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パネルティアストーリー ケルンの大冒険だいぼうけん


プラットフォームセガサターン
開発翔泳社
発売翔泳社
発売年月日1997年 2月
ジャンルロープレ
プレイ人数1人
セーブデータ1つ63ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
質素 シンプル ファンシー のどか 悪い ボイス豊富





・ゲーム概要

 セガサターン最盛期に発売されたRPG。冒険の舞台となるマップを自ら組み立てる「マップメイキング」を特徴とし、プレイヤーの想像力を問う「ツクール」系の魅力を取り入れた一本。
 マップの作り方は「平地」や「岩場」といったマップチップ「パネル」を並べることで生成されると言う手軽な物で、「ステージ」の形式で進行するゲーム内容と共に「気軽に楽しめる」ことを推しているようだ。
 ほのぼのとしたストーリーや可愛らしいキャラクターもそんな親しみやすさを助けており、日ごろの疲れを忘れて世界作りに没頭できるような内容を期待したいところだが、さて・・・?


・ゲームの流れ

 先ずは、パッケージの裏側にある「ゲームの特徴」を抜粋してみたい。
 パネルティアは様々な地形のパネルによって構成される世界です。いろんな方法でパネルを手に入れて、君の好きな地形のステージを創っていきましょう。各ステージにはボスがいて、倒すとステージクリア。気軽にプレイできます。
 ボスのいる場所へ効率良くいけるようにパネルの種類や置き方を工夫したり、ある法則に基づいたパネルの置き方をすると妖精や宝箱が出現したり…。パネルティアには戦略や謎がいっぱい。パネルの置き方次第で、君だけの冒険物語を創ることができます。

 (パッケージ裏より抜粋)

 ゲームの内容については、ほぼこの文章に集約されているだろうか。
 大部分が空白となっている初期のマップの中でパネルが担う役割は「目的地への道のり」、「モンスターと戦う狩り場」、「特殊な地形を創るための材料」、といったところ。
 パネルは主にモンスターとの戦闘によって入手して行くこととなるため、目的地へ向かってパネルを配置し、配置したパネルの中でモンスターから経験値と資金・パネルを集め、集めたパネルでダンジョンなどを創って強力な装備を手に入れ、十分な力を付けた頃にボスにたどり着いて対決する・・・というのが基本の流れとなる。
 タイトルともなっている通りこのゲーム全体を形作っている「パネル」の内容について、次にもう少し詳しく見て行こう。


・パネル

 冒険を形作って行く「パネル」は全部で6種類。

 障害物が無く敵の能力も特徴が無い「平地」、
 木が生えていて敵の攻撃力が強化される「森」、
 岩が置いてあり敵の防御力が強化される「岩場」、
 大きな岩山があり敵が全体的に強化される「山」、
 連続して配置すると一体化して大きくなり通行を阻む「池」、
 マップのスタート地点である村の機能を強化する「村」、

 また、一度配置したパネルを消去する「パネレスセプタ」というアイテムも有る。

 さて、「連続して配置すると」という特徴があったのは「池」のみ。
 本作は「移動不能のマップで遮って詰んでしまう」状況を警戒したのか、「森」や「山」に並べることで巨大化すると言った要素が無く、またそもそもの内容も「平地」に若干のオブジェを足した程度の物足りない物となってしまっている。
 「パネルを並べてマップを創る」本作においては、変化の乏しい地形が変化なく続いてしまうこの設計は問題だったと言えるだろうか。

 とはいえ、一度配置した地形を撤去する「パネレスセプタ」があるのなら詰んでしまうという問題は回避されるはずである。
 はずなのだが・・・このアイテムの入手性が異常に悪いという点を見るに、本作は一度作ったマップの修正を極力制限したい考えであったようだ。
 ゲーム開始後に訪れる「ステージ1」を具体例として、ついでに本作の金銭事情も見てみよう。
 「パネルティア」の世界に訪れた主人公:ケルンはスターターキットとして5枚のパネルと最低限の装備を受け取った後、村の村長から冒険の準備資金として「200」のお金を渡される。

