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ページ公開:2012/02/07


武蔵伝むさしでんII BLADE MASTERブレイドマスター


プラットフォームプレイステーション2
開発スクウェアエニックス
発売スクウェアエニックス
発売年月日2005年 7月
ジャンルアクションRPG
プレイ人数1人
セーブデータシステムデータ249KB、
ゲームデータ1つ352KB、21データまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
物足りない 盛り上がりに欠ける 「マンガシェーディング」・・・? やや大人しい ボス戦以外は良好 隠しモードが爽快





※※※今回のレビューは、大目のネタバレを含みます。※※※


・ゲーム概要

 1998年に発売されたアクションRPG「BRAVE FENCER 武蔵伝」の、7年越しの続編。
 ・・・と思っていたら、その実はゲームシステムを大雑把に継承し、ストーリー、世界観を一新したリメイク作であった。

 前作の「ゲット・イン」は「見切り」へと姿を変え、なにやら怪しい「ダッコ」なる新システムを引っさげた内容は、果たして・・・?


・見切り

 ストーリーは後回しにして、先ずは本作の特徴的なシステムについて見てみよう。
 「見切り」は前作の「ゲット・イン」のようなもので、ゲージを溜めて「見切った」相手の技を受けることでその技を自らの物とすることが出来る・・・というシステム。
 「ゲット・イン」との最大の違いは、「一度覚えた技は決して忘れない」ということだろうか。
 このためゲーム中では好きなタイミングで好きな技を選択・使用することが出来、臨機応変に戦うことが出来る・・・はずだった。

 「はずだった」というのは、この「見切り」で習得できる技があまりにも似たり寄ったりであるためだ。
 習得できる技は、
 ・コマンドの組み合わせで発動する通常攻撃「剣技」
 ・MPを消費し「○」ボタンで発動する必殺技「秘剣」
 ・MPを消費し、攻撃以外の効果を発揮する「秘技」
 ・防御時に特殊な効果を発揮する「防御」

 の4つからなり、その総数は24個にも及ぶ。
 が、その内訳は「剣技」4つ、「秘剣」14つ、「秘技」4つ、「防御」2つ、という見事な偏りっぷり
 さらに「秘剣」を詳しく見てみると、「滅多突き」と「地獄突き」とか、「十文字斬り」と「×の字斬り」とか、「それ分ける意味あるの?」と言いたくなるようなものばかりが揃っている。
 「遠距離への攻撃を補う」とか、「間合いを詰めつつ攻撃する」とか、そういったものは終盤(4章)まで待たなければならず、それまでに入手できる技はほぼ通常技で代用可能・・・と、非常に存在価値が怪しい物となっているのである。

 また、「見切る」ためには一度相手の技を受けなければならない、という点も足を引っ張っている。
 例えば「突き」と「振り回し」という2つの攻撃を持つ敵キャラクターがいる。
 このキャラクターから習得できるのは「振り回し」の方なのだが、そのことを知らなければ「突き」の攻撃を見切ろうとし、無意味に攻撃を喰らって痛い思いをする恐れがあるわけだ。
 さらに「一度覚えた技は決して忘れない」ため、「ある技」を習得するまでは一度見切りに成功したら二度と使われることの無い、とことん利用価値の低いシステムとなってしまっているのである。

 ただ第3章に入り、「ある技」を伝授されると「見切り」の重要度はグンと上昇する。
 相手のあらゆる攻撃を見切ることで、必殺の反撃を繰り出せる「ある技」。なぜこういった要素を最初から用意していないのか疑問であるが、この技を覚えてからが「見切り」システムの本番であると思って頑張って欲しい。


・ダッコ

 また、「ダッコ」なる奇怪なシステムも本作のウリの一つと言えるだろう。
 本作の「ムサシ」は物語の中で「五輪剣」なる剣を集めており、それぞれに対応した「巫女」の導きによって新たな剣を手に入れてゆく。
 その過程で、捕らわれた「姫」や「巫女」たちをお姫様「ダッコ」して敵地から救い出す・・・という場面があり、それをシステムの一つとして組み込んだわけである。

