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ページ公開:2012/12/04


VIRUSウイルス


プラットフォームセガサターン
開発ハドソン
発売ハドソン
発売年月日1997年 8月
ジャンルハイブリッド・アドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ70ブロック、4ファイルまで+オートセーブ機能あり


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
単調 設定が濃厚 アニメ豊富 環境音楽的 ぬるい アニメ化ほか多し





・ゲーム概要

 ハドソン、セガ、エイベックス、3社共同プロジェクトとして発売されたクリックアドベンチャーゲーム。
 汚染された未来における電脳世界を舞台に主人公「サージ」が電脳捜査官として活躍する様を描いた内容で、パッケージ裏によると
 「CGとアニメを融合させた、ハイブリッド・ビジュアル。
 「コマンド選択の必要がないプッシュ・オンリー・システム。
 「クリーチャーデザイン、韮沢 靖。
 の3点がウリとしなっている模様。
 2Dのアニメと3DのCGシーンを併用し描かれる「スピーディーに展開されるサスペンスタッチのストーリー。」とは果たして・・・?

 なお、本作はゲームに先駆けてキャラクターの名前と大まかな世界設定以外を一新し変身ヒーローものとした漫画版を、後の10月には漫画をベースにしたアニメ版とゲームをベースにした小説版を、果てはアニメをベースにしたゲーム版を、と、意味不明なレベルのメディア展開を行った一本でもある。
 その結果は言わずもがなだが、「電脳」をテーマにした割に検索の利便性が非常に悪いタイトルなどにその暴走ぶりと言うか、盲走ぶりが集約されている気がしないでもない。


・ストーリー

 22世紀―。
 度重なる局地紛争によって生身の人間が生存できないほどに荒廃しきった地球を捨て、人類は宇宙へと生活の地を移した。月基地、宇宙植民地建設、火星開発・・・。
 地道ながらも宇宙開発を進める一方で、人類はそれらの物理的な枷から解放された理想郷を見つけ出した。

 電脳空間プロセシング・アライブである。

 コンピューターが作り上げた虚構のデータ世界に自身の五感と意識を送り込み、さまざまな制約から解放された理想的な疑似体験を味わえる世界。
 豊かな緑、暖かな太陽、澄み切った青い空・・・合理的で、かつ安全とされていたプロセシング・アライブであったが、ここでも人類は事故や犯罪から逃れることは出来なかった。
 特に人々を苦しめているのが、電脳空間に活動するデータの組成を変化させ怪物化させる「電脳サイバーウイルス」の出現である。
 肉体から切り離され、データ化された個人の情報が変質した場合――皮肉にも安全性を保持するための同一性パリティチェックによって、その存在は否定されるのだ。

 連邦宇宙軍の精鋭として数々の戦績を挙げた宇宙連邦軍海兵隊所属第一大隊第十三独立分隊、通称「ブルーメタル隊」は、そんなプロセシング・アライブにてウイルスモンスターと交戦し、壊滅した。
 まるで勝手の違う空間、通用しない武器、異形の敵、倒れて行く仲間・・・。
 ブルーメタル隊のわずかな生き残りであるサージ・シャディックスはその時の悪夢に苦しみながらも、再度プロセシング・アライブへと向かうことを決意して電脳空間の専任調査機関「STAND」へと転入した。
 無傷の肉体のまま「死亡」の判断が下される前に仲間たちを探し出すため、そして部隊を壊滅させたウイルスモンスターに復讐するため・・・それがサージの選択であった。

 と。その日も悪夢から目覚めたサージのもとにSTANDから派遣された「助手」が訪れることなった。
 プロセシング・アライブ経験の浅いサージをサポートするために用意された、ネット経験豊富な人物と言うことである。
 さて、けたたましくなるインターフォンに応答し、いざその顔を見てみると・・・
 「サージ・サディックスさんですね?はじめまして、ネット捜査官のエリカ・クレスフィールドです。
 現れたのは、どう見ても15、6の少女であった・・・。


