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セイバーマリオネットJジェイ BATTLEバトル SABERSセイバーズ


プラットフォームプレイステーション
開発エモーションデジタルソフトウェア
発売バンダイビジュアル
発売年月日1997年 3月
ジャンル3D格闘
プレイ人数1〜2人
セーブデータなし(セーブ機能がない)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
特徴に欠ける 非常にぞんざい かなり粗い 音質に難あり 地味 なぜ格ゲーにしたのか謎





☆今回はキャラクターゲームのレビューです☆


・ゲーム概要

 あかほりさとる氏とねぎしひろし氏によるメディアミックスプロジェクト「SMガールズ セイバーマリオネット」シリーズより、ことぶきつかさ氏によるキャラクターデザインを加えてアニメ化もなされた代表作「セイバーマリオネットJ」のゲーム化?作品。
 ゲームオリジナルキャラクターを加えたアニメ版ノンテロップOPを収録しているほか、初回限定版は「DOKI♥♥DOKI乙女箱」と銘打ってメインヒロイン3人のデフォルメフィギュア(未塗装)と、CDケースのジャケットを着せ替えられる10枚のオリジナルイラストを特典としていた。

 またアニメ版の続編「〜toX」のとある回では登場人物がプレイしているという形で出演を果たし、内容以外の見どころが豊富な作品・・・なのだが・・・。


・原作「セイバーマリオネットJ」

 本作の原作「セイバーマリオネットJ」はもともとのプロジェクトより小説(ノベル)、アニメ、漫画、の幅広いメディアミックスで描かれた作品である。
 それぞれで物語の展開が異なるためこれ、というあらすじを説明するのは難しいのだが、共通する部分を説明すると・・・

 時はSF、所は江戸、ここ「ジャポネス」は男だらけの惑星「テラツー」の6つの都市国家のひとつ。
 移民計画を口実に地球を追い出された「メソポタミア号」がこの惑星に墜落してから300年、幸か不幸か生き延びた6人の少年たちはクローン技術によって人口を増やし惑星を開拓したものの、「女性」のクローンだけはにっちもいかず「テラツー」は男衆だけの汗くさーい惑星となったのでありました。
 それはいかん!と女性を模したアンドロイド「マリオネット」が作られ生活に寄り添ってはいるものの、ああ彼女たちはしょせん機械、悲しいかな人間の心などは持ち合わせていないのでありました。
 ところがある日、ジャポネスの少年「間宮小樽」が見つけたマリオネット「ライム」は他のマリオネットとは異なり、自ら感じ、考え、行動する「心」を持ったマリオネットだったのであります!
 すったもんだの末にさらに「チェリー」と「ブラッドベリー」を目覚めさせた間宮少年は彼女たちにぞっこん惚れられ、九尺二間に男1人女3人の共同生活、一日たりと姦しくない日なんかありゃしない!
 (そんなの不健全だよ小樽クン!人間は人間同士愛を深めあうべきさ!とのたまう少年「花形美剣」がこの辺でふっとばされる)
 ところが間宮少年は惑星統一の野望を持つ「ガルトラント」の「ファウスト総統」、および彼が率いる「ティーゲル」、「ルクス」、「パンター」の3体のマリオネットに付け狙われ、有無を言わさず惑星テラツーの運命を左右する争いに巻き込まれてゆくのでありました!
 さあさあ、気になるこの物語の行く末は機械の心「乙女回路」だけが知っているゥ!

 と、そんな感じだ。

 要するに戦闘の要素もあるにはあるが基本はラブコメ作品であり、なぜこれを格ゲー化しようと思ったのか頭を抱えるところである。
 同じくラブコメ作品で格ゲー化した漫画に「らんま1/2」があるが、あちらは原作からして格闘家を題材とした内容で作中にいくつもバトルシーンや「必殺技」が登場するので格ゲー化しても特に違和感はない。
 対して「セイバーマリオネットJ」のマリオネットたちは超人的なパワーやスピードこそあれ繰り返し活躍する技のたぐいは存在せず、仮に格闘ゲーム化しようとすればモーションや技名などはゲームオリジナルとせざるを得なくなってしまう。
 実際そうなったのが本作というわけだ


