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ゲームレビュー
/グランストリーム伝紀
ページ公開:2013/03/19
グランストリーム
伝紀
(
でんき
)
プラットフォーム
:
プレイステーション
開発
:
SHADE
発売
:
ソニーコンピューターエンターテイメント
発売年月日
:
1997年 11月
ジャンル
:
フルタイムポリゴンリアルバトルRPG
プレイ人数
:
1人
セーブデータ
:
1つ1ブロック
システム
シナリオ
グラフィック
サウンド
ゲームバランス
その他
快適
王道かつ巧妙
簡素
カントリック
良好
アニメシーン有り
(プロダクションI.G)
・ゲーム概要
プレイステーションの比較的初期に発売されたアクションRPG。
パッケージ裏によると「
PlayStation初のフルタイムポリゴンリアルバトルRPG。
」という良く分からないゲームジャンルであるが、シンボルエンカウントで対戦アクション形式の戦闘を行うロールプレイングゲームと思えばまぁ正解だろう。
とはいえ当時はインターナショナル版の発売など「FFVII」全盛期にあり、フルポリゴンを謳う割にそれほど美麗なグラフィックでもない本作は歴史に埋没してしまった感が否めない。
その他アニメシーンなども本作の売りと言えるのだが、その内容は果たして・・・?
・ストーリー
今より時をさかのぼること、百年前。
世界を二分する戦争が勃発し、人類は滅亡の危機に瀕した。
異なる魔法の力を文明の基盤とし、対立する二つの軍勢「魔導帝国軍」と「精霊同盟軍」は互いにあい譲らず、ついに帝国は禁断の超・魔導兵器で敵の中枢を破壊する作戦を実行した。
それは、大地の地脈を粉砕し、大変動を引き起こした。
地軸は大きく傾き、地表は完全に水没した。
そして、地上に根差したあらゆる生命と文明は、滅びた。
しかし、滅亡の危機を予見した賢者たちは最後の魔導器「エアリム」を使用し、四つの陸地を浮上させて生き残った人類を滅亡の危機から救った。
「エアリム」を組み込んだ魔法塔は太陽の光を浮上エネルギーに変え、年に一度、各大陸の上空に出現し賢者がその力を引き出す仕組みとされた。
それは、人類に義務付けられた哀れな儀式であった。
僅かに生き延びた人々を乗せ、最後の大地はそれぞれに天空を飛び続けた。
しかし、数年前より「魔導帝国」の復活が噂され、大陸の賢者たちが突然行方不明となった。
新たな浮上エネルギーを得ることができない各大陸は、次第に落下しつつある。
紺碧の空と海の狭間で、世界は確実に終末へと向かっていた。
(OPより抜粋)
そして物語は、陸地を切り崩し質量を減らすことで辛うじて浮上のバランスを保つ風の大陸「シルフ」に生きる一人の青年から始まる。
青年の名はリューン・ランザード。魔法考古学者バロス・ランザードに拾い育てられた心優しき青年である。
剣や魔法の腕に優れ、小さな命も大切に扱う、穏やかで好奇心の強い青年・・・しかし育ての親バロスは、そんなリューンが肌身離さず身につける「緑色のクリスタル」についてある不安を抱いていた。
伝説に名を残す魔導器「セプター」。
命ある物を除くありとあらゆる物質を記憶・複製する能力を持ち、破片や残骸からその全容を復元することさえ可能という凄まじい魔導器である。
それがリューンの手にあるという事実が何を意味するのか・・・バロスはそれが不安でならなかった。
しかし、運命の日は訪れる。
とある事情から訪れた「賢者の墓場」の中にて、突如として「セプター」が輝いたのである。
古代の兵士から装備を記憶したセプターはリューンが墓場のガーディアンに襲われた時に寸分違わずそれを復元し、見事にガーディアンを撃退して見せたのだ。
かくして賢者ゾラの思念から「風の宝珠」を託されたリューンは、賢者の娘「アーシア」と共に大陸浮上の儀式を行い、この終末世界を救う冒険へと旅立つこととなるのだが・・・。
と、いったところ。
ゲーム中に登場する町や人々は明るく活き活きと描かれているが、
徒歩でも端から端まで移動できる程度のちっぽけな「大陸」の中、
一つ二つの町に身を寄せ合って細々と暮らし、
周囲全てを水平線に囲まれ他の大陸の姿形さえ確認できないという孤独のまま、
