンテナンスを忘れずに。





・関連作品

・アウトライブ原作。時代を先取りしすぎたPCエンジンに相応しく、ロボット物の3DダンジョンRPGという異色の内容を持っていた一本。


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