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ページ公開:2014/03/25


魔剣Xまけんえっくす

魔剣爻まけんしゃお


プラットフォームドリームキャスト(X)
プレイステーション2(爻)
開発アトラス
発売アトラス
発売年月日1999年 11月(X)
2001年 6月(爻)
ジャンルアクションアドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ10ブロック、3ファイルまで(X)
432KB(爻)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
臨場感あり(X)
操作難度低下(爻)
分岐豊富 ステージ豊富 サイケデリック調 厳しめ コミカライズほかあり





・ゲーム概要

 ドリームキャスト初期に発売された一人称視点アクションゲーム。
 プレイヤーは持ち主の精神を操る「魔剣」となって、さまざまな人の手を渡りながら2つの組織の思惑に相対するという内容。
 操作するキャラクターの豊富さもさることながらストーリーにおける行動選択の自由度が高く、舞台となる退廃的な世界観や「女神転生」シリーズでおなじみの金子一馬氏によるキャラクターデザインもあってメディア展開での根強い人気を得た一本である。

 とはいえそのゲーム性は少々ハードすぎた感があり、後にプレイステーション2に移植された際は「魔剣爻(シャオ)」と名を変え大幅な手直しが加えられることとなった。
 本項ではこちらについても併せて触れることとする。


・ストーリー

 時は”5分後の未来”。世界は至る所で崩壊の序曲を上げていた。
 中東の後ろ盾を得て台頭する中国、頑なな強硬姿勢によって緊張する米中関係、伝染病と水質汚染に苦しみながら無差別テロの恐怖にさらされる欧州・・・。
 まるで自ら滅びの道を選んでいるかのような世界の有様は、実際にある邪悪によって導かれたものであった。
 人の精神を吸収し自在に操る「天尊流星」と、その配下「三業会」のエージェント「八卦」。
 新世界の創造を掲げる彼らは世界各国に潜り込み、静かにその野望を推し進めていたのである。

 一方で、その野望を打ち破らんと奮戦する者もいた。古代より天尊流星を管理してきた「封剣士」たちである。
 彼らは天尊流星の能力を理解し、過酷な精神の鍛錬を経て八卦と互角の実力を得ていたものの、「神」ともいうべき天尊流星そのものに対抗する術は無かった。
 水面下で八卦の動きを監視し、消耗的な戦いで計画を引き延ばすのが人類に許されたわずかばかりの抵抗であった。

 しかし、その関係に全く別の方向から変化が訪れた。
 人間の精神の神秘を成す別次元の物質「イマージュ」が、ある科学者によって発見されたのである。
 科学界でこそ荒唐無稽なものとされたイマージュであったが、封剣士はこれに希望を見出し研究の援助を開始した。
 やがて天尊流星の能力を科学的に再現し、人工的に作られた「神」のコピーが誕生することとなる。
 表向きは人の精神を物質的に治療する機器として、その裏では神に対抗するための切り札として。
 それは「魔剣」と名付けられた。

 魔剣は天尊流星に対抗しうる力を得ていたものの、また天尊流星と同じように自我を持ち、それが人類にとって善なるものか悪なるものかは全くの未知数であった。
 だが世界の混沌は一刻を争う状況であり、魔剣の覚醒は否応なしに求められた。
 舞台は金沢総合学術研究所、所長の娘「相模ケイ」が見守る中魔剣の覚醒実験が行われようとしていた。
 しかし、実験は突如八卦「アンドレイ」によって襲撃。実験に当たっていた「リー・フェイチャオ」は死亡、所長の「相模広光」は誘拐されてしまう。
 混乱の中、襲撃者を追うため、また父を助けるため、ケイは魔剣に手を伸ばし・・・。
 魔剣はケイの肉体を「ブレインジャック」し、この世界に降り立ったのだった。


 ・・・と、本作の主人公は正義の味方である封剣士でも、運命に巻き込まれたヒロインでも無く、「魔剣」そのものとなっている。
 物語はこの後「天尊流星を目指し、各地の八卦を倒す」という目標に沿って進んで行くものの、その過程で封剣士たちに協力的な態度を取るか否か、また魔剣の同居者となったケイの問いにどう答えるか、によって物語は様々に変化してゆくこととなる。
 人類の味方として天尊流星を倒すか、人類の敵として封剣士を狩るか、あるいは少女の為に身を捧げるか・・・など、その物語には繰り返しの楽しみが有ると言えるだろう。

 なお、「魔剣X」では物語として挿入されるイベントシーンのほとんどがモノクロの静止画像にボイスが付いただけという非常に質素な物となっている。
 さすがにあんまりだと思ったのか、この点は「魔剣爻」においては色付きの寸劇にパワーアップされることとなった。


