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SPRIGGANスプリガン LUNA VERSEルナヴァース


プラットフォームプレイステーション
開発フロム・ソフトウェア
発売フロム・ソフトウェア
発売年月日1999年 6月
ジャンルアクションアドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
操作性に難あり 本作オリジナル だいぶ粗い BGMが単調 かなり粗い ボーナス要素豊富





※今回のレビューは若干のネタバレを含みます※
☆今回はキャラクターゲームのレビューとなります☆


・ゲーム概要

 週刊少年サンデーで連載されていた「SPRIGGAN(原作:たかしげ宙、作画:皆川亮二)」を題材としたアクションアドベンチャーゲーム。
 原作はアステカ文明やインド神話といった超古代の遺産を発掘して収蔵・封印する「スプリガン」というエージェントたちの活躍を描いた内容で、本作ではその本編終了後に新たにスプリガン(候補生)となった少年「大槻達樹」の物語が繰り広げられることとなる。
 原作の主人公・御神苗優と同じように、「アーマード・マッスルスーツ(以下、A・Mスーツ)」によって超人的な運動力を発揮し、さまざまな古代遺跡を巡ってその謎を解いてゆく内容はゲームとして魅力的に映るものなのだが、さて・・・?


「スプリガン」について

 先ずは、ゲームの内容に入る前に物語の主役となる「スプリガン」達について軽く触れておきたい。

 ”心ある者たちよ、過去からの伝言を伝えたい。
 この惑星には、多種の異なる文明があった。
 だがそれは間もなく全て滅びてしまう。
 種としての限界、異文明同士の争い、堕落、荒廃……

 君達には未来ある事を願う。
 世界中にあるわれらの文明の断片を遺産として残そう。
 だが、もしも君たちにそれを受け取る資格がなければ、それらをすべて封印してほしい。
 われらと同じ道は決して歩んではならぬ……”

(原作「炎蛇の章」より抜粋、超古代のメッセージ・プレートの記録)

 伝承の中に登場し超常的な力を発揮する「伝説の武器」、当時では考えられないような技術で作成された「オーパーツ」、現実と空想が入り混じったかのような「超科学」・・・これらは、古代に存在した超文明が残した遺産が形を変えて現代に伝わっている物である。
 その多くは現代では所在や用法が失われているものの、現代の科学を超越するような凄まじい力を秘めており、一つ間違えれば災いや争いの引き金となりかねない存在だ。
 それを避け、これら超古代の遺産が悪意ある物の手に渡る前に発掘して収蔵・封印するべく興された組織「アーカム財団」と、これに所属するエージェント「スプリガン」がこの物語の題材である。

 「スプリガン」は強大な力を秘める超古代の遺産を扱うだけあって知識や戦闘力、あるいは身体的特徴などに類まれな能力を持つ者たちで構成され、遺産を利用した装備などのアーカム財団によるバックアップに支えられているものの、それでもなお彼らの任務は過酷を極める物ばかりである。
 遺産を巡っては個人のテロリストに留まらず国家の特殊部隊や兵器開発集団「トライデント」との衝突があり、また遺産それ自体に備わる防衛機能や怪物、怨念との戦闘も発生する。
 時にはそれらでの三つ巴の戦いや遺跡の暴走に巻き込まれる事態も起き、任務を遂行するためには状況に惑わされない強靭な精神力と冷静な判断力が求められるのである。
 また、アーカム財団と言う組織そのものも常に善なる物とは限らない。
 原作の主人公「御神苗優」は古代の遺産「オリハルコン」によって作成された強化服「A・Mスーツ」とナイフ、多彩な銃火器で戦うトップクラスのスプリガンであったが、物語の中ではアーカムの上層部が遺産を利用した兵器開発に熱を上げ始めた事に反発、アーカム自体から疎ましがられることとなってしまう。
 人の手で管理される以上、その手に余る力がバランスを崩し誤った方向へ傾いてしまうのは古代から繰り返されている過ちなのだろう。
 結局、このアーカムの変質は遺産の扱いを誤った事がおのずと自滅を招いて収束、アーカムは組織の再編を経て再び当初の理念通り遺産の番人としての姿を取り戻すに至っている。