 早速その足で道具屋に向かってみると、そこには「パネレスセプタ:価格20000」という絶望的な金額が提示されているのである。
 もっともこの準備資金はそれ自体が非常に少額で、初期装備と攻撃力の変わらない「スタッフ」が価格800、初期装備から防御力が1だけ上がった「ローブ」が価格1000、とここにはめまいを覚えるような価格が並んでいる。
 結局この準備資金は最弱のザコ「スライム」4体分の金額でしか無く、本作はまずパネルを配置して「狩り」を行って行くことが重要となっているのである。
 モンスターは資金、経験値、と共に「村」以外のパネルを何枚かドロップするため、こうして戦闘を繰り返す事がまた冒険の範囲を広げることにもつながるのだ。

 それはともあれもう一度村長に話しかけると、今度は「村」のパネルを渡されて村の拡張を促される。
 チュートリアルを兼ねてこれをこなすと、村に「パネル屋」が現れてパネルを購入する事が可能となる。
 ・・・のだが、そこに並んでいるのは「平地:価格5000」、「森:価格6000」、というやはり絶望的な数字
 繰り返すが、こういった「パネル」は種類がランダムとはいえ敵から簡単にドロップする。
 では逆に「売る」ことによって資金源になるのかと言うと、今度は「平地:価格20」、「森:価格30」、という逆方向に絶望的な数字が

 何この銭ゲバ

 一方で、初めて店を訪れた際にはパネレスセプタを5枚無料でプレゼント(=価格100000相当)してくれるサービスがある。使ったら後で料金を請求されるんじゃ・・・
 1枚でスライム400体分の金額が必要で、パネルと違って敵からドロップすることも無いので、この5枚だけが序盤に許されたパネルのリセット枚数と言えるだろうか。
 パネルの配置は、くれぐれも計画的に行われたい。

 なおパネルによって出現するモンスターについてだが、これは地形によってステータスにブーストがかかる以外はステージ全編を通してほぼ同じ物である。
 ステージ1では村の近くでも遠く離れた場所でも、また平地でも岩場でも、特殊地形のダンジョン内とボス以外は「スライム」、「カミソリイタチ」、「くびかりイタチ」、の3種が延々と登場することとなる。
 ・・・パネルの配置のどこに想像力を働かせればいいのか分からなくなってきたので、次はその「ダンジョン」に代表される特殊地形について見て行こう。


・特殊地形

 特殊地形とは、パネルを特定の法則に則って並べることで既存のパネルが変化するシステムだ。
 「特定の法則」というのは、規模のある村からヒントを聞きだして判明する物。
 「村」パネルは敵からのドロップではなくマップのランダムな座標にパネルを配置した時に獲得する形となっており、また先述通り一度置いたパネルの撤去は非常に難しいため、マップを埋め尽くす前にヒントを聞きだせるか、あるいは次のステージへいかに村パネルを温存できるか、が重要だと言えるだろうか。セーブ&ロードでもいいが。

 さて主な特殊地形は「洞窟(ダンジョン)」、「妖精の住処」、「ストーリー上のキーポイント」、「その他秘密のアイテム」、に大別できる。
 「洞窟(ダンジョン)」は特定の地形を他の特定の地形で十字に囲むことで、宝箱の眠る小規模なダンジョンが現れるという物。
 さらに囲んだ地形を斜め部分にも追加することで内容が5段階に拡大し、内部ではレアな装備やドーピングアイテムなどが入手可能となる。
 条件を満たせばマップ内にいくつでも作成する事が出来、装備品などは2つ目以降で大量のパネルへ(Lv*4枚)と変化するため、可能な限り多くの洞窟を作って行く事がこのゲームのマップ作りの基本である。
 ・・・のだ
 洞窟の中身は一度開けた後でもレベルが変化するとリセット(より正確には、変化後のレベルの宝箱を調べるとリセット)されると言う仕様があり、これを利用すると一か所でLv1〜5の宝箱全てを入手できるほか、洞窟の周囲を重ねるように作ることで先の「大量のパネル」が倍々ゲームで手に入ってゆくこととなる。
 さらにはあるステージのあるLvの宝箱は中身が常にパネルレスセプタなので、この方法を用いてパネルとパネルレスセプタが無限増殖できてしまうという仕様ミスに近い裏技も有る。
 ゲームバランスの崩壊を促す問題点だと思うのだが、実はこの方法についてはとあるNPCにヒントを出させておりハナっから真面目にパネルを集めるゲームにする気は無かったのではないかと疑わざるを得ないところである。