 ・・・と、いうのがおおまかな導入部である。
 その後はSTANDの捜査官として「ファンタジーネット」や「リゾートネット」など様々なネット世界を調査し、ウイルス事件の真相に迫ってゆく、という内容だ。
 全体としてサイバーパンク調の世界観をベースとしているが、ユニークな面やファンタジーな面など親しみやすい部分も用意されている、と言ったところだろうか。
 説明書に目を通して見ても登場人物や用語が詳しく解説されており、設定に対しては強いこだわりが感じられるだろう。


・キャラクター

 ・サージ・シャディックス (CV:井上 和彦)
 主人公。現実世界(リアル・アライブ)における連邦宇宙軍精鋭部隊「ブルーメタル隊」の元隊員で、電脳世界(プロセシング・アライブ)にて壊滅した仲間たちの行方を捜すため「STAND」の一員となる。
 やや直情的な性格だが観察力があり、仲間思いな一面も。

 ・エリカ・クレスフィールド (CV:皆口 裕子)
 STANDから用意されたサージの助手。年齢の割にネット経験15年というベテランで、知識の面でサージをサポートする。
 かつてパートナーを殉職させてしまったことが心の傷となっているらしい。

 ・アシュケナージ・シャンツォ(アッシュ) (CV:速水 奨)
 STANDの装備開発やウイルスの組成研究を行う専属研究員。常に研究室の椅子に反り返って高飛車な態度を取るが、研究室を自らの前線としてウイルス撲滅へ向けての強い意志を秘めている。

 ・メロディ (CV:笠原 弘子)
 STANDの活動を補佐するオペレーターAI。疑似感情プログラムを停止しているため機械的な対応を行うが、その分能力は優秀。
 実はアッシュの妹に似せてマクノートン博士にプログラムされたらしいが・・・。

 ・ベンゲル・フォン・ツァイネル(ツァイネル社社長) (CV:石田 太郎)
 火星最大のネット関連企業「ツァイネル社」の社長。技術屋としての腕も優れており、「NOA9000」というスーパーコンピューターを設計した。
 ウイルスとツァイネル社との関連を探られることについては強い不快感をあらわにするが・・・?

 ・ウォルフガング・ゲイリー(ゲイリー大佐) (CV:玄田 哲章)
 火星電脳軍(ネットアーミー)でネット災害対策部門の責任者を務める人物。STANDについては強い不信感を抱いており、事件現場においてしばしば対立する。

 ・エイブラハム・マクノートン(マクノートン博士) (CV:小林 清志)
 電脳空間の権威にして、数々の電脳ウイルスを作成した天才犯罪者。
 現在は強制的に犯罪者をダイブさせる「電脳刑務所」に服役している。

 ・レオン・シャディックス (CV:菅原 正志)
 ブルーメタル隊の隊長にして、歴戦の戦士、そしてサージの実兄。
 3ヶ月前の全滅以来意識が戻らず、ネットでの所在も不明となっている。

 ・ドナ (CV:佐久間 レイ)
 「バイオレット」の名で活躍する情報屋。だがその素性は謎に包まれている。

 ・レッドクロー
 ヒストリーネットに出現しブルーメタル隊を壊滅させた謎のウイルスモンスター。
 名前の由来となった巨大な鉤状の腕を武器としており、ウイルス事件を調査するサージの前に再度その姿を現すこととなる。


・捜査システム

 さて、クリックアドベンチャーをベースとする本作は「POS(Push Only System)」というシステムを採用している。
 具体的には、画面内で調査可能な個所に対して「話す」、「触れる」、「見る」、といった調査方法が用意されており、これらのモードを切り替えると自動的に対応した個所へとカーソルが移動する、というもの。
 「話す」モードにすると自動的に登場人物に会話カーソルが合い、「移動」モードにすると移動可能な個所へ矢印カーソルが合う、と言うことだ。
 これを「わずらわしい手間のない新システム」といった形で紹介しているのだが・・・。