・基本システム

 本作は3D格闘であり、ガードはレバーの強弱パンチキック4ボタン制。
 飛び道具などの「必殺技」の概念があり、コマンドは236(下・前下・前)+パンチや623(前・下・前下)+キックなどの2D格闘方式。
 とはいえR1・R2ボタン一つで必殺技を繰り出せる一発必殺技のシステムもあるので安心だ。
 また軸移動の概念は一部の「軸ずらし技」にのみ存在し、使用感は鉄山靠のように回避と攻撃を兼ねるというものに近い。

 ・・・とまぁ、一見無難なのだが・・・。

 ひとつに、本作は「技の連携の概念がほとんどない」。
 3D格闘には一定の順序で攻撃ボタンを入力することで通常と異なる技が出て連続攻撃になる、というシステムが定番だがこれがない。
 かといって2D格闘において通常攻撃の途中で強攻撃や必殺技を繰り出すことでスキを消しつつ攻撃を継続できる、というキャンセルの概念があるわけでもない。
 密着時に弱パンチを連打する時に限り連続攻撃のような挙動となる(詳細不明)のだが、本作は出の速さとリーチを見て一撃一撃を差し合うというだいぶストイックなスタイルである。

 それから「カメラワークが地味」でもある。
 投げ技などを決めてもカメラワークは双方のキャラクターを横から映す基本の視点に固定されており、DDTや巴投げのダイナミックな動きを正面から映すというようなことがない。
 キャラクターをポリゴンで描くことの利点のひとつはキャラクターを映す視点や距離を柔軟にとることができ迫力のある絵を撮れることにあると思うが、これを活かしていないのはなんとも残念だ。

 そしてなにより、「キャラクターのモデルがかなり粗い」。
 時代相応と言えば時代相応だが、関節がなく部品が分離した手足に平面に描かれた顔、イラストの再現度はとても低い。
 またキャラクターの表情が一切変化しないことは時代を考慮しても見劣りし、着物やツインテールなどやわらかなパーツが多いキャラクターデザインが「揺れ」を表現できない技術水準に対してあまりに酷である。

 そのうえ「モーションの多くがキャラ間で共通」でもある。
 原作では特に実在の格闘技をモチーフとした動きを持つわけでもなく、本作のキャラクターは基本的にオーソドックスなファイティングポーズをとってジャブやハイキック、水面蹴りといった技を繰り出すこととなる。
 強パンチのモーションや必殺技はキャラごとに固有のようだが、キック中心のムエタイVS緩やかに受け流す合気道、や流れるような連続攻撃を繰り出す中国拳法VSダイナミックな投げ技のプロレス、などといった動きそのものの違いを見て楽しむといった要素はないと言っていい。

 そう、本作はこういった点から眺めていてもあまり面白くないという格ゲーとしてわりと致命的な内容なのである。
 ホントになぜこれを3D格ゲーにしようと思ったのか

 ・・・さておいて、本作において固有のシステムを見ると「乙女回路」と「パーツ選択」の2つが挙げられる。
 「乙女回路」は原作のストーリーにおいて重要な要素だったが、本作においてはまぁ超必殺技のゲージシステムである。
 攻撃を受けて体力が減少すると蓄積し、おおよそ4割を減らされると満タンとなって「発動」。
 一定時間攻撃力が上昇するほか特定のコマンドで超必殺技を繰り出せるようになり、一定時間が経過するか超必殺技を使用するとゲージが空になって通常状態に戻る。
 超必殺技はキャラにもよるが5割減らせる技が目立ち、使い時を図れば発動中に逆転KOもありうるというバランスだ。
 ただし乙女回路の発動には硬直がありタイミングは自動、発動中に接触した相手は吹き飛ばされるものの発動後に技を合わせられると弱く、特に投げ系の超必殺技を持つ相手に後出しする形だとそのままブン投げられて終わりということもありうる。
 一方飛び道具系の超必殺技は出が遅すぎて簡単にガードでき、このあたりもバランスが粗く思うところだ。

 「パーツ選択」は対戦前にいくつかの「パーツ」を選択し能力を補正できるというもの。
 「でかパンチ」ならパンチ技の攻撃判定が拡大し、「ヒートキック」ならキック技の威力が向上する、という具合だ。
 キャラクターの得意技を延ばしたり、あるいは不足を補ったりと戦術性を深めるシステムではある。
 あるのだが、キャラクターの頭身がリアル寄りなので手足が巨大化する「でかパンチ」・「でかキック」はだいぶシュールなことになる。
 一方の「ヒートパンチ」・「ヒートキック」はヒットエフェクトの追加に留まるのだが、ここはもう少し煮詰めれば着せ替え要素として「鉄拳」シリーズなどに先駆けたかもしれないと惜しく思うべきだろうか。