 さて「妖精の住処」は、ステージごとに異なる法則で地形を並べると妖精がNPCとして仲間になると言う物。
 攻撃魔法を得意とする妖精「ティラ」、回復魔法を得意とする妖精「ルーチェ」、がおり、戦闘中にランダムに補助を行ってくれる。
 肝心の発動率が低くアテには出来ないものの、序盤のボスならそれだけで倒れる威力の最上位魔法で敵全体を攻撃してくれるティラ、窮地にHPを回復してくれるルーチェ、ともに一人旅においては嬉しい存在だろう。
 行動の発動時にはボイスが付くので、華があると言う点でも余裕を見て仲間にしておきたい。
 ただ一つのマップで仲間になるのはどちらか一人のみで、二か所以上作っても効果は無い。

 「ストーリー上のキーポイント」は、さらにマップを移動するボスキャラクターを封じ込めると言ったパズル要素のある物。
 これを作る余裕を残しておかないと例のパネルレスセプタが何個も必要となってくるので、なるべく優先して作ってしまうと無駄が無いだろうか。
 二か所以上作る事は無いので、邪魔にならない位置に作るのがベターである。

 「その他秘密のアイテム」は条件を満たしても村で情報を聞いていないと手に入らない物で、マップ上の村パネルを多数集めたご褒美と言った位置付けだろうか。
 こちらも一つのマップで一か所ずつしか作る事が出来ない。

 と、いうのが特殊地形のあらましだ。
 特定の法則に沿ってパネルを並べることでその内容が変化するという要素は「ゲームの特徴」で触れられていた通り「パネルをどう並べてゆくか?」という戦略や想像力を刺激する物だったはずなのだが、その実マップ内で並べ方を考える必要があるのは洞窟くらいというのが現実である。
 それもどのステージでも地形の種類以外同じ法則に沿って並べ、どのステージでも同様の配置を繰り返す形となりうるもの。
 「ヒント」無しに特殊地形を探る方法も総当たりくらいしかなく、このゲームの「マップメイキング」はあまりにも想像力を活かせる余地の無い、作業色の強い内容であると言える。


・まとめ

 プレイヤーに冒険の舞台を作らせる「マップメイキング」をゲームの柱としながらも、実際の内容は変化の無い要素を繰り返す作業ばかりで占められている一本。
 「ステージ」制を採用している一方で前のステージに引き返す方法なども無く、好みの世界を作って行くと言う楽しみはほとんど感じられる事が無いだろう。
 単純にRPGとして見てどうか、というと、一応独特なプレイ感があるものの、パネル関係の価格設定や洞窟を利用したパネル稼ぎなどやはりゲームバランスについても粗さが見て取れる。
 細かい点を挙げれば、ゲーム中でのセーブデータが「データ1〜3」という名前のみで管理されていてデータの判別がつかない点、村内では店を一つ出入りするたびにロードを挟む点、ゲーム中で攻撃に関するステータス名がこうげきりょく、力、STRと全く統一されていない点、など各所で遊びづらさが目立つのも難点だ。

 強いて言えばプレイヤー側の工夫でゲームバランスを破壊する事の痛快さや、「ステージ」という明確な区切りのあるRPGに魅力を感じるならばいくらか楽しめると思われるのだが、くれぐれも過度の期待は禁物と心に留められたい。





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