大陸と共に段々と降下し海のあぶくへ消えようとしている・・・という、まさに「絶望」の二文字にある運命は非常に恐ろしい。
「特別な力を持った少年(青年)と少女が滅び行く世界を救う」という非常に王道的な内容ではあるが、この強烈な世界観から来る説得力はむしろ新鮮味さえ感じさせてくれるだろう。
そしてそんな絶望的な世界を少しずつ浮上させて行くという「希望」の物語が、本作「グランストリーム伝紀」のストーリーなのである。
・キャラクター
・リューン (CV:佐々木 望)
謎の魔導器「セプター」を手にする青年。
温厚で好奇心の強い性格で、アーシアの救出をきっかけに世界を復活させる冒険へ旅立つこととなる。
・アーシア (CV:笠原 弘子)
風の賢者の娘にして、大陸浮上の儀式に必要な「精霊の詩」を歌える最後の人物。
風の宝珠の在り処を聞き出そうとした帝国によって誘拐され戦艦「ヴァンゲル」内に幽閉されていたが、リューンによって助け出され行動を共にするようになる。
・ラルミィ (CV:高乃 麗)
飛空挺を用いて大陸間を飛び回る空賊「デスバット」の紅一点。
アーシア救出のために飛空挺に侵入したリューンの度胸と能力に興味を抱き、以降行動を共にするようになる。
・キャロック (CV:かないみか)
デスバットのマスコット的存在である「精霊獣」。
外見はしゃべる小鳥といったものだが、その身には意外な力を秘めているらしい。
・バロス (CV:なし)
リューンの育ての親に当たる魔法考古学者。
リューンの手にするクリスタルが「セプター」だと見抜き、その詳細を調べるうちに意外な事実を目の当たりにする。
・スレイザー (CV:塩沢 兼人)
デスバットの船長。またラルミィの実の兄。文武に長けた策士であり、義賊として空賊デスバットを率いている。
しかし最近帝国と手を組み、腹心にも明かさない秘密の計画を進めているという。
・エアリム (CV:なし)
浮遊塔エアリムに宿ったAI。宝珠を持つリューンを主とし、移動やヒントなどでリューンたちの冒険をサポートする。
・システム(進行)
さて、主人公リューンに宿った「セプター」は「触れた物を『記憶』し、好きな時に『複製』する」という能力によって重要な「鍵」となる。
例えば「同じ歯車が2箇所に必要な場合(仮)」、A地点にある歯車を取り外しB地点に取り付けても歯車は空転してしまい仕掛けが作動しない。
ではどうすれば良いのかというと、歯車を調べてあえて取り外さず、セプターに「記憶」させるイベントを起こせば良いのだ。
この状態でもう一つの箇所を調べると歯車を「複製」することができ、無事仕掛けが作動するというわけである。
またストーリーの中では行方不明となった人物の遺物から記憶を再生し、重要な話を引き出すという場面も存在する。
謎解きというよりイベントの一環であるが、物語のキーポイントで発揮されるため活躍としては印象深い。
・・・どちらも「自由にアイテムやヒントを記憶したり引き出したりして謎を解く」というものではなく、あくまで演出程度にとどまっているのが残念であるが。
そして、本作は武器や防具の扱いについても独特だ。
ストーリーの中で軽く出てきたが、本作の武器や防具はオブジェなどを調べることで「記憶」し、戦闘時に再生する物として「装備」出来るようになる。
要するに、本作の装備は現物ではなくデータという形で入手してゆくわけである。
当然売却することもできず、本作の「お金」はほぼ消耗品を売り買いする目的にのみ用いられる。
演出面のみならずゲームバランス面でも思い切った、非常にユニークな設定であると言える。
またやや蛇足になるが本作に経験値の概念はなく、リューンのレベルはゲーム中で特定のイベントを達成することで上昇するようになっている。
特定のイベントというのは宝珠の入手や仲間との離別などの物語の山場となるシーン。
様々な人の想いを継いで主人公が成長してゆく・・・というのはやや陳腐な気もするが、いやいや。これもまたストーリー、ゲームバランス共に重要な意味を持っているので、見逃さぬよう注意深く進めてゆきたい。
・システム(戦闘)
そして、そんなセプターはリューンの「武器」ともなる。
