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双界儀そうかいぎ


プラットフォームプレイステーション
開発ユークス
発売スクウェア
発売年月日1998年 5月
ジャンルアクションアドベンチャーゲーム
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
煩雑 世界観が深い リアリティ高し 幻想的 粗い コミカライズや小説もあり





・ゲーム概要

 プロレスゲーのデベロッパーとして知られたユークスが制作したアクションアドベンチャーゲーム。
 それまでの開発実績をうかがわせるようなリアルな作風と、陰陽五行思想を下敷きにした現代ファンタジーという異色の世界観が合わさって映像作品として完成度高く仕上がった一作。
 イベントシーンの表現としてはテキストウィンドウや立ち絵といったUIの一切を省き、モーションキャプチャーを使用したかのような3Dキャラクターの滑らかなアニメーションと、大物声優陣による豪華なフルボイスドラマ、そして異世界感のある幻想的なBGM群によって特撮作品のような画面を作っていることが印象深い。
 さすがに20年以上前のゲームとしてポリゴンの古臭さはぬぐえないが、現代であっても見ごたえを感じる作品であることは保証できるだろう。

 一方、アクションゲームとしてどうかと言えばキャラクター性能の差や操作性の悪さから並以下くらいに留まるだろうか。

 本作についてはWikipediaの該当記事がとんでもないこと(充実しすぎて編集案件になったらしい)になっているので世界観の解説などに関してはあちら任せにして簡略化し、アクションアドベンチャーとして気になった点に個人の感想レベルで触れて見ることとしよう。


・世界観とストーリーの概略

 本作の世界観は現代(近代)日本である。
 ただし自然界に満ちる「氣」が確かな影響力を持っており、木・火・土・金・水の「五行」と、陰陽それぞれにあたる「衰氣」・「旺氣」によってさまざまな超常現象が引き起こされる世界である。
 また我々生物(mortal)が暮らす「現世」に対して生物ならざるもの(immortal)が活動する「常世」が存在すると考えられており、この2つの世界のことわりが本作のタイトルとして、そしてこの世界間の均衡を破ろうとする者が本作の悪役として描かれているというわけである。

 そして、物語は五行それぞれを司る「五方輪」とその仲間たちを主人公とし、常世の開放をもくろむ「紫微仙」から日本列島に点在する封印「くさび」を防衛する戦いの数々を軸に展開してゆく。
 この「楔」は鹿島神宮の「要石」や高千穂の「天の逆鉾」、富士山地下といった実在の霊所をなぞって設定されており、この点がまた本作のリアリティに説得力を与えている。
 ゲームとしても、舞台を移しながら「楔」の防衛戦を描いて行くという構図がステージ攻略型としてマッチしており、市街地・離島・地下洞窟と変化に富んだ内容をプレイヤーに提示している。
 各ステージで展開されるドラマシーンについてもそれぞれの土地で人生を持つ登場人物たちを交えて物語を展開しており、土地の特色や主人公たちの人となりを自然な形で描いている・・・と様々な面で秀逸な構成となっていると言えるだろう。

 ・・・まあ、実際のプロットはというと紫微仙の目的が非常に俗っぽく物語にちりばめられた「謎」の数々もバレバレ、主人公一行が後手後手で一矢報いるような爽快感がほとんどないなど途中で萎えるような不満点が多数ある内容なのだが。
 一方で大型ボスとの戦闘や人物同士のヒューマンドラマなど見せ場は豊富なので、どちらに重きを置くかでストーリーの評価はやや分かれるかもしれない。


・アクション

 さて、ではアクションゲームとしての本作を見てみよう。
 操作性としてはキャラクターを背後から見て移動や攻撃を行ってゆくもので、方向キー左右は旋回に割り当てられたラジコン操作系。
 ジャンプやブースト移動(空中でも平行移動可能な中距離エアダッシュ)といった高機動アクションがある反面、普通の後退や左右平行移動が無く短距離のステップを連打するしかないなど操作性はやや悪い部類だ。

