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ページ公開:2014/09/23


LUNATIC DAWNルナティックドーン TEMPESTテンペスト


プラットフォームプレイステーション2
開発アートディンク
発売アートディンク
発売年月日2001年 2月
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ400KB以上


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
アクション的 自由度なし 非常に粗い ボイス豊富 序盤が鬼
―SIMPLEシリーズVol.○○―
THE 冒険

(大ウソ)





※今回のレビューは多少のネタバレを含みます。※


・ゲーム概要

 ファンタジー世界を舞台にプレイヤーが思うままの自由な冒険を繰り広げる「ルナティックドーン」シリーズの一作。
 プラットフォームを「プレイステーション2」としたことでグラフィックは3Dとなり、臨場感が増したほか大ボリュームの内容が楽しめる
 ・・・はずだった
 実際は「自由な冒険」というシリーズ共通の理念からかけ離れた内容で、その後のシリーズを途絶えさせる大事変テンペストとなった一本である。


・パッケージ裏

 ゲーム内容に入る前に、パッケージ裏のアオリ文を少し抜粋してみたい。
 先ずは概要として書かれた物の後半部だが、

 <自由な冒険>が好評の『ルナティックドーン』シリーズ――
 そのスピリッツを継承し、新たな冒険の地平を拓く『テンペスト』。
 大いなるドラマの幕を開けるのは……そう、あなたなのです。

 ・・・というものがある。
 ここのみを見ればシリーズの正当後継作としての期待をあおられるだろうか。
 一方で前半部を見てみると・・・

 亡き父への憧れを胸に、冒険の旅に出た少女ヒーローは、
 世界を放浪しながら、少しずつ冒険者の喜びを見出していく。
 だが……やがてたくましく成長したヒーローの前に、
 思いもよらぬ「運命」という名のテンペストが吹き荒れるのだった――

 と、ある。
 つまりこのゲームの主人公はプレイヤー自身ではなく、ヒーローという用意されたキャラクターであるわけである
 それも冒険者となるために髪を切り落として男装しているなど設定の主張が強く、感情移入しづらいキャラクターとして描かれてしまっている。
 この時点で自由な冒険のスピリッツにはかなりの陰りが見えるのだが・・・。

 ドラマ
 シェイクスピアの戯曲を題材にとった、波乱に満ちた大河ドラマ

 という文も有る。
 ・・・つまり、キャラクターのみならずストーリーも明確に設定されてしまっているのである
 「自由な冒険」を押し出しつつ「波乱に満ちた大河ドラマ」というコピーを掲げているあたりは意味不明というほかなく、この時点でさえゲーム内容には相当な不安が見て取れるだろうか。
 ついでに、「〜テンペスト」というタイトルの割にシェークスピア作品の「テンペスト」とは全く接点のないストーリーであるのも不安なところ。

 とはいえ悲惨は単独では訪れず、続く者を引き連れてくる。まるでその悲惨を引き継ぐような。と言う通り、このゲームの「テンペスト」たる点はまだまだ序幕でしかないのである。


・ゲームの流れ

 では、実際にゲーム内容の流れについて見て行きたい。
 本作は主人公「ヒーロー(名前変更不可)」を操作して冒険の旅を行うと言う内容で、舞台となる大陸の中のさまざまな「国」や「地域」を移動しつつ、人々の依頼やモンスターとの戦闘をこなしてゆくこととなる。

 先ずは、国や地域の移動方法について。
 本作の舞台となる大陸はいくつかの「国」に分かれており、その領土を描いた地図の上で都市や施設といった「地域」を選択することで移動を行ってゆく。
 また国から国へと移動する際は「関所」を通過する必要が有り、通行するためにはそれぞれに対応したイベントの消化が必要となっている。
 ・・・対応したイベント、というのは例えば関所を通るための通行証を手に入れたり、その国の重要人物に旅のアドバイスをもらったり、というものだ。
 物語仕立てではあるもののその大半は国内で移動できる3つ、4つ、の物足りない地域だけで完結する程度で、実際のゲーム内容はほぼ一本道でフラグ立てに奔走するような内容にまとめられてしまっている。

