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ページ公開:2014/04/08


ベルデセルバ戦記せんき


プラットフォームプレイステーション
開発TENKY
発売ソニーコンピュータエンターテイメント
発売年月日1997年 4月
ジャンルフライトアドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
海戦風 空想的 雄大さあり 主題歌あり ほどほど 物語に分岐あり





・ゲーム概要

 1997年にSCEから発売された飛空船RPG。
 大空を漂う「飛空船」技術が発達した惑星ベルデセルバの戦乱を描いた内容で、プレイヤーは異星人「ミサキ」として争いに翻弄される運命を追ってゆくこととなる。
 プレイステーションで空戦と言えば「エースコンバット」シリーズが有名であるが、こちらは戦闘機による高速度の戦闘とは対照的に船のような浮遊感、雄大さを押し出したプレイ感が特徴的だ。
 またRPG面においては「人生の岐路」という大きな分岐が用意されており、物語の要所においてはアニメムービーも存在するなど盛りだくさんの内容であるのだが、さて・・・?

 なお本作のパッケージにおいては「〜翼の勲章〜」という副題が付いているのだが、ゲーム中では確認できないことから本項では省略しているのであしからず。


・世界背景

 本作の舞台となる惑星ベルデセルバの歴史については、ゲーム序盤においてアニメムービーでの解説が用意されている。
 現在ベルデセルバの空を舞台に繰り広げられている戦争は、そもそもは南半球の国家「グラシアル・ギダン王国」と北半球の国家「ムノギイ連邦共和国」間で惑星を二分する陸戦であった。
 しかし、ある時異なる惑星から「パスク人」が訪れたことでその歴史は大きく動き出すこととなる。
 荒れ果てた故郷を捨てこの星にたどり着いたパスク人は先住民族との争いを避けるためにいくつかの陸地を浮上させ、浮遊島の住人「ノイパスク共和国」としてこの地に根付いたのだ。
 初めは先住民族の争いに不干渉の立場を取っていたパスク人であったが、やがてその戦火の拡大を見かねて介入を決定。
 浮遊島や飛空船を始めとする圧倒的な科学力でたやすく両国を支配下に置き、以後数百年にわたる和平を約束させたのだった。

 しかし平和に慣れ切ったノイパスクの科学力は次第に衰え、永世中立国を名乗る「オルダナスピ」の独立宣言を機にギダン、ム連邦が反乱。
 皮肉にもかつての二国が団結し、飛空船によって逆にノイパスクを圧倒したのである。
 勝ち目が無いと見たノイパスクは平和条約を締結する方針に切り替えム連邦との関係を回復させたものの、ギダンはこれに反発。
 以後現在までの数年間に渡ってノイパスク・ム連邦同盟とギダンの戦争の構図が続いているものの、既にノイパスク軍は疲弊しきっており戦況は絶望的な状況に有る。

 そんな折、かつてのパスク人のごとく一人の異星人がベルデセルバに漂着した。
 名前はミサキ。機械の操縦技術に長ける飄々とした青年である。
 幸か不幸かノイパスク軍に拾われた彼は少尉として登用され、飛空船の船長としてこの戦いに巻き込まれることとなってしまう。
 そして、彼は今日も大空へと身をゆだねていた。やがて自らが、この戦争を大きく左右する英雄となることも知らぬまま・・・。


 ・・・と、おおまかにはこんなところだろうか。
 ゲームは飛空船を操縦する「3Dモード」とミサキ本人を操作する「2Dパート」を交互に繰り返し進めて行く構成で、3Dモードはシューティングゲームのステージを攻略してゆくように、2DモードはRPGのイベントを読み進めて行くように進行する。
 3Dモードで眺める雄大な空と2Dモードで歩く個性的な町並みは不思議な対比となっており、ゲーム中では「ベルデセルバ」の世界観をどっぷりと味わうことが出来るだろう。