・システム

 さて、本作はステージ攻略式アクションの形態を取っている。
 ステージを選択して開始し、敵キャラクターやトラップを捌きつつ出口への到達や特定のイベントを達成するという流れだ。
 一人称視点でキャラクターを操作する「魔剣X」においてはプレイヤー自身がステージを探索しているような臨場感を味わうことが出来、プレイヤーが魔剣そのものであるという見せ方が色濃く反映された形となっている。

 そのうえで本作の特徴的なシステムと言えば、「弾き返し」と「背面取り」、そして何より「ブレインジャック」だろうか。
 先ず「弾き返し」とは、相手の射撃攻撃に合わせて攻撃することでそれを撃ち返し反撃できるもの。
 基本的に近距離戦用の武器である「魔剣」だが、これを活用すれば遠距離戦闘にも対応でき、射撃攻撃を行う敵に近付く手間や危険性を文字通り切り捨てることが可能となる。
 ステージ中にはこれを念頭に設計された部分も多く、重要テクニックの一つだと言える。

 一方の「背面取り」は接近戦における重要テクニックである。
 ロックオンした相手の頭上を跳び越して背後に回るアクションで、成功すれば相手の攻撃を回避しつつ背後に猛反撃を加えることが可能となる。
 素早く動く敵や範囲の広い攻撃は苦手とするが、攻防ともに大きな効果を持つので積極的に活用してゆきたい。

 その他基本操作としては、ボタン連打による連続攻撃、前進中の前進攻撃、ガードからのカウンター攻撃、溜めによるエクストラ攻撃、平行移動にジャンプアクション、といったものが存在する。
 そして、これらアクション面の楽しみを広げてくれるのが豊富な操作キャラクター、そしてそれを獲得する「ブレインジャック」であると言えるだろうか。
 ブレインジャックとは、魔剣が相手のイマージュを吸収し「肉体を乗っ取る」こと。
 作中においては封剣士や八卦といったキャラクターの肉体を乗っ取り、操作キャラクターとすることが可能なのである。
 キャラクターはそれぞれに得意な武器や身体能力・特殊能力が設定されており、その使い分けには強い楽しみを感じることが出来るだろう。
 特に八卦に関しては、直前にボスとして戦った相手が使用可能となるという点がなんともユニークである。

 ただ「魔剣X」においてはキャラクターに成長の要素が無く、序盤で登場したキャラクターはいくら愛着があっても序盤相応の性能しか発揮できない。
 この点は「魔剣爻」にて「完全支配」という要素が取り入れられだいぶ調整されているので、思い入れのあるキャラクターが居るのであればこちらと併せて楽しんで欲しい。
 その他ザコキャラにブレインジャック出来ないのが少々残念なのだが、まぁゲームバランス上は妥当なところだろうか。


・キャラクター

 さて、では本作に登場するキャラクターから何人かピックアップして紹介してみよう。

 本作におけるキャラクターは、主に3つの側面を持っている。
 1つ目に、ストーリーの中で活躍する登場人物という面。
 2つ目に、魔剣(プレイヤー)が操る操作キャラクターという面。
 3つ目に、それらの過程で対峙する敵キャラクターという面。

 研究所の所員などストーリーのみで活躍するキャラクターもいるが、それぞれで少しずつ異なった思い入れを抱くことが出来るだろう。

 ・相模ケイ
 物語のヒロイン。魔剣の覚醒実験に立ち会った際に八卦の襲撃に会い、魔剣を手にしたことでイマージュが同化してしまう。
 その後は魔剣の共生者として共に八卦を倒す旅に出ることとなるが、そのイマージュは徐々に蝕まれつつある。
 操作キャラクターとしては剣タイプの魔剣を振るうオーソドックスなキャラクター。
 いわば主人公格と言えるのだが、オープニングステージが終わると早々に選択不能に・・・。

 ・八卦アンドレイ
 元ロシア特殊部隊の将校だが、戦闘パラノイアであるとして軍を追放。その後は天尊流星に仕える八卦として数々の暗殺任務をこなしてきた怪人物。
 八卦の「兌」に位置する者として口が異形化しており、舌先からメスを発射する「チカティロナイフ」を得意技とする。
 操作キャラクターとしては巨大なメスを武器としリーチに優れるほか、身軽で遠距離戦も可能なトリッキータイプ。
 「魔剣X」では、一人称視点ならではの特徴として画面内に自分の舌がチロチロと見えている