 ・・・というのが、「スプリガン」のおおまかな背景だ。

 本作の主人公、「大槻達樹」は原作の物語から何年かの後にスプリガン候補生となった少年である。
 現役の高校生でありファッション感覚でスプリガンにあこがれるなど適性の疑わしい人物であるが、成長力に長け能力の伸びが著しいこととA・Mスーツの素材である「精神感応金属(オリハルコン)」との親和性の高さを評価されてスプリガン候補生に抜擢され、訓練時代の教官であったグラハム・ブルートンを上司として多数のテストミッションに赴いてゆくこととなった。
 やがていくつかの任務を経て月を象った「ある遺産」に触れた時、大槻の前に「謎の少女」が現れて本作の物語が月へと導かれて行くこととなる・・・。


・「大槻達樹」の装備

 本作の主人公「大槻達樹」は、オリハルコンとの相性がいいという設定どおりに様々なA・Mスーツを着こなして任務を遂行するスプリガン(の、候補生)だ。
 本作には「攻撃型」、「防御型」、「速度型」、の3系統にデザインされたA・Mスーツが登場し、それぞれで攻撃力や防御力といった能力が異なるほかアクションも変化するという形で使い分けの面白みを演出している。
 例えば潜入任務の様に断続的に戦闘が起きる任務では奇襲によって戦闘を終えられる攻撃型が、遺跡探索の様に長時間の活動を必要とする任務では持久力のある防御型が、山岳部など足場の悪い任務では機動力のある速度型が、それぞれ適しているという具合だ。
 それぞれの任務はブリーフィングを挟んだ「ステージ」の形で攻略する事となるため、こういった具合に内容に適したスーツを吟味する事で攻略はぐっと楽になる

 ・・・はずなのだ

 本作においてはこれらスーツに経験値とレベルアップの概念があり、かつ(ゲームをクリアするまでは)一度クリアしたステージに戻って鍛え直すという行動が取れないため、スーツを優柔不断に着替えるのはこのレベルアップを遅らせる行為となってしまう。
 かと言って一つのスーツにこだわって使いこむというのもステージへの適性の面で問題があり、しかもスーツのレベルが上がると望むと望まざるとに関わらず攻撃や移動のアクションが変化して使い勝手が変わってしまうという厄介な設計もある。
 スーツの使い分けをしているとスーツの能力が低く、愛着のあるスーツを着続けようとしても叶わない、スーツ関連の設計は少々不合理な物と言わざるを得ないだろう。

 さて、能力やアクションに影響するA・Mスーツも重要な装備だが、実際に行う攻撃の内容を決めるのは「ナイフ・銃火器」だ。
 本作では数種類のナイフと多数の重火器が登場し、それぞれで性能の違いが与えられている。
 特に銃火器については初期装備の拳銃「ベレッタM8000」、射程や装弾数に優れたアサルトライフル「コルトM653(M16A1)」、榴弾を打ち出すグレネードランチャー「EX-M56(実在しない?)」、などなどそれぞれの個性が強く、任務での使い分けに頭をひねる

 ・・・はずなのだ

 かさばるのか何なのか1つのステージで装備できる銃は「1種類のみ」という強烈な制約があり、ゲーム中では結局使いやすいアサルトライフルだけで十分という気がしないでもない。
 また銃に使用する弾丸は「ステージ中で入手(ほぼ個数限定)する『弾薬パック』を消費して補充するのみで、ゲーム全編を通して使用できる弾丸が制限されている」というこれまた強烈な制約が課せられてしまっている。
 繰り返しになるが本作は一度クリアしたステージに戻ってアイテムを集め直す事が出来ないため、銃を使用する際には「後々必要な場面で銃が使えなくなるのではないか」という不安を抱き続けなければならない異常事態になってしまっている。
 状況に応じて銃を使い分けるには持ち歩ける数が少なく、そもそも弾丸の制約から銃を撃つ状況かどうかを見極めることさえ難しい、銃器関連の設計もまた少々不合理な物であると言えるだろう。

