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ASTRO TROOPER VANARK宇宙機動ヴァンアーク


プラットフォームプレイステーション
開発ビットタウン
発売アスミック・エース エンタテイメント
発売年月日1999年 10月
ジャンル3Dシューティング
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック、4ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
混ぜ込み不足 ややセオリー過ぎ? やや粗め 冒険感あり 繰り返しがいあり 意欲作だが・・・





 ※今回のレビューは若干のネタバレを含みます。※


・ゲーム概要

 プレイステーション後期に発売された3Dシューティングゲーム。
 惑星表面や宇宙空間を舞台に繰り広げられる3Dシューティングパートと、宇宙船内の仲間たちと作戦を確認する3Dアドベンチャーパートの2つのゲームパートを取り入れてスペースオペラとしてのプレイ感を強調した一本。
 3Dシューティングパートではその他にも「僚機」や「スクロール方向の変化」といった特徴を意欲的に盛り込んでおり、個性的な内容を期待させるのだがさて・・・?


・スタッフ紹介

 さて、ゲーム内容の前にパッケージをよく見ると、開発に携わったスタッフを紹介している箇所が確認できる。

 開発:ビットタウン(『サイドワインダー』シリーズ)
 シナリオ:柿沼秀樹(OVA『ガルフォース』シリーズ)
 メカニカルデザイン:ダーツ
 メカニカルデザイン協力:神宮司訓之(TV『トライガン』)、那倉政幸(OVA『新・ガルフォース』)
 キャラクターデザイン:きむらひでふみ(TV『宇宙海賊ミトの大冒険』)
 音楽:国本佳宏(映画「緑野原迷宮」)
 CGムービー 監督:佐藤敦紀(映画『ガメラ』シリーズデジタル・エフェクト)
 絵コンテ:樋口真嗣(映画『ガメラ』シリーズ特技監督)
 CG製作:古賀信明(映画『学校の怪談2』デジタル合成)

 ・・・毎度嫌な予感のするパターンなのだが、紹介に割かれたスペースはあまり大きくないので流す程度にしてゲーム内容を見てゆこう。


・ストーリー

 21世紀。資源の枯渇、生態系の破壊、温暖化、人口の増大、そして食糧難・・・地球を取り巻く環境悪化は留まる気配を見せなかった。そして核分裂と核融合の光が、壊滅的な打撃を地球に与えた。もはや地球には住むことが出来ないと悟った人類は、"希望の地"火星に移り住むことを決意する。

 A.D.2200。<火星地球化計画>=テラフォーミングによってほぼ全域が地球化した火星の生態系に、異変が起こり始めた。大気改造ビールスが死に絶え、植物や魚類の突然変異が続発した。その異変の中心は、<ゼロフィールド>と呼ばれる科学センターにあった。

 恐竜よりも巨大なモンスターが動き回る、恐るべき<ゾーン>が出現した。全高120メートルにも達する巨木が立ち並び、モンスターがその間を闊歩する、悪夢のような世界が広がっていった。このまま放っておけば、火星全域が<ゾーン>に飲み込まれるのは時間の問題である。

 火星守備軍<Mars Defence Force(MDF)>は、<ゼロフィールド>にある悪夢の発生源を直接破壊することを決意した。が、<ゼロフィールド>は、弾道爆弾の攻撃も予測し、その全貌を地中深くに隠している。近づこうとすると、武装ステーションから巨大な隕石による報復がなされるのだ!

 <ゼロフィールド>への進入路を発見し、これを叩くという生還不可能とも思える任務に、<MDF>の特殊機動部隊<ヴァンアーク>が任命された。

 (説明書より抜粋)


 人類にとって新たな楽園となるはずだった「火星」をモンスターのはびこる地獄へと作り替えたのは「ゼロフィールド」に勤めていた科学者たちなのか、あるいはその裏にまた彼らを操る何者かの存在があるのか?
 これがストーリーを盛り上げる謎の一つとなっているのだが・・・。


・ゲームの流れ

 本作は3Dシューティングパートを中心としつつ、キャラクターを動かして物語を読み進める3Dアドベンチャーパートを加えてドラマチックさを補完したつくりだ。
 3Dシューティングパートは主にエネミーの配置されたコースを進んで行く「ステージ」の概念を持ち、3Dアドベンチャーパートとの組み合わせを1話、「ACT」としてまとめている。

 ・・・と、ゲームの流れは案外オーソドックスだ。
 特に3Dアドベンチャーパートは会話フラグを消化して行くのみの単調な内容であり、その舞台も実は最初の宇宙船から一歩も外に出ないという小規模な物に留まっている。
 ゲーム中で一度のみ追加装備に関わるミニゲームが発生するのだが、その他に3Dアドベンチャーパートによる物語やステージの分岐は無し。
 3Dシューティングパートについても敵の情報端末を回収するとか味方の戦闘機を援護するとかといったストーリー分岐の要素は無く、2つのゲームパートの組み合わせは演出表現程度に落ち着いているのがなんとも物足りないところである。


・キャラクター

 ・シュン
 主人公。最新鋭高機動宇宙戦闘機<Mk6>を操るエースパイロット。
 プレイヤーは彼となって主人公機「Mk6」を操縦するほか、また3Dアドベンチャーパートでは彼そのものを操作することとなる。