・飛空船

 本作の世界観で最も特徴的なのは、主役とも言える「飛空船」の存在だろう。
 分厚い装甲板に守られ砲台で武装した飛空船は、プロペラによって推進し飛ぶと言うよりむしろ泳ぐようにして大空に出る。
 悠然と空をかき分け、ゆるやかに旋回や上昇・下降を行う姿はまさに空に浮かぶ船という表現がぴったりだろうか。
 飛行中は飛空船から離れた第三者視点で風景や飛空船本体を眺めることになるのだが、飛空船の操縦とは別に視点を回転させ周囲を眺められるあたりはパノラマとしての強い楽しみが感じられると思われる。

 そんな飛空船同士の戦闘はまた、船を思わせる砲撃戦となっている。
 飛空船にはそれぞれ機体の前、横、後、などに砲台が取り付けられており、ここから各種砲弾を発射して敵飛空船の撃破を狙うこととなるわけだ。
 この際に特徴的なのは、多くの砲弾は放物線を描いて飛ぶことだろうか。
 すなわち敵よりも高い高度を取ることで長い射程を得ることが出来、また反撃を受ける危険性も低くなるのである。
 同時に砲台の位置や向きによって後方や側面への攻撃を不得手とする飛空船もあり、これらに対して有効な位置を取ればさらに有利に戦うことが出来るだろう。
 と、本作は「有利な位置に回り込む」事を戦闘の要としていると言える。
 実際、攻撃については飛空船の砲撃手たちが半自動的に砲撃に参加してくれるため、照準と機体両方を操作するわずらわしさは大きく軽減されている。
 一方でもちろんプレイヤー自身が砲撃を行うことも可能であり、専用の豪華な砲台も用意されているので有利な位置に付いた後は思いきり砲弾の雨を降らせたい。

 なお、こうした悠然としたゲームテンポを持つ本作であるが、プレイヤーを飽きさせない設計として「ゲームスピードの高速化」というシステムも用意されている。
 ボタン同時押しによって好きなタイミングで発動できるこのシステムは敵との遭遇までの間などをサクサク短縮可能としており、緩やかさゆえの悪い面を切り捨て可能としているのである。
 魅力を持てあますことなく伝え、不便さを感じさせないインターフェース関連の設計には唸るほかない。

 また、余談として飛空船の種類や装備を挙げてみたい。

 ・パルナート・ポック
 民間用の飛空船を改造した小型機体。小型ゆえの旋回性の高さという長所があるが、火力も装甲も物足りない。砲塔数はぶっちぎり最低の4門。

 ・ガゼラント
 ギダン王国の中型飛空船。全9門の砲塔が全て正面に取り付けられていると言う攻撃的な仕様で、高さのある外見から「長靴」の名で親しまれている。

 ・ガルガナーク
 ギダン王国の大型飛空船。空に浮かぶ要塞とでも言うべき圧倒的な装甲と全14門もの驚異的な火力を持ち、長さのある外見や側面への強さから「カタナ」の名で呼ばれている。

 ・ジーテガート
 国に縛られず空を駆ける空賊たちの船。各地の「交易品」の運搬に長けるよう積載量に優れている。

 ・裂弾
 最も基本的な砲弾。放物線を描いて飛び、標的に命中すると炸裂してダメージを与える。

 ・散弾
 空中で破裂し、無数の粒弾をまき散らす特殊砲弾。命中しやすく威力が安定している。

 ・徹甲弾
 敵の装甲を貫いて本体にダメージを与える砲弾。相手によっては他の砲弾より有効な攻撃手段となる。

 ・ロケット弾
 標的に受かって直進し大ダメージを与える特殊砲弾。価格がやや高い。

 ・修理キット
 手の空いている乗組員が使用し、飛空船本体のダメージを回復させることが出来る消費アイテム。応急処置としてはそこそこ有効。


・主人公と仲間達

 そして、そんな飛空船を動かすのは主人公ミサキと仲間の乗組員たちだ。
 飛空船は各砲台に乗組員と砲弾を設定することで機能し、戦闘で活躍するようになる。
 つまりは、砲台の数以上の仲間たちが物語の中でミサキを待っている、ということ。
 それぞれに名前や能力を持つ彼らは物語の中で登場人物として現れ、個性的なエピソードとともに飛空船の一員となってくれる。
 本筋に関係しないサブイベントにおいて活躍する者もいるので、陸の上でも「ベルデセルバ」の物語は見逃せないところである。