 ただ、本作にはこの2つの不合理さに対する救済措置も用意されている。「任務の失敗」である。
 困難なステージに面して死亡した際、潔く「ギブアップ」を選ぶとステージの攻略が最初からやり直しになる代わりにステージ中に得たアイテムや経験値を持ち帰り準備を整える事が出来るのである。
 本作には持ち歩ける回復アイテム「レーション」も存在するため、アイテムや経験値を集めて「ギブアップ」を繰り返す稼ぎによってゲームの難易度を緩和する事が出来るわけである。
 ・・・ただ、こうして「ギブアップ」を選択した回数はステータス画面に表示される数字としてしっかりと記録されてしまうため、気にする人は意地でも攻略しきるよう挑戦したいところである。


・遺跡の探索

 と、キャラクター性能を左右するシステムを2つほど挙げたが、本作ではさらに主人公の大槻達樹そのものにも成長の要素が用意されている。
 具体的にはステージの中に隠された「月の雫」系アイテムを集めて強化ポイントを貯め、伸ばしたいステータスに使用するという流れで、「攻撃力」、「防御力」、「HP」、といった項目から重視する物を成長させてゆく事が出来るのだ。
 このステータスは大槻の地力であるためA・Mスーツを着替えても成長が有効であり、特に「HP」はA・Mスーツでは補えない重要なパラメーターとなっている。
 また「月の雫」を集めるために遺跡を隅々まで探索するというのも「スプリガン」としての活動を意識させるようで、なかなか心憎い設計だろう。

 そう、本作のステージ中には攻略目標には影響しない「わき道」や「隠し部屋」が頻繁に用意されている。
 これを上手く見つけ出す事が出来れば「月の雫」によるパワーアップが図れるほか、先の「レーション」や「弾薬パック」も充実し、時には新たな銃器が獲得できることとなる。
 こうした「探索」が、本作の面白みの一つであると言える

 ・・・はずなのだ

 なんというかかんというか、ここでもまたせっかくの魅力を削ぐような設計が仕込まれてしまっている。
 一つは割り振れるパラメーターの中に有る「集中力」と「精神力」。これらはA・Mスーツを着ている状態で発動できる「ゼロバースト」という特殊能力に関わるパラメーターなのだが、スーツが支給されていない序盤では死にパラメーターである上にそれぞれのパラメーターが効果時間と発動回数を強化する形であるため両方を並行して強化していかないと効果を実感できない。
 時間や回数制限のある「ゼロバースト」とステージ中常時恩恵を受けられる「防御力」や「HP」とでは重要度が雲泥の差で有り、これらのパラメーターは一種の引っ掛けであるような気がしてならない。

 もう一つは、「月の雫」以外に「ステージのクリアタイム」に応じていくらかの強化ポイントが与えられる事だ。
 もちろんこれはステージを早くクリアすればクリアするほど高ポイントが与えられキャラクターをより多く強化できる設計なのだが・・・。
 ステージを隅々まで探す「探索」とステージを手早く攻略する「早解き」が相反する要素なのは言わずもがな
 この仕様の質の悪い所はさらに、「月の雫」がゲーム一周目では絶対に取れないところに隠されているなど「周回」を前提とした設計であるのに対してクリアタイムによるボーナスは「一周目の評価で受け取れる一回分のみ」であるという点、「月の雫」によるボーナスが1ステージ10数点程度であるのに対してクリアタイムによるボーナスは多い時には40数点などと大幅に大きく設定されている点、にもあり、結局ゲーム一周目では探索の楽しみをかなぐり捨てて早解きに腐心するよう誘導しているわけである。
 ステージの構造を理解していない一周目に限って早解きに特別な意味を与えた事、元々アクションが得意な人が挑むであろう早解きにキャラクター育成の重要度を割いた事、早解きにおいては「速度型」以外のA・Mスーツの有効度が極端に落ちる事、とあらゆる点でこの設計は不合理なものであり、設計の意図の理解に苦しむところだろう。