・キャラクター

 ・間宮小樽 (CV:今井由香)
 原作の主人公。ライムたちを目覚めさせて連日ラブコールを受けているが、異性という価値観がそもそもないテラツー人としてどう応えるべきなのかは戸惑いっぱなし。
 本作のストーリーは「間宮小樽の一日デート権をかけてマリオネット同士が争う」というもので、エンディングのみに登場しておいしい思いをしたり振り回されっぱなしだったりする。

 ・ライム (CV:林原めぐみ)
 本作の第一ヒロイン。外見は思春期相当の少女だが内面は幼児そのもので、一切他意のない「大好き♥」発言をはじめ直情的な行動の数々が周囲を振り回しまくっている。
 キャラ性能としては突進対空技「ライムアッパー」と突進技「ライムキック」を必殺技とする高機動接近戦タイプ。
 大きく踏み込む強パンチは例外的に弱パンチのヒットからキャンセルして繰り出せるなど驚異的な性能を持ち、回避・接近・攻撃の3アクションを同時にこなすライムアッパーもかなり性能が高い強キャラ。
 超必殺技「超すぺしゃるみらくるライムあたーっく」は5割減らせる必殺投げで出せれば強い。
 (ただしコマンドは全キャラ共通でヨガ2回と長め、本作は「6236+P」が波動にも昇竜に化けず通常パンチになるなどコマンド受け付けがやたらとシビアである)

 ・チェリー (CV:白鳥由里)
 本作のヒロインの一人。外見的には最も幼いが分析・計算能力と家事全般に長け礼儀正しく包容力にあふれた良妻賢母。ただし重度の妄想癖あり。
 キャラ性能としては飛び道具「紅蛍」と対空技「花鳥風月」を持つ待ちキャラタイプ。
 体型の都合上リーチに劣るという無視できない欠点があるが、モーションの優秀なしゃがみ強パンチなど密接時には強い。
 超必殺技「熱烈!!ファイヤー炎舞!!」は高く飛び上がって対地飛び道具を連射する・・・という見てからガード余裕の死に技。

 ・ブラッドベリー (CV:平松晶子)
 本作のヒロインの一人。外見的には年長の女性で、性格面も酒とスキンシップを好み曲がったことを嫌う姉御肌。巨乳。
 キャラ性能としては投げ技「トルネードバスター」と中段攻撃「無影脚」を持つ投げキャラタイプ。
 開幕の間合いから吸い込める「トルネードバスター」の性能が抜きんでており、掴みモーションがない、投げ抜けがない、ワンボタン必殺技がある、といった本作のシステムにおいて大暴れする。
 超必殺技「ファイナル・ギャラクティックイルミネーション!!」は5割減らせる必殺投げ。

 ・アップル (CV:今井由香)
 本作オリジナルキャラクター。ライムたちの保険となるべく用意されていたマリオネットで非常に引っ込み思案、らしい。
 キャラ性能としては設置技「ソニックエッジ」と対空技「ジェットレインボウ」を持つカウンタータイプ。
 また当て身投げ系の技「受け身投げ」を持つらしいが・・・上段にしか反応しないうえ受け付けタイミングがシビアで化けたときの強パンチが弱く、通常技のリーチもことごとく短いなど全体的にキャラ性能は低い。
 超必殺技「ハートブレイクボンバー」はガード不能乱舞技だが突進がないので当てるのは難しく、外れれば後ろを取られるのが必至。

 ・ティーゲル (CV:高乃麗)
 敵役「セイバードールズ」のリーダー格。アニメ版では特にそういう描写はないが本作では小樽にベタ惚れしている。らしい。
 キャラ性能としては飛び道具「デスニードル」と広範囲攻撃「スレイヴラッシュ」を持つオーソドックスタイプ。
 またセイバードールズは大人の女性相当の体格により蹴り技のリーチに長け、相手によっては一方的な試合運びとすることが可能。
 超必殺技「イリュージョン羆(ひぐま)落とし!!」は5割減らせる広範囲投げ技。

 ・ルクス (CV:水谷優子)
 敵役「セイバードールズ」の一人。三人の中で特に計算高く、ほかの二人を策にはめて出し抜こうとしたこともある。メカクレ系。
 キャラ性能としては飛び道具「プラズマキャノン」と突進技「ブラッドビート」を持つオーソドックスタイプ。
 こちらも必殺技より通常技のリーチを活かした戦い方を心掛けたい。
 超必殺技「ヘブンリー・ビッグウエンズデイ!!」は地を這う系の飛び道具だが出が遅すぎて簡単にガードされるうえに削りダメージも低い死に技。

