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ページ公開:2013/01/29


QUOVADISクォヴァディス 〜イベルカーツ戦役〜


プラットフォームプレイステーション
開発グラムス
発売グラムス
発売年月日1997年 4月
ジャンルシミュレーション
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、2ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
改悪? 再演 3D化 より重厚に 非常に悪い 移植リメイク作





・ゲーム概要

 セガサターンで発売された「クォヴァディス」の移植リメイク作。
 続編(?)である「クォヴァディス2 〜惑星強襲オヴァン・レイ〜」と同時期に発売されているあたりに相当の自信を感じると言うか、ずっこけるまでフルスピードで走り抜けたんだななどと唸らずにいられない一本。
 純粋な移植作ではなく、戦闘システムに「チット」や「策敵」といった手を加えて戦略性の向上を図った本作の内容は果たして・・・?


・ストーリー

 一部キャラクターのボイスやイベントが追加されているものの、ストーリーは基本的にSS版と同様なので割愛する。


・グラフィック

 作戦画面や戦闘画面が3D化し臨場感が増した点が大きく異なるが、会話シーンや顔グラフィックはSS版と同様となっている。
 なおオープニングなど一部に追加アニメが存在する。


・サウンド

 基本的にはこれも前作と同じだが、一部の曲はオーケストラの様なアレンジが加えられておりより重厚な物となっている。


・システム

 と、メディア面ではSS版とほとんど変わらない本作だが、システム面はまるで別物といった内容に作りあげられている。
 複数の戦艦からなる「艦隊」を1ユニットとして扱い、相手の旗艦を狙う本作「クォヴァディス」。
 前作との最大の違いはユニットの行動順が「チット」(後述)によって管理され、1ユニットずつ行動を完了してゆく点だろうか。
 これによって前作の様な読み合いの熱さは失われたが、確実にユニットの行動を組み立てて行く冷静さが味わえるようになっている。

 そんな戦略性を後押しするように、本作はヘクス制マップに変更されている。
 余談だがヘクス、つまり正六角形とは同じ形を繰り返して隙間なく敷き詰める「平面充填」を単独で行える最大の正多角形であり、ユニット同士の距離をより正確に計算できるのだという。
 大量に敷き詰められたマスの中で塩梅を計りつつ移動距離や向きを決めていた前作とは違い、1ヘクス進むかどうか?が本作では射程の内外を変える重要な要素となっているのである。

 また、本作にはヘクス制の正確な距離、範囲から策敵の概念も取り入れられている。
 一定距離に侵入するまで敵影が見えないため、慎重な運用を求められるこのシステム。作戦を緊張と驚きというスパイスで盛り上げてくれる。

 そして、これらの魅力を殺さないように本作ではユニットの登場数が前作よりも多く設定されている。
 プレイヤーは主人公ハル艦隊の他に最大2つの艦隊を編成・指揮し、同様に多数用意された敵艦隊を駆逐してゆくこととなる。
 そのためマップの一つ一つにはしっかりとしたボリュームがあり、じっくりと作戦を練る楽しみが支えられている。

 このほか空母や砲艦の性能が新たに設定され直されており、戦闘時の「反撃」も廃止されているなど、本作は「戦略性」を突きつめて前作から作り直された内容となっているのである。


・ランダム性

 ・・・と、ここまでは良いのだ
 本作はゲームの進行を管理するあるシステムによって、これら緻密に設計された内容を全てブチ壊しにしてしまっている。

 「チット」である。

 これは行動するユニットを決めるチケットの様なもので、敵・味方のユニットが書かれたチットを混ぜてシャッフルし、山から引かれた順に行動するというシステム。
 つまり、ユニットの行動順は完全なランダムということである。
 敵が連続行動して反撃の間も無く撃沈されることもあれば、哨戒行動でターンを消費した後に敵から一斉攻撃を受けることもある、と、ゲームを運が左右する理不尽な物にしてしまっているのである。
 もちろん上に挙げた例は極端なケースだが、それでなくともダメージが戦力の低下に直結するこのゲームで先手を運任せにするというのは納得できたことではないだろう。

 ・・・と、「順番がランダム」というだけで戦略性は大きく揺らぐのだが。
 「チット」にはいくつかの種類がある。
 名前の書かれたユニットが行動する「艦隊チット」、
 自軍の好きなユニットを選択して行動させる「同陣営自由選択チット」、
 そして全ユニットからランダムに行動ユニットを決定する「全陣営自動選択チット」、
 の3つ。
 全ユニットからランダムに行動・・・要は手数さえもランダムというわけである。

 繰り返すが、複数の戦艦からなる「艦隊」を1ユニットとして扱う本作。敵からのダメージは戦艦の撃沈を意味し、戦艦の撃沈は攻撃力の低下と旗艦の露出を意味する。
 自軍と敵軍が同時行動し、互いの攻撃が交差した前作はその点では非常に合理的な設計だったと言える。
 だが本作は・・・早く・多くチットを引いた側が圧倒的に有利になってゆくという、あまりにも理不尽な設計となっているのである。


 なおこれは蛇足なのだが、本作では1ユニットを構成する戦艦数が「7隻」に変更されている。
 その影響か「陣形」も前作から多少変更を受けており、戦艦が横に並ぶ横列陣が基本形とされている・・・が。
 これは正面から旗艦が丸見えという危険極まりない陣形に変更され、攻撃時は強制的に正面を向くという仕様と相まって完全な死に陣形となっている。
 それでも敵はなぜか旗艦以外を攻撃したりするのだが。


・まとめ

 移植ついでにSS版「クォヴァディス」を本格的なシミュレーションゲームにリメイクしようとしたであろう本作。
 実際多数追加されたシステムは戦略的に思えるものなのだが、先に手を出した者勝ちの艦隊システムと最悪の相性を持つ「チット」制を採用したことですべて台無しとなってしまった感がある。
 ストーリーの方も若干手が加えられているが、セガサターン、ラジオ番組、ドラマCD、小説(角川スニーカー文庫)、本作、(企画倒れしたらしい)OVA、と何度も反芻するほどの内容かどうかは正直疑問である。
 それでも本作に興味があり、SS版を未プレイなのであれば・・・こちらに手を出すのも有り、なのかもしれない。





・関連作品

クォヴァディス前作。相手との位置を読み合う撃沈ゲーム的内容。
クォヴァディス2 〜惑星強襲オヴァン・レイ〜同時期に発売された続へ・・・ん?色々別物であり、地上戦用ロボットが主役のリアルタイムストラテジーに。


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