 例によってこの不合理さも「一度ステージを下見してアイテムを回収後あえてギブアップし再挑戦する」という形で解決し探索と早解きを両立できなくもないのだが、回数が記録されるわ2度手間がかかるわでまっとうな攻略法とは言い難いところである。


・キャラクター性

 その他にも、本作には様々な粗さが散見される。
 例えばアクション性の高いゲームである割にキャラクターの基本操作が「バイオ」型のラジコン操作でロックオン機能も無いなど小回りが利かなかったり、銃を撃つ際に照準が現れず視点を調整する事で狙いをつけねばならなかったり、物語の途中で度々登場する「謎の少女」について何の説明も無くホントに「謎の少女」のまま終わったり・・・。
 そしてまた、キャラクターの「表現」については気になる点である。
 動きが少々悪く、原作で御神苗に絶望的な強さを見せた「狂戦士」がジャンプキック連打でハメられてしまうという点、また登場人物が皆フルボイスで会話する中、現役高校生で少々ミーハーなところがあり潜入工作が不得意、比較的活発な印象を与える主人公「大槻達樹」に限って作中一切のセリフが無い無口型主人公という点、と、キャラクターの特徴を描く上で必要なアプローチがことごとく欠けている気がしてならないのである。
 こうしてキャラクター全体が没個性的に描かれてしまった事は、ゲームとしても原作再現としても物足りなさがぬぐえないところである。
 ・・・なお、「物語の途中でゲストとして登場する「御神苗優」がクリア後にプレイアブルキャラクターとなって大槻の代わりにフルボイスでストーリーモードを再演する」という隠し要素が大槻の空気っぷりに拍車をかけている点は蛇足ながら特記しておきたい。


・まとめ

 超人的な運動力で謎に満ちた古代遺跡を探検し、時には敵組織との競争や怪物との対決を繰り広げる、という「スプリガン」というテーマはゲームとして魅力的な題材である。
 が、それを実際にゲーム化する上で何かと不可解なアプローチを行い、一方でキャラクターの描き方が不十分であったなどして、全体的に支離滅裂で内容の希薄な印象を与えてしまう一本。
 遺跡探索ものとしても「スプリガン」のゲーム化としても、あまり期待できる内容とは言い難いところである。


・ワンポイント攻略

 ・以下は各ステージのタイムボーナスの最高評価について。一部無理ゲーのような時間設定なのだが最強育成を行いたい人は参考として欲しい。
 ・ステージ1・・・目標タイムなし、報酬12Pt
 ・ステージ2・・・目標タイム2:00、報酬14Pt
 ・ステージ3・・・目標タイム1:00、報酬10Pt
 ・ステージ4・・・目標タイム5:00、報酬24Pt
 ・ステージ5・・・目標タイムなし、報酬7Pt
 ・ステージ6・・・目標タイム7:00、報酬40Pt
 ・ステージ7・・・目標タイム10:00、報酬23Pt
 ・ステージ8・・・目標タイム10:00、報酬57Pt
 ・ステージ9・・・目標タイム5:00、報酬40Pt
 ・ステージ10・・・目標タイム10:00、報酬23Pt
 ・ステージ11・・・目標タイム10:00、報酬44Pt
 ・ステージ12・・・目標タイム5:00、報酬45Pt
 ・ステージ13・・・目標タイム2:30、報酬31Pt





・関連作品

プロジェクト アームズ本作と同じく皆川亮二氏作の漫画「ARMS」(の、アニメ版)を題材としたアクションゲーム。
ただ、その内容は・・・。
・「キングスフィールド」シリーズ本作を製作したフロム・ソフトウェアの代表作の一つ。
シリーズに登場する「あるアイテム」がアーカム研究所に保管されているらしい・・・?


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