 これはむしろ、「自力で調査する楽しさ」を台無しにしている気がしないでもない。
 この機能はオフに出来ないため、カーソルが勝手に移動してしまうのは「自動的」というよりは「強制的」というべき感覚である。
 モードボタンを連続して押すと次々と調査可能な個所へカーソルが合う、調査しても反応のない個所ではカーソルの形がデフォルトに戻る、と、カーソルを自由に動かせることの意義を完全に破壊した形だ。
 そのほか、本作で暗号を入力するシーンなども失敗する度により詳しいヒントが表示されてゆくなど「行き過ぎた新設設計」を採っているので、全体として難易度や達成感は非常に薄味な状態となってしまっているのである。
 なお、このシステムのうち「調査方法を切り替える」の部分は野球拳のウソ技で有名(になってしまった)なファミコンソフト「水晶の龍(スクウェア、1986)」がすでに搭載していたわけで、本作の「新システム」とは「自動でカーソルが合う」という蛇足部分を指す形となる。
 それでさえ、「水晶の龍」での移動に関してはカーソルの位置と向きが切り替わる選択式となっていたので・・・「新システム」を名乗れるかどうかは・・・。

 (ついでに蛇足として、本作には頻繁に女性キャラクターが登場する。
 「見る」とか「触る」とか、強制的にカーソルが反応してしまうのは実にけしからん設計である。(全年齢対象なのに。))


・戦闘システム

 また、本作には電脳世界のダンジョンを捜索し「戦闘」を行う、という場面も存在する。
 これは画面内にいる「エネミー」にカーソル(照準)を合わせてクリックすることにより攻撃を行い、相手のHPを0にすれば撃破。
 攻撃や防御などの行動には時間経過によって貯まる「AP(アクションポイント)」を消費するため、いかに攻撃しつつ、アイテムや防御用のAPを温存するか?が戦闘のキモとなっている。
 そのうえでチュートリアルとして用意された「シミュレートバトル」を受けてみると、なるほど動き回る敵キャラクターに合わせて攻撃を行う必要があり、なかなかの緊張感が味わえる

 ・・・のだ
 その後の実戦ではザコ、ボス共に動き回る者は一切おらず、一度照準を合わせたら攻撃ボタン(とアイテム)を連打するだけ・・・という単調な戦闘が最初から最後まで繰り返されることとなる。シミュレーションがまるで役に立ってない
 また画面全体で表示される「ボス」についてはいずれも体のどこかにある弱点以外にはダメージが入らない、いわゆる「初見殺し」として設定されているのだが、敗北してもノーコストで再挑戦が可能であるうえ弱点位置が固定であるので弱点を探す手間ばかりが気になる形となっている。
 ・・・ボスとの戦闘ではお互いの攻撃時に短いアニメーションが流れる、という力の入った演出がなされているのだが、つくづく力の入れ所を間違えていると思わざるを得ない

 なお「AP」はキャラクターのレベルによって「最大値」こそ成長してゆくものの「回復速度」や「回復量」は全く成長せず、
 「戦闘開始と同時に殴れるだけ殴って後はチマチマと回復するのを待つ」か
 「AP回復アイテムを乱用して一方的に殴りまくる」か
 の二択が本作全体の戦闘バランスとなっている。


・まとめ

 設定は凝っているものの、「ゲーム」としての完成度はいまひとつ未満、といった内容の本作。
 アドベンチャー部分はフラグ立て以外ほとんどオートで進行し、戦闘部分は単調かつ面倒、と非常に薄味だ。
 もっとも、難易度が低いために物語はサクサク進むのでこちらを楽しみたいならば嬉しい設計なのかもしれない。
 「サイバーパンク的な雰囲気にあこがれるが、あまり残酷だったり雰囲気の暗い物はちょっと・・・」
 という人ならば、ゲームが苦手でもアニメ気分で楽しめる(かもしれない)一本である。





・関連作品

・VIRUS THE BATTLE FILEDプレイステーションでアニメ版をカードゲーム化した一本。ロゴやパッケージは似ているが、内容は・・・。
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タイトルと雰囲気は傑作。


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