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ページ公開:2013/02/05


ECSAFORMエクサフォーム


プラットフォームプレイステーション
開発イメージワークス
発売バンダイビジュアル
発売年月日1999年 1月
ジャンルシミュレーションRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック、6ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
ユニーク 薄い 粗い 風土的 良好 「ナビゲーター」ディスク付き





・ゲーム概要

 1999年にバンダイビジュアルから発売されたシミュレーションRPGゲーム。
 パッケージの裏では「練り込まれたシナリオ」、「個性あふれるキャラクター」、「ファンタジックな世界観」、「斬新なバトルシステム」、の4つをプッシュしており、特にシナリオ面で強いこだわりがあることが伺える。
 実際、本作の「付属ディスク」を見るとそのこだわりは痛々しいほどに伝わってくるのだが、その内容は・・・?


・戦闘システム

 ストーリーを説明すると長くなるので、先ずは本作の戦闘システムから見てみることにしよう。
 本作は1人のキャラクターを1ユニットとして扱うシミュレーションRPGであり、それぞれの行動は「WP」、「AP」によって管理されている。

 「WP」とは(おそらく)ウェイト・ポイントの略で、0の状態から徐々に貯まってゆき満タンになったユニットから行動してゆくというもの。
 最大値の低いキャラクターほど早く・多く行動順が回ってくるという、いわば素早さの変形である。
 これはユニットの情報として敵・味方共に確認できるため、その貯まり具合から行動順を推察して戦略を立てるのが重要となるわけだ。

 一方「AP」は(たぶん)アクション・ポイントの略で、ターン中でのユニットの行動量を決定するもの。
 ターンの初めに全回復して移動1マスにつき1ポイント、攻撃1回につき5ポイント、などとアクションによって消費し、この数値内であれば自由に行動を組み立てることが出来る。
 戦闘では相手のAP量を見つつ、いかに反撃を喰らわない位置で攻撃を当てて行けるか?や、いかに敵に距離を詰めさせAPを温存できるか?が一つのポイントとなっているわけである。

 もっとも、WP制は「タクティクスオウガ(1995、SFC)」のウェイトターンシステムあたりと同様の物であるし、AP制もまた本作が初出と言うわけではない。
 本作の最たる特徴は、ユニットのターンを終える際の「待機」と「終了」の概念だろう。
 「待機」とはユニットのAPを温存して一旦行動を終了するコマンドで、待機中のユニットは他のユニットが行動している際に任意のタイミングで「割り込み」を行うことができるのである。
 大ダメージを受けそうな際に回復役を「待機」させる、敵の前進を見越して「待機」し無防備な相手に切りかかる、とその応用性は非常に広い。

 ではユニットはとりあえず待機させておけばいいのか、と言うとそうでもない。
 ユニットは「終了」を選択することで余ったAP(最大5Ptまで)を「EP(エスケープポイント?)」に変換し、敵からのダメージを減らすことができるのである。
 EPはダメージに対する追加HP、有限回避率の様なもので、HP代わりに減少して一定値までのダメージを無効化できるのだ。
 これによってAPを使い切って捨て身の戦法に出るもよし、APを温存し堅実に戦うもよし、という戦術の幅が得られているのである。

 これらを応用すれば、敵陣に突っ込みつつAPを温存し囮となる、前進してきた敵に割り込んで待機中の味方に狙撃させる、WPの近い味方の行動まで待機し怒涛の連続攻撃を仕掛ける、EPに余裕のある味方ごと範囲攻撃で吹き飛ばす、など非常に自由度の高い戦術を組み立てることができ、この点が本作ならではのオリジナリティを形作っていると言える。

 ただし本作はマップのマス割りが異様に細かく、ユニット1体に付き4マス割り振られているほか、その周囲1マスはユニットを配置できない空白マスとなってしまっている。
 1歩1マスのゲームに置き換えれば、半歩ぶんの0.5マスまで計算されているうえユニットの周囲に腕がぶつからない程度の余裕が用意されていると思えばしっくりくるだろうか。
 よくある「味方ユニットを飛び越えて移動する」場面では最低でも6マス移動する必要があり、「段差上の敵に攻撃する」際相手が半歩下がると攻撃が届かないなど、さまざまにフラストレーションのたまる設計なのである。
 攻撃に必要なAPもこのマス割りを前提に計算されたバランスだとは思うのだが、半歩分のスペースは要らなかったのではないか・・・など思えてならない。