 攻撃面では剣や拳で直接攻撃するほか同時に気弾が出て遠距離を攻撃でき、移動やブースト、ジャンプ中に繰り出せば技が変化する・・・というのが基本。
 だがこれに加えて「奥義マテリア」を消費する無敵必殺技や「咒符」を消費する補助スキル、被ダメージ時に繰り出せる反撃技といくつかの特殊システムが存在し、しかも7人のプレイアブルキャラクターそれぞれでアクションに対応していたり対応していなかったりする
 さらに間の悪い事に本作は前述した「五行」の概念を属性の相性として取り入れているのでステージによってキャラクターを使い分ける必要性があり、というかそもそも物語の進行に応じてキャラクターが加入したり脱退したりもする
 ついでに言うと、ステージ内に用意された回復ポイント「龍穴」にも属性の概念があり、相性によっては回復ポイントが不発だったりいっそデバフを受けたりもする
 世界観から言えばこうした設定の数々は妥当だったのかもしれないが、ゲームシステムとして落とし込んだ結果は煩雑になってしまってあまり良い形ではないと言うべきところだ。

 また、敵に近接攻撃を加えようとしてブーストで近づくと、敵の接触判定に触れて障害物に頭をぶつけたような硬直を取ってしまうのもスピード感を殺しているマイナスポイントである。

 一方で、なんとかプラスとなるシステムを挙げるとすれば「結界」アクションの存在があるだろうか。
 これは視界内の敵1体をほぼノーモーション、ノーコストで封印し、一定時間無抵抗かつ被ダメージ2倍の特殊状態にするというもの。
 さらに攻撃力や体力と取捨選択してスキル用のポイントを割り振ることで同時に複数展開することが可能となり、拘束時間を延ばしたり複数を拘束したりといった柔軟な運用も可能となってゆく。
 アクションの操作性は全般的に悪いのだが、この「結界」を上手く駆使すれば難易度を大きく緩和できるほか、クリア時間の短縮にも役立てることができると言うこととなる。
 無効の敵もいるがタイミングによってはボスにも通用するので、本作のキーアクションとして使用感に慣れておきたいところだ。

 ・・・ちなみに、プレイアブルキャラクターのうちリーチに全く恵まれない徒手格闘キャラに限って結界も補助スキルもブーストも使用不能というあんまりな設定がある。
 山ちゃんボイスのクールガイなのだが、ゲーム中彼の活躍を見ることはほとんどないだろう。もったいない話である。


・ミュージック

 本作は聴覚面の魅力にも富んでいる。端的に言えばBGMとキャラクターボイスが質・量ともに高い水準にあるという話だ。
 特にBGMについて見て見れば、意味の知れない女性のボーカルや鈴の音が耳に残る第一ステージ「珠洲」の曲「Quake」、ピアノとハープの物悲し気なメロディーが心地よいステージ選択曲「Angel's Fear Again」、太鼓を中心に鐘や鈴?の怪しげな効果音を盛り込んで不穏な雰囲気を醸し出した第5ステージ「三輪山」の曲「Sign」・・・といずれ霞まぬ名曲ぞろい。
 全体的に和楽器を思わせる音も多く、世界観を演出するBGMとして「まさに」と感じさせるラインナップなのである。
 個人的な不満点を挙げれば中ボス・ボス戦の曲に和の雰囲気が無く、何度か使いまわしもされていて飽きが来ることがあるが・・・本作のステージには上でちらりと触れた「スキル用のポイント」を集めるという探索要素があるので、おそらくはステージ曲を聴く時間の方が長い事だろう。たぶん。


・まとめ

 陰陽五行思想が生きる現代を舞台にした世界観に日本各地の霊所を回っていくというストーリーライン、和の雰囲気を盛り込みつつも異世界観のあるBGMに、ゲームということを意識させないドラマシーンの演出・・・と、映像作品としての魅力に富んだ一本。
 これは「日本人」ならでは作り出せ、「日本人」ならでは感じ取れるリアリティが根底にあってこそのものだろう。
 ぶっちゃけアクション部分の出来がそんなに良くないのと悪役に魅力が無いのという欠点が無視できないのだが、じっくりと見るゲームが好きという方は是非チェックしてみてほしい。





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