 その他の登場人物も含め、数名を紹介してみたい。

 ・ミサキ
 主人公。宇宙船の故障によってベルデセルバに漂着し、ノイパスクの少尉として登用される。
 飄々とした性格で突拍子もない決断を下すこともあるが、根は理不尽を許さない正義漢である。

 ・アハデ・カフィ
 ノイパスク軍中佐。ミサキに目をかけ協力的に接する謎多き女性。
 優秀なノイパスク軍人でありながらギダン軍のある人物と友好関係に有ると言うが・・・。

 ・オユ・キクル
 少尉となったミサキに与えられた部下の一人。
 明るい性格の女性でカフィ中佐に強い憧れを感じているらしい。実は酒豪。

 ・ハウズエナ
 少尉となったミサキに与えられた部下の一人。
 実直そのものといった人物で最初から最後までミサキの右腕として活躍するが、ストーリー次第ではなんと・・・?

 ・ギダン国王
 ギダン王国の現国王。しかし現在は年老いており、軍の実権は息子であるシデル提督が握っている。
 趣味はお忍びの漫遊。

 ・デ・ゼシカ
 ム連邦の女性大尉。父である英雄サロ将軍を始め昔堅気の軍人に囲まれて育ったため男勝りな部分が有るが、逆に兵士たちからはアイドルの様に慕われている。
 ム連邦の外交役としてしばしばミサキと遭遇することとなる。

 ・ミユキ
 ミサキより以前にベルデセルバに漂着した異星人の少女。
 不思議な能力を持っているらしく、ギダン王国の皇太子シデルと行動を共にしているようだが・・・。

 ・カルフ
 とある町で踊り子をしている女空賊。ストーリー次第では登場しない。
 ところでその顔にはどうも見覚えが有るような・・・?。


・空賊編

 また、本作ではゲーム中盤に差し掛かる辺りである決断を迫られる。
 すなわち「軍人として戦争に抵抗する」か、「空賊として自由きままに生きる」か、である。
 一応は「軍人編」が物語の本筋に当たり起伏に富んだ物語が展開されて行くものの、以降の流れは一本道となり物資的にも少々厳しい戦いとなっている。
 反面「空賊編」は広大なベルデセルバを自由に飛び回りサブイベントの数々を楽しめる構成となっており、物資的な「稼ぎ」が容易なほか仲間になるキャラクターも個性的で大人数となる。
 特に町から町を飛び回って「交易品」をやりとりするシステムは空賊編ならではと言えるだろう。

 交易品とは町ごとに設定された特産品のことで、安く生産している町で買い、高く引き取る街で売り、を繰り返すことによって莫大な利益を得られるシステム。
 ミスリル、黄金、サメハダワサビ、ドラゴンの薫製、と町によって取り扱っている品に変化が有り、これがまた本作の世界観にちょっとしたスパイスを加えていると言えるだろうか。

 ・・・軍人編が少々不憫な気がしないでもないが、物語の面白さや専用の機体といった独自の要素もあるので捨てがたいところ。
 余裕が有れば両方プレイし、本作を余すところなく楽しんで欲しい。


・まとめ

 飛空船という個性的な要素をベースにし、世界観、操作感、ストーリー、と高い統一性をもってまとめられた本作。
 空の雄大さや船の浮遊感を基本とし、位置取り重視の砲撃戦と言ったシステム面、戦争というテーマや空賊の気ままさといったシナリオ面、ともに人を惹き付ける魅力を感じさせる。
 それらに興味が有り、もしも本作を見かける機会が有れば、ぜひ一度手にとってみてほしい一本である。





・関連作品

・「エースコンバット」シリーズ現代の戦闘機に搭乗して様々な作戦を達成してゆく、というナムコの3Dシューティング。
実在の戦闘機を用いたリアリティとスピード感が魅力で、音楽の評価も高い。
風のノータムアートディンクの熱気球シミュレーター。空を舞台にした浮遊感が味わえるが、内容は何とも風まかせ。
DEEP SEA ADVENTURE 海底宮パンタラッサの謎タカラから発売された潜水艇シミュレーター。
RPGパートと潜水艇パートからなるなど本作の海底版と見れる一本。


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