 ・ファル
 パイロットを補助する各種スキャニング能力を備える人口知能ロボット。
 セーブやロードも担当しているが、なぜか関西弁で会話する。

 ・リーン
 17才で最高学府を卒業した天才少女。生命工学の権威。
 ゲーム中では代表的な「僚機」として登場し、敵キャラクターの攻略方法をヒントとして提供する。

 ・モートン
 マッチョな戦士・恐ろしげな風貌とは裏腹に"人間性"を頑なに信じる。
 ゲーム開始後から選べる「僚機」だが、ヒントはイマイチ頼りない。

 ・デュオ
 スーパーモデルのような女戦士。破壊工作のエキスパート。
 ゲーム序盤で仲間になるキャラクターで、ステージ中のルート選択を得意とする。

 ・ランダル
 かつて「撃墜王」と呼ばれた天才パイロットから蘇生されたアンドロイド。
 ゲーム中盤に仲間になるキャラクターで、少々厄介なミニゲームの題材となっている。


 以上が、「ヴァンアーク」の主なメンバーだ。
 ゲーム中では医療スタッフなどの脇役も確認できるのだがまあ置いておいて、男性2人、女性2人、機械2機、年齢や外見についてもバランスが良すぎる面々である。
 「僚機」システムによってそれなりに存在感はあるのだが、個性についてはテンプレートにはまり過ぎている感が否めないか。


・3Dシューティングパート

 さて、ではその「僚機」システムとは何だろうか?
 これは3Dシューティングパートのステージにおいて、仲間の1人をステージ中のパートナーとして連れて行くもの。
 僚機はステージを攻略する上でのヒントを出し、それぞれのヒントはキャラクターによって得意な情報が異なる、顔グラフィックと共に表示される、といった点からキャラクター性を押し出している。
 ・・・ただ、本作中のステージの半分ほどはそもそも僚機が登場せず、一方で登場するステージにおいて「連れて行かない」という選択肢は選べない。
 撃墜されて評価が下がるといった要素こそないものの、攻略のネタばらしというのは人によって余計に感じる要素なのでオン・オフの切り替えが欲しかったところか。

 ほか、シューティングゲームとしての基本アクションである「攻撃」についても見てみたい。
 本作の主人公機「Mk6」は強力な「センターウェポン」と扱いやすい「サイドウェポン」を一種類ずつ装備することが出来、それぞれを使い分けながらステージを攻略して行く。
 「センターウェポン」は敵にカーソルを合わせて「ロックオン」することで使用できる主武装で、威力が高く敵をホーミングする特徴が有る。
 ゲーム中ではミサイルやホーミングレーザーが登場し、威力や弾速、同時ロック数において特徴づけられている。
 「サイドウェポン」はボタンを押し続けることで連射される武器で、小型の敵への対処や弾幕を張ることに重宝する。
 ゲーム中ではレーザーやバルカンが登場するほか、中にはタメ撃ち可能で主砲級の威力を誇る物など豊富な種類が揃えられている。

 これら装備の選択が、本作のシューティングパートに繰り返しの楽しみを与えているだろうか。
 本作には撃破率や機体のダメージからなる評価の概念があり、これによってエンディングに若干の変化が発生するため、装備の試行錯誤はなかなか重要である。
 装備の種類はステージを進めることでほぼ自動的に追加されて行くので、アドベンチャーパート中に挑戦可能な「トレーニング」などでこまめに性能を確認しておきたい。

 そして、そういった準備を整えて挑む「ステージ」についてもちょっとした特徴がある。
 本作のステージは物語の舞台である「火星」の地形をなぞる物と「宇宙空間」で標的を探す物とが用意されており、この2つで自機のスクロールシステムが異なるというシステムが有るのだ。
 「火星」では決められたコースを進みながら自機を上下左右に動かして敵や弾を避けるという奥スクロール形式。
 敵の出現する位置やタイミングが固定なことからステージを通しての撃破率を高める追求性があり、またステージ中のギミックが豊富に用意されている。
 「宇宙空間」では自機の進行方向を上下左右に向け、一定の空間を探索するという自由スクロール形式。
 先に相手を補足して撃破する戦略性があり、また宇宙らしい浮遊感も感じられるだろうか。
 宇宙空間を舞台にしたステージは終盤のわずかな部分であり、基本システムと言うよりはギミックの一種に近い気もするのだが、舞台の変化を操作システムの大胆な変更で表現したあたりはなんともユニークだ。

 と、王道的な部分を押さえつつも随所にユニークさを取り入れた構成だ。
 ・・・ただし、やはりそこに3Dアドベンチャーパートに影響されたシステムはほとんどない。
 あちらもまたシューティングゲームを盛り上げるアクセントとして取り入れた要素の一つだったのかもしれないが、別個に時間を取る割にはこれらの要素と比較すると存在意義の薄い、蛇足要素となっている感が漂うだろうか。


・まとめ

 3Dシューティングに3Dアドベンチャーを取り入れて世界観や物語性を強調した本作。
 とはいえそれぞれの内容は明確に分かれており、例えばシューティングパートで資源や情報を集める、アドベンチャーパートで装備の開発や敵施設の調査を行う、といったシューティングRPG的な期待は肩透かしを食らうこととなる。
 ストーリーやキャラクター面も含め、特に見どころの無い3Dアドベンチャーパートはむしろ3Dシューティングパートの邪魔者となってしまった感があるだろうか。

 一方で、3Dシューティングパートそのものは大きな問題も無く無難に遊べる内容だ。
 装備の組み合わせを変える、高い撃破率を目指す、と、シューティングらしく攻略を突き詰める要素もあり、こちらに期待すればなかなか楽しめる・・・と、思われる。
 物足りない部分もあるのだが、3Dシューティング好きやスペースオペラ好きならばチェックしてみてもいい一本である。





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