 正直、わけがわからない

 「ダッコ」中は各アクションが変化し、主な攻撃方法が2つに絞られる。「投げ斬り」と「ダッコ攻撃」だ。
 「投げ斬り」はダッコした相手を宙高く放り投げ、周囲の敵を一閃。落下してきた相手をキャッチするのと同時に吹き飛んだ敵の体が崩れ去る・・・というもの。
 本作の敵キャラクターはこれに合わせたのか「死亡」→「消滅」の演出がやけに凝っており、まとめて投げ斬りを決めたときはなかなかにカッコいい。
 (そのせいで処理落ちするが。)

 このほかに刀や剣を使用したアクションは使用できず、ガードは自らの身を挺してかばうもの、ジャンプは力を溜めて跳び上がるものとなる。
 これだと戦闘は大きく不利になりそうなものだが、「ダッコ攻撃」の存在によってその問題はほとんど気にならない。
 ・・・説明書から「ダッコ攻撃」の解説文を抜粋しよう。

 「□ボタンを押すと「ダッコ」しているキャラクターを敵にぶつけて攻撃することが出来ます。
  _,._
 (;゚д゚) ・・・!?


 解説文そのままである。気絶したお姫様や負傷した巫女さんを敵に叩きつけて攻撃するのだ。
 しかもこれが尋常でなく強力で、「高威力+吹き飛ばし効果+前後のスキが小さい」と高性能な上にダッコした相手が負傷するなどのペナルティーも無い、という最強クラスの攻撃となっているのだ。

 正直、わけがわからない

 恐らく「投げ斬り」だけではつらいと組み込まれたのだろうが、そもそもダッコしている相手を一時的に下ろして戦闘に集中することもできてしまうため、こんな無茶な仕様にしなくても良かったのでは・・・と思えてならない。


・五輪剣

 また、先ほどちょろっと名前を出した「五輪剣」について。
 本作の「ムサシ」が操る武器は、日本刀「兼重(かねしげ)」と大剣「カイブレード」、そして精霊の力を宿した5振りの剣「五輪剣」となっており、五輪剣は言うなれば前作の「レイガンド+五輪の書」に対応している。
 これを5振り+カイブレードそれぞれにデザインし、段階的に入手してゆくことになったわけなのだが・・・。
 いずれも属性と「秘奥義」以外の性能が同じであり、わざわざ個別に入手する楽しみが無い。
 火の剣だろうが風の剣だろうが攻撃力、攻撃速度、リーチ、全てが初期武器「カイブレード」と同様であるうえ、ストーリーの都合で入手直後には「秘奥義」を使用できない貧弱な武器となっているのである。

 その「秘奥義」とは五輪剣それぞれの特殊能力を発揮する物で、巨大化した剣で周囲を一掃する「大魔刃」(カイブレード)や地震を起こして周囲の敵をひるませる「大地鳴動斬」(地の剣)などが存在する。
 前作の「五輪の書」と比べれば実戦レベルで活躍する物が多く、かつ謎解きで使用することもあるのでその存在価値は高めだ。
 高めであるがゆえに、なんと使用するのにMPを消費してしまう
 これではMPを使い果たしてしまうと秘奥義が使用できず、攻略出来ない事態に陥る・・・と心配し、先ほどの「秘剣」を含め使い渋ってしまうのが普通だろう。
 実際はMPを使い果たすと最低限のMPは自動で回復するためそのような心配は無用なのだが、どうにも本末転倒な気がしてならない


・ストーリー

 さて本作のストーリーだが、大まかな流れは前作を踏襲している。

 時は「魔蒸世紀」・・・。
 「魔蒸機関」の発明により絶大な権力を得た武装勢力「ガンドレイク社」。
 その首領「ガンドレイク」はこの世界のすべてのエネルギー源「魔蒸石」の力を独占し、世界を牛耳ろうと企んでいた。

 一方、神獣と共に暮らす民族「ミスティック」の姫君は「ガンドレイク」の企みから人々を救ってもらおうと究極魔法「英雄召喚」を執行する。
 「英雄召喚」によってこの世界に召喚されたのは少年剣士「ムサシ」だった。
 ムサシを召喚した姫は、すでに「ガンドレイク」の手に落ちており、ムサシが元の世界に戻るには彼女を助けなければならなかった。
 ムサシは姫を無事救出し、元の世界に戻るため、「ガンドレイク」に立ち向かうことを決心する!