 ・パンター (CV:井上喜久子)
 敵役「セイバードールズ」の一人。三人の中で特に攻撃的で後先を考えない性格。一方で髪型を大胆に変えるなど容姿を気にするところもある。
 キャラ性能としては飛び道具「パンター滅殺光」と飛び道具「ヘルドライブ」を持つ飛び道具偏重タイプ
 ・・・に見せかけて、鉄球を振り回してから投げて手元に引き戻す「ヘルドライブ」の性能がやたらと高く全距離で戦える高性能キャラ。
 超必殺技「大回転アトミックドライバー!!」も5割減らせる広範囲投げ技だ。

 ・梅幸 (CV:折笠愛)
 ジャポネスの公儀御庭番マリオネット。乙女回路を持たないが、ある目的から通常のマリオネットよりも豊かな感情表現を持つ。
 なぜか本作のラスボスを務める。通常技の性能はパッとしないが乱舞技「隼乱れ打ち(地上)」、対地飛び道具「隼乱れ打ち(空中)」、対空技「忍者昇竜ブレード」、とブレードを使った必殺技の性能は高い。
 またなぜか乙女回路を備えており「超電磁流サンダークラッシュ!!」という超必殺投げを持つ。

 ・玉三郎 (CV:川村万梨阿)
 ジャポネスの公儀御庭番マリオネット。梅幸と目的を同じくしいつも二人一組で行動している。漫画版では未登場。
 なぜか本作の隠しボス(条件は難易度HARD?)を務める。特殊攻撃「羅刹斬」、飛び道具「砲撃掌」の性能もさることながら、薙刀による各種通常攻撃の性能が驚異的。
 超必殺技「一撃必殺!!天下御免バスター!!」はあまりパッとしない乱舞技なのでゲージは威力アップの効果と割り切るべきか。

 ・花形美剣 (CV:なし)(※アニメ版では子安武人)
 大店「上州屋」の御曹司で力も運も根性もないボンボン。アニメ版序盤では何かと小樽に嫌がらせをしていたが、のちにそれが恋心からくるものだったと確信しライムたちの恋敵となる。
 (テラツーでは普通の性癖です)
 本来は主人公とヒロインがくっつきそうになると湧くお邪魔虫で吹っ飛ばされ担当のギャグキャラ。
 本作ではロード画面で踊っているだけで出番がなく、各キャラクターのエンディングは原作本編と比べてひじょーに淡白な仕上がりとなってしまっている。


・その他特典

 ・・・は、特にない。
 アニメ版の原画やサントラ、キャラクターの設定資料、キャラクターの待ち受けボイス、なんてデータ特典はなく、強いて言えばキャラクター選択時の顔グラフィックとスタッフロールの集合絵があるくらいだろうか。

 キャラクターの項で触れた通りストーリーも薄く、戦闘前後にキャラクター固有の掛け合いがあるようなこともない。
 コレクターズアイテムとしても、正直魅力を感じない内容だろう・・・。


・まとめ

 というわけで、どの層に向けても正直厳しい一作。
 キャラが入り乱れててんやわんやの原作に対して主人公と使用キャラだけの掛け合いがラブコメとして特別面白くなるわけもなく、登場キャラクターは特に原作を再現したアクションをするわけでもなく、格ゲーとして特別のめりこむ要素があるわけでもなく、本作オリジナルキャラクターは「押しが弱い」とだけ特徴づけられたホントに押しの弱いキャラ・・・とトコトン見どころがない。

 まだ落ち物パズルあたりで2Dイラストを前面に押し出した内容にした方が適当だったのでは・・・と、存在に首をかしげる一本である。





・関連作品

・「闘神伝」シリーズタカラの3D格闘シリーズ。
本作と同じくことぶきつかさ氏がキャラクターデザインを担当している。
また、2D格闘調のゲームシステムで、ボタン一つで必殺技が出るという仕様も特徴とする。
・「らんま1/2」シリーズ作:高橋留美子の格闘ラブコメ漫画作品「らんま1/2」のゲーム化シリーズ。
機動力の女らんまや飛び道具の良牙、リーチのムースなど原作からして格ゲーらしいキャラが立っており、格闘ゲームとしてだけでも5作品存在する。


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