本作はモンスターの徘徊するダンジョンを自由に歩き回り、これらに接触することで戦闘に突入するシンボルエンカウント方式を採っている。
戦闘はリューンとモンスターの一対一で行われ、リアルタイムでキャラクターを操作、回避・防御を駆使しつつ攻撃を叩き込み相手の体力を0にした方の勝ち、という対戦アクションの様な形だ。
敵との接触と同時にセプターから武器が具現化され、ほぼシームレスのまま戦闘が開始されるという流れがなかなか快適である。
体力も「LP」と「HP」からなるダウン制を取っているので、ゲームジャンルの「バトル」のあたりはこの辺に集約されているのだろう。
さてこの戦闘の中でリューンが使える特殊行動として、「コマンド技」と「魔法」というものがある。
「コマンド技」はセプターが新たな武器と同時に記憶してゆく必殺技で、「←↓→○」の「ウィンドバスター(長剣)」や「→↓←○」の「クロス斬り(鈍器)」などが存在している。
これらはコマンド入力の手間が有りスキが大きいという難点こそあるものの、威力が高くガード不能という特徴を持ちガードの固い相手に対して大きな効果を発揮する。
相手も同様にガード不能の攻撃を使用してくるため、戦闘は攻撃・ガード一辺倒では済まない緊張感ある物となっている。
また「魔法」は「MP」を消費して回復や攻撃など様々な効果を発揮するもので、リューンの戦闘をさまざまにサポートする。
本作におけるMPとは敵を撃破することで貯め、使用するごとに消費するというお金の様な物であるためここぞと言うときの切り札として使いたい。
・・・というのがおおまかな戦闘システムなのだが、前述の通り本作はシンボルエンカウント制でかつ経験値の概念が無いため、大半の戦闘を無視しても特に問題無く攻略可能となっている。
ただ経験値の代わりに「アイテムとMPの補給」という報酬が用意されており、その内容を左右するシステムとして「セプターフォース」というものも存在している。
「セプターフォース」とは敵をノーダメージで撃破した際に得られる宝箱の様なもので、ノーダメージで連勝するほど成長し強力なアイテムを得ることができる。
また戦闘の内容に応じていくつかの「ランク」が設定されており、より鮮やかに勝利するほど高い報酬を得ることができるという仕組みだ。
具体的には「先に攻撃をヒットさせる」、「コマンド技でトドメを刺す」、などが基準となっており、それぞれ「ファーストアタック」、「フィニッシュボーナス」、などと言い変えると若干格ゲーっぽい気がしなくもない。
この「セプターフォース」限定のアイテムなども有って、本作の戦闘は無視して進んでも良いし、高評価を狙ってやりこんでも良い、という自由な立ち位置にあるのである。
・まとめ
シナリオ、謎解き、戦闘、というゲームの基本要素を、「セプター」の設定によってまとめ上げ高い完成度を発揮している本作。
若干物足りない部分も散見できるが、総合的に見た場合その水準にはうなるほかない。
ただ、その3Dグラフィックについては
キャラクターがことごとくのっぺらぼうである
など素っ気ない物であり、昨今のゲームに見慣れてしまうと少々戸惑いを覚えざるを得ない。
もっともその分滑らかな動きが得られているなど良い面もあるし、重要な会話で見られるキャラクターの顔グラフィック、ところどころ挿入されるアニメシーン、といった2Dグラフィックで補完されている部分もあるので、これによって悪い評価を下すほどの物ではないだろう。
正統派な物語に飢えている人、格ゲー風のアクションRPGに興味を覚える人、シンプルなゲームに没頭したい人、などにオススメしたい傑作である。
・ワンポイント攻略
・攻撃の基本は体当たりで相手のガードを崩すこと、防御の基本はガードを固めて相手のコマンド技を見極めることにある。
・「セプターフォース」は8段階、8ランクからなる。ランクの調整は難しいが、「ブルー」、「レッド」の内容を見ていろいろと練習してみよう。
・ゲーム終盤でヒントがあるものの、自力発見はまず不可能と思われる最強の隠し武器「オニマル」。追加情報として
その在り処は「エリア移動直後」であるという。
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