 (説明書より抜粋)

 ・・・というのが、おおまかな導入部だ。この後ムサシは元の世界へ返るためのカギ「五輪剣」を探しつつ、その魔力を目当てに狙われる「巫女」を救い、巫女の導きによって「五輪剣」を入手してゆくのである。


・キャラクター

 本作のキャラクターデザインは、ほぼ全てが野村 哲也氏によるものらしい。

 ・ムサシ
 本作の主人公。この世界へ召喚された使命感に燃え奮戦するが、やや楽天的で色男。
 「宮本武蔵の若かりし姿」と明言されているわりにファッションセンスが周囲になじんでいるため、かえって強烈な違和感がある。

 ・ミセラ姫
 ムサシを召喚したミスティックの姫君。芯の強いしっかり者。
 ストーリー中3回も誘拐されるなど、あまり扱いが良くない。

 ・ガンドレイク
 武装勢力「ガンドレイク社」の首領。凄腕の剣士で謎多き人物。
 長身美形、長髪、長刀使い、冷徹、主人公に興味を持つ、と、トコトン「某VIIのアノ人」なキャラ。

 ・ミスティックの巫女
 「地」、「水」、「火」、「風」、「空」、の力を守護する巫女たち。
 おっとりタレ目、勝ち気メガネっ娘、双子ロリータ、男勝り、セクシー、と一通り揃っているが、出番は短い。

 ・ガンドレイク五人衆
 「ガンドレイク社」の各部署を担当する幹部たち。ゲーム序盤から「定例幹部会」という形で登場し、強烈な存在感を放つ。
 ポジションとしては前作の「リーダーズフォース」に近い。


・クエスト

 さて、そんなストーリーは各ステージを舞台にした「クエスト」を攻略することで進行する。
 簡単に説明すれば何かしらの目標を用意したシナリオの区切り、であり、「さらわれた巫女を救出する」とか「五輪剣を入手するために土地の主と対決する」といった内容の物が、1章につき2〜3個ほど用意されている。
 ストーリーの進行に関係しないサブクエスト的なものを含めて、「1章につき2〜3個」である。
 正直言ってボリューム不足だ。

 1つ1つのクエストが長いのでプレイ時間自体はそれなりなのだが、「巫女の救出」と「五輪剣の入手」がほぼ確実に入ってくる、などバリエーションの不足がつらい。
 毎章で似たようなパターンが繰り返されるためにストーリーも盛り上がらず、ストーリーの大半がクエスト中に進行するため村との関わりが薄く、「クエスト」を名乗る割には普通にクリアするのと変わらない内容ばかり・・・
 個人的な感想だが、どうもプレイ後の充足感に欠けるのである。

 ついでに言ってしまえば本作も「カプセル」に閉じ込められた住人を解放する、という要素があるのだが、その総数は28名、しかも通路をふさぐなどして助けざるを得ない者が何名か存在する
 だったら最初から開放しておけというのが正直な感想だが、このあたりが「ボリューム不足」の証左なのかも知れない。


・ホロカード

 なお、前作の「フィギュア」に対応するコレクション要素として「ホロカード」なる物が存在する。
 これは登場するキャラクターそのものを自由な角度から眺めることが出来る、という物で、キャラクター一人につき1つのアクション(斬る、回る、走る、など)が再現されるようになっている。
 前作のフィギュア風にアレンジされたキャラクターたちと違って「ゲーム中のキャラクターをそのまま」使用しているため、やや手抜き感があるものなのだが・・・。

 ホロカードを手に取ってみれば、本作の女性キャラは妙なところまで徹底して作りこまれている、ということが「自由な角度から眺める」ことによってよくわかる。
 さらに、とある(脇役)女性キャラ2名にはホロカード専用のマニアックなコスチュームが用意されており、スタッフの情熱(に似た何か)がひしひしと伝わってくる。
 トドメに、「ゲーム中のキャラクターをそのまま」使用していたことを思い出せば、そんなキャラクターたちをお姫様ダッコしていた・・・わけで・・・。