 一方でそんな自由度に乏しい流れの中、プレイヤーの判断で自由に行うことが出来る「依頼」という要素も有る。
 シリーズにおける「依頼」とは、人々から「アイテムの調達」や「モンスターの討伐」といった頼み事を受け、解決することで報酬を得られるシステムである。
 あるのだが・・・。
 本作の「依頼」は酒場で一括して管理されているものではなく、各地域の民家を訪れて住人から直接受けると言う流れとなっている。
 そして、実際は正式な依頼よりも「○○のような道具が欲しい」などと独り言を漏らす住人に旅先で買ってきたアイテムを渡すといった「おつかい」の方が大半を占めており、またそれらは一度達成したら二度と発生しないなど報酬目当てでは相当頼りないシステムとなってしまっている。
 「行うかどうか」に関してはプレイヤーの判断にゆだねられているものの、複数提示される依頼の中からリスクリターンに見合った物を選択し、任意に繰り返して冒険の土台にする・・・という重要度は失われていると言えるだろうか。

 結局移動にしろ依頼にしろ本作は「ルナティックドーン」シリーズの魅力であった「自由度」を面影も無く失ってしまっており、明確に定められた物語も相まってとてもシリーズ作品とは思えない、大事変テンペストたる内容となっているわけである。


・ジョブ

 なお、本作には「ジョブ」という名のシステムも有る。
 RPGでジョブと言うと「僧侶」や「遊び人」、あるいは「赤魔道士」や「暗黒騎士」といったキャラクターの戦闘スタイルを左右する要素が連想されるだろうか。
 まあ、本作では全く関係のない内容なのだが。
 本作の「ジョブ」とは、鉱山で鉱石を掘ったり、狩猟場で獣を射とめたり、といった依頼外でお金と能力値を稼ぐ要素を指した言葉だ。

 具体的には、
 鉱山の中で体力のペースを見つつ鉱石を掘り集める「採掘ジョブ」、
 狩猟場で弓矢を使って獣を射とめる「狩猟ジョブ」、
 劇場で「ロミオとジュリエット」を演じる「演劇ジョブ」、
 カジノでポーカーに勤しむ「ギャンブルジョブ」、

 の4つ。
 ・・・早い話が、ミニゲームのことである
 とはいえ対応した施設で好きな時に受けることが出来、繰り返し報酬を得ることが出来るという特徴からこれらが本作の資金調達手段の中心だと言えるだろうか。
 実際物語はヒーローが鉱山で働いている場面から始まり、運次第ではゲーム開始直後から金鉱脈に当たり多額の金貨を得られることであるし。


・戦闘

 さて、本作は戦闘システムについても独自の設計を取り入れている。
 「AIBS(アクティブ・イニシアティブ・バトル・システム)」と名付けられたこのシステムは、攻撃と防御の実行にアクション要素を取り入れ、成否に応じてそれぞれの立場が入れ替わるよう設計されたものだ。
 詳しく見ると、今作の攻防は相手キャラクターの前に出現する「ターゲットエリア」内で「攻撃側のサイト」と「防御側のサイト」を動かしながら行うものとなっている。
 攻撃側は相手のサイトに触れない位置で攻撃を実行出来れば成功。相手にダメージを与え、そのまま連続して攻撃を行うことが出来る。
 一方防御側は相手のサイトを自分のサイトで防げれば成功。ダメージを無効化し、攻守を入れ替えて攻撃に転じることが出来る。
 また防御中にはサイトを拡大し相手の攻撃を防ぎやすくすることも可能だが、この場合は攻守の入れ替えが発生せず相手の攻撃が続く。