 ・稲葉郷
 欧州へ向かう魔剣らが乗り込んだ飛行艇リンカードンの副パイロット。魔剣と三業会の争いに巻き込まれて力尽きる。
 ストーリー中では彼にブレインジャックするかどうかで脱出艇の着陸先が変化することとなる。
 操作キャラクターとしては電磁警棒タイプの魔剣を武器とするが、ぶっちゃけたところ最弱キャラである。
 が、「魔剣爻」では一転して完全支配によって最強クラスのキャラに成長する。

 ・見習い封剣士フェイシャン
 ケイの家庭教師であり、魔剣の覚醒実験を行ったリー・フェイチャオの妹。
 足手まといとして魔剣に接触する任務を与えられなかったが、独自に調査を重ね八卦の居場所を突き止めた。
 操作キャラクターとしては舞扇型の魔剣を操り、攻撃能力に劣るものの扇を広げての防御能力が高い。

 ・封剣士ラムロッド
 無差別テロの資金源として欧州連合の党首マルガレーテを監視するうちに、許されぬ恋に落ちてしまった男。
 マルガレーテが八卦の一人となった後もその心は揺らいだまま、魔剣によってその関係に変化が訪れる時を待っている。
 操作キャラクターとしては刀状の魔剣を手に、素早い連続攻撃で敵を切り捨てるキャラクター。
 特殊攻撃では冷気を飛ばして相手を凍結させ、相手を一撃で砕くことが出来る。

 ・八卦ダル
 とある伝染病の治療法を発見した天才科学者であったが、その治療法によって新たな奇病を発生させてしまい娘と共に隠匿生活を送っていた。
 やがてその能力と自責の念に目を付けられ八卦になり、現在では欧州に石死病をまき散らす悪魔となり果てている。
 八卦の「坎」に位置する者として耳が異形化しているほか、重度の石死病に感染している。
 操作キャラクターとしては杭を武器にし攻撃力に見劣りするものの、ウイルスを飛ばして敵を石化させたり高質化した皮膚で飛び道具を無力化したりと特殊能力に恵まれている。
 「魔剣爻」では飛び道具無効化能力を失ったほか、全体的に娘バーリンカに劣る。

 ・スミス議員
 元欧州連合の党首にして、現党首マルガレーテの夫。
 麻薬や武器の密売によって党首の地位を得たが、現在はマルガレーテによってロンドンに幽閉されている。
 操作キャラクターとしては足枷であった鉄球を模した魔剣を武器とし、一撃粉砕のパワーキャラとなる。

 ・・・などなど。
 「魔剣X」ではレベルや所持金に当たる要素が弱くステージを繰り返しプレイする必要性こそ薄いものの、これらキャラクターを変えて新鮮味を味わううちに自然と様々なステージに足が向かうこととなるだろう。

 一方、「魔剣爻」においてはキャラクターに「支配率」という要素が有り、敵を撃破するごとにキャラクターが成長し強力な攻撃やステータスアップの恩恵を受けられるようになっている。
 こちらはそれなりの経験値稼ぎを必要とするのだが、その分育てたキャラクターへの愛着も感じられるだろう。
 また、「魔剣爻」では操作時の視点が一人称視点から三人称視点へと大きく変更されている点も特徴的である。
 臨場感や設定的な妙は損なわれたが、3D酔いや打ち返しの際の距離感といった操作の難易度を下げ、またキャラクターの姿が映る機会を増やした形といったところだろうか。


・ゲームバランス

 また、「魔剣X」と「魔剣爻」ではもうひとつ大きな違いが有る。ゲームバランスである。
 キャラクターが成長要素を持つ「魔剣爻」ではキャラクターの使用する技が大きく変化しており、またステータスアップによって「稼ぎ」を行えば大きく難易度を下げることが出来る
 ・・・ほかに、ステージ中にセーブポイントが追加されたという点が大きい。
 本作のステージは大体1つ10分弱程度で攻略出来るのだが、コンテニュー不可能となると結構な時間と精神力を必要とする数値である。
 「魔剣X」ではこの点が相当厳しく、特に最終ステージなどはザコの一戦一戦に精神をすり減らされることとなる。
 「魔剣爻」ではこの点が緩和されており、途中からやり直せる点が大変ありがたい仕様だと言えるだろう。


・まとめ

 意思のある「魔剣」を主人公とし、プレイヤーが冒険する臨場感と様々なキャラクターを操作する新鮮味を共に実現させた一本。
 うち臨場感を重視したのがドリームキャスト版「魔剣X」、キャラクターの楽しみを重視したのが「魔剣爻」といったところだろうか。
 ストーリーについてはイベントシーン以外同じ物なので、もし興味を得たならば自分が重視する要素によって選択して欲しい。
 善悪に揺れるストーリーや強烈なキャラクターデザイン、そしてFPSアクションか豊富なキャラクターに魅力を感じる人にオススメである。





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