 ・・・そんなところよりもっと別の部分に力を入れろと言わざるを得ない状態となっている。

 一応、一部のホロカードの収集には宝箱やミニゲームが関わってくる、という面があるため、前作の「フィギュア」と比べて幾分か収集することへの面白味がある。
 どうせなら全部そうすればよかったのに・・・とは、言うだけ無駄だろうが。


・まとめ

 なにかと前作とは違うところを作り出そうとして、結果練りこみの甘い中途半端な出来に仕上がってしまった・・・という感のある本作。
 単体で見れば「良作」レベルでそこそこ遊べるのだが、続編として見るとどうにも見劣りしてしまうのは、この手のゲームの宿命か。

 ただRPGとしてのボリュームはともかくアクション部分はそれなりに遊べる内容なので、安価に剣を使った3Dアクションを楽しみたいのであればそこそこオススメ出来る一本だ。



・ネタバレ

 以下、ネタ。

 ・最終章まで一切直接対決の無かった「ガンドレイク五人衆」は、ラストステージである「要塞島」で「まとめて倒すことになる」。
 ・ラスボスとは2連戦を行い、1戦目では奪われていた五輪剣を取り戻すことになるのだが、「2戦目は別に五輪剣が無くても倒せる」。
 ・そもそも五輪剣は「差し出す代わりに姫を解放してもらった」ので、後は「ガンドレイクを倒すだけ」。
 ・これまで7人もの女性キャラをダッコしてきて、「恋愛フラグとか立ってる気がしていたが別にそんなことは無かった」。
 ・物語の結末は「ムサシが元の世界に帰れる」と信じて・・・。

 ・・・って、これなんて「武蔵伝II SWORD MASTER」?


・ワンポイント攻略

 ・ステータスの上限はHP、MPが300、その他が200。所持金の上限はわずか10万なので、上げすぎ・貯め過ぎに注意。
 ・レベルアップ時、「眼力」や「運」を上げるメリットはほとんど無いぞ。
 ・カイブレードを重用するプレイヤーは、第3章で助け出したミセラ姫に会いに行ってみよう。いい物がもらえるぞ。
 ・ゲームクリア後のデータはLv、所持金、ステータス、その他「ホロカード以外全て」が初期化されてしまう。クリア前にはホロカードをありったけ買い込み、かつ、クリアデータを別にセーブするように。
 ・全ての技を見切ってクリアすると出現する「BLADE MASTER」モード。爽快感バツグンの内容を見逃すな!

 ・(個人的)名曲、「Aeolic Guardian」はJUKEBOXの31番。ぜひ一度聴かれたし。
 ・レベルアップシステムも独特なので、最低レベルクリアなどの縛りプレイも可能だ。


・ホロカード完全収集に向けて

 ・まず、ほとんどのホロカードはタレッジオから買える。ザコの撃破、村人の救出、でラインナップが増えていくぞ。
 ・タレッジオから購入できないカードは宝箱かコロシアムで入手できる。ボスカードのほとんどはコロシアムだ。
 ・「フライングマシンニンジャ」は魔蒸炭鉱のミニゲームで「S」を取れば入手できる。撃破41機以上、ダメージ2回以内、が目安だ。
 ・「アラキュリア」は撃破後、戦闘した場所を再度訪れてみると・・・。
 ・クリア後でなければ入荷しないカードもある。クリア後のデータを作成し、とりあえず3章、魔蒸タワー(でタレッジオを救出する)まで攻略しなおそう。
 ・コロシアムで100人斬りを達成すると貰える「望遠レンズ」。クリア後にこれがあれば・・・。
 ・コレクションの一番下、最後のカード。2周目、5章終盤には入手可能なので、イロイロ試してみよう。





・関連作品

BRAVE FENSER 武蔵伝前作。絶妙に練りこまれた完成度が光る一品。
・武蔵伝II EPISODE ZERO番外編。iアプリとして登場し、本作の前日譚を描いたらしい一品。
(※移植等が無いため、詳細は未確認。)


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