 ヒーローが攻撃するターンでは相手のサイトを避けて攻撃の成功を狙いつつ、防御するターンではサイトを拡大して相手の攻撃をやり過ごしてもいいし、小さなサイトで反撃を狙ってもいい、という流れを持つわけである。
 防御においてはプレイヤーの判断にゆだねられた部分が大きく、腕前次第で戦闘内容を大きく短縮することが出来るなどなかなかの自由度が感じられるだろうか。
 一方の攻撃は時間よりも「攻撃回数」という形で上限が定められており正確な攻撃が最良となっているのだが、一方で装備可能な「武器」のパラメータが一撃重視、連続攻撃重視、攻撃速度重視、など個性づけされており準備段階に選択の楽しみが有る。
 ともすれば装備と腕次第でLv1のままラスボスに到達できるなど、戦闘関連については確かな自由度が感じられると言えるだろうか。

 ・・・と、思いきや。
 実は本作には、これらサイトをやり取りせずに発動できる「魔法」という概念も有る。
 攻撃から回復まで確実に実行できる魔法は頼もしい存在なのだが、一方でボスクラスの敵も魔法を使用してくる
 ラスボスまでは確かにLv1のまま到達できるのだが、肝心のラスボスはLv1のままでは即座に焼き払われる事となるわけである。

 この問題は戦闘の自由度のほか、ダンジョンのボスを倒さなくてもゲームが進行すること、本作の「レベル」が個数限定アイテムによって間接的に上がる物であること、にも由来しており少々縛りプレイの結果に近いものなのだが、ゲーム全体を通して通用した攻略法が最後の最後で通用しないと言うのはやや釈然としないところだろうか。某VIIIのごとく。


・グラフィック

 なお、記述が遅れてしまったがゲームの第一印象として飛び込んでくるのはそのグラフィックだろうか。
 本作のグラフィックはというと3Dになったことで主観視点の臨場感が増し、よりリアルな冒険が味わえるようになっている
 ・・・のだが。
 視点はともかく肝心の3Dモデルは粗く、特に人物に至ってはキャラクターの顔がテクスチャ一枚で表現され、表情が全く変化しないなどPS2とは思えない水準となっている。
 頭巾をかぶった妖精フェステなどは、頭巾の隙間から顔のポリゴンの切れ間がちらちら見えているほどである。
 かつその状態で「波乱に満ちた大河ドラマ」なるものが繰り広げられるため、プレイヤーの印象に残るのは無表情のまま盛り上がる登場人物たちへの違和感ばかりだと思われる。


・まとめ

 「ルナティックドーン」シリーズの最大の魅力が「自由な冒険」に有ることを把握しつつ、それと真逆の方向性を行く「波乱に満ちた大河ドラマ」を表現しようとして破綻しきった内容となった一本。
 もっともグラフィックや依頼システムの内容を見ると、前作までの方向性を維持しようとしても悲惨な結果に終わったであろう事が想像に難くないのだが。

 シリーズの魅力を求めて手に取ると間違いなく残念な結果が待っているうえ、また単独で見てもほとんど魅力となる部分が感じられない問題作と言えるだろうか。
 それでも、強いて言えば・・・シェークスピアよろしく「男装の麗人」が活躍する物語に飢えており、その不出来さを話のネタにするぐらいの覚悟が有れば、手に取ってみてもいい・・・かも知れない。





・関連作品

・「ルナティックドーン」シリーズPCソフトとして発売されたRPGシリーズ。
ファンタジー世界で思うままに行動する、という自由度の高い内容は初代から既に形作られている。
ルナティックドーン オデッセイPS向けに開発された一本。
世界観と自由度を備えつつ、冒険の舞台をコンパクトに区切ったり大まかな目的を設定したりして家庭用ゲームとして遊びやすい内容にまとめている。
・ルナティックドーン IIIPC版「III」をPS向けにリメイクした一本。
オンラインゲームとしての内容を「リンクゲート」やアクションRPG調の操作で再現しており、元来の自由度も有ってMMOさながらの雰囲気が味わえる。


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