・ストーリー

 かつて理動と呼ばれた万能の力と自立機械により発展した高度な文明が存在していた。
 発展した文明はある科学者の実験により突然の衰退を迎えた。
 後に「大震駭」と呼ばれる事件である。
 少女スセリは、生体改造を受け研究施設で実験を繰り返される日々を過ごしていた。
 ある日、謎の青年ビードと出会い、その施設を脱走することになる。
 この世界は何なのか?
 自分は何者なのか?
 数々の謎を追い求め二人の旅は始まる。

 (説明書より抜粋)

 ・・・ということだが、実際の事情は少々異なる。

 ソルパガニア皇帝国の国防省理動局遺構部主幹「デュー」の下で「理動」を操る「節理植脳標体」への改造手術を受けた第17号標体「スセリ」は成績が芳しくなく、また独自の判断に基づいて行動する失敗作であった。
 物ごころついた頃から暮らす理動研究所の遺物保管区の中、古代文明の遺跡から完全な形で発掘された理動制御システム「ハルム構造体」に「ビード」と名付け様々なことを語りかけていた彼女だったが、発掘から機能停止状態にあったビードはそれに応えることもなく静かに眠るのみであった。
 やがてハルム構造体の覚醒実験が本格化する頃、第18号標体「フォーネ」を除く節理植脳標体は廃棄処分されることとなり、スセリもまた節理摘出手術の後に処分されることとなった。
 しかし。覚醒を促す外部刺激として発せられた理動に反応したハルム構造体は研究所内の全ての理動器具を停止させ、この混乱に乗じてスセリが手術室から脱走してしまう。
 それから間もなくして完全に覚醒したビードと対面したスセリはこの研究所から逃げ出して自由を得ようと語りかけ、突如乱入した警備兵「ハブロ」の不可解な助けを借りて研究所からの脱走を始めるのだった。

 ・・・といったところ。
 序盤から専門用語が多くて頭痛がしてくるが、「理動」は古代文明の魔法、「節理植脳標体」は人工魔道士、「ハルム構造体」はなんかスゴイ人型兵器、とでも思っておけばまぁ大体合っているだろう。
 この後目的もなく脱出した二人は傭兵「パラム」に救われ、その仕事を手伝う中で次第次第にこの世界に生きる人々や国同士の争いに触れて行くこととなる・・・という物語である。


・キャラクター

 ・ビード
 旧文明の産物であり、「ムール戦争」期に理動行使のためのツールとして制作された「ハルム構造体」が長い年月を経て発掘され覚醒したもの。
 理動粒子をエネルギー源とする単機子によって脳や神経系を構成されており、ミクロレベルからマクロレベルまで幅広い理動を制御可能。
 保管場所である理動研究所にて生活していたスセリによってビードと名付けられ、スセリが研究所を脱走する際に同行して以来行動を共にしている。
 極めて機械的な存在であり、自己保存以外の動機によって行動することが無く無口。

 ・スセリ
 ソルパガニア皇帝国のカルボロド理動研究所にて17号標体と呼ばれる節理植脳標体。
 人体をベースに感覚系を強化するよう改造されており強力な理動を使用できる。
 肉体年齢は14歳だが人間的な経験や知識が不足しており、世間知らずの甘えん坊。
 ハルム構造体の発掘によって不要と判断され処分されかけるも、覚醒実験の騒ぎに便乗して脱走する。
 ビードに対しては「頼れる大人」と「守るべき友達」の相反する感情を抱いている模様。

 ・ハブロ
 理動研究所の警備兵として潜伏しハルム構造体と標体の情報を収集していたメリエ連合の工作員。
 スセリとビードの脱走現場に出くわしてこれを手助けし、その後も工作員という立場を越えてしばしば二人に協力する。
 飄々として掴みどころのない人物に見えるが、その実は冷静沈着な判断を基に相手を誘導する生粋の策士。

 ・パラム
 任務に失敗し仲間を失った過去を持つ若き女傭兵。
 行くあてもなく研究所を脱走した二人を拾い、工業都市ヴォロルで傭兵として生活することを提案する。

 ・ユーイン
 かつてスセリと同様に標体として改造されるも失敗し処分されかけた少年。
 幸運にも彼を救うものがおり、その後は隊商の護衛団で鋭い感覚を活かした射撃手として暮らしていた。
 しかしその仲間たちも破壊活動集団カテゾールによって殺害され、仇討ちのためにと一行へ助太刀を頼む。

 ・スービック
 体内に制御虫と呼ばれる情報の送受信機を寄生させており、これによって他の虫を制御することができる虫使い一族の少女。
 閉鎖的な虫使いたちには珍しく明るく外向的な性格であり、「虫使い失踪事件」によって行方不明となった姉を探すことを口実に旅を行っている。

 ・ビネリ
 ソルパガニア皇帝国軍戦線参謀の青年。皇帝の信頼厚いデューに取り入ることで自身の出世をたくらむ自己中心的な人物。
 自身の抱える部下を利用してデューの計画を後押ししている。

 ・フォーネ
 スセリと同様に改造を受けた18号標体。
 最も優れた能力を持つとしてデューから特別視されており、またフォーネもデューに対して絶対の忠誠を誓っている。
 時には自ら理動兵部隊を指揮し、デューの手足として行動する。

 ・デュー
 ソルパガニア皇帝国の国防省理動局遺構部主幹である理動科学者。
 カルボロド理動研究所にて標体への改造実験やハルム構造体の調査を行いながら、自身が抱くある計画を推し進めている。


・エクサフォームナビゲーター

 ・・・と、長大で複雑な設定の存在する本作にはとある「付属ディスク」が存在している。
 もうお気づきだとは思うが、「エクサフォームナビゲーター」なる設定資料集である。

 その中心は多数のラフスケッチと共にゲーム中の設定を紹介する「DATA BASE」であり、ここでは「理動」や「ハルム構造体」といった専門用語はもちろん、キャラクターの経歴や家族関係、果ては言葉遣いや行動パターンまでみっちりと解説されているのである。
 400を超えるこの項目はWebページさながらの「リンクワード」によって繋がっており、一度見た項目はリンクの色が変わり既読・未読を判別できるうえこのリンクの状態を本編とは別のブロックにセーブして保存できるなど利便性も良好である。目指せ完全読破!

 ・・・と、設定に夢中になっている点は痛々しいほどに伝わってくるのだが。

 先ずこの「ナビゲーター」には本編のデータを読み込むことで閲覧できる項目が増える・・・といった機能が無く、ゲーム開始前から全ての項目に目を通せる設計となっている。
 そのうえでストーリーを章ごとに解説する「Chapter Select」を見てみると、内容は全4章しかない
 そのあらすじも第1章を除いて「○○から脱出した主人公らは△△にたどり着き、新たな生活を始める」といった流れで紹介されており、行き当たりばったりの内容であることが伺える。
 例外である第1章も「ビードが覚醒して研究所を脱出するまで」のチュートリアル的な内容であり、発生する戦闘もわずかに3回と、章としてカウントできるかは怪しいものだ。
 設定はともかく、ストーリー自体は濃密という表現からかけ離れた薄味な内容であると言わざるを得ないだろう。

 ・・・しかもそれを、最悪プレイ前に垣間見ることとなるのである・・・。


・まとめ

 システム面はなかなか特徴的であるものの、シナリオ面では設定を考案するのに全力を使い果たし本編のボリュームまで手が回らなかった、という感のある本作。
 そのツケか戦闘内容も「勝利条件:全ての敵を倒せ!」一辺倒であり、変化に欠ける状態であるのが惜しまれる。
 ついでに言えばセーブできるのは戦闘開始時のみ自由移動中に何も無い小部屋・トイレに入れる(要ロード)、という設計も難点か。

 それでも、クセのある戦闘システムに興味を覚えたという人にならそこそこオススメの一本である。
 また設定に凝りすぎるとこうなる、という悪例としても、なかなか貴重な一本なのかもしれない。





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