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玉繭物語たままゆものがたり2 ほろびのむし


プラットフォームプレイステーション2
開発元気
発売元気
発売年月日2001年 8月
ジャンルRPG
プレイ人数1人〜(対戦可能)
セーブデータ約711KB、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
快適かつ戦略性あり キャラクターが活き活き アニメ調 幻想風土的 手ごたえあり iモード対応機能あり
(現在はサービス終了済み)





・ゲーム概要

 プレイステーション初期に発売された玉繭物語の続編に当たるRPG。
 幻想的な世界観を舞台に「聖魔」と呼ばれるモンスターを集めて攻略する、という基礎部分を押さえつつも、「魔攻陣」という概念を加えてゲームシステムを再構築した一本。
 また精霊の呪いを受けながらもハツラツと冒険する少年カフーや毒舌家の相棒ニコなどキャラクター達も活き活きと描かれており、前作とは大きく趣を変えた内容だと言えるだろうか。
 ともすれば前作のファンにとってはなじみ辛く、新規プレイヤーには手を出し辛い、と取られかねないものだが、さて・・・?


・ストーリー

 森の神エルリムによって生命で満たされた地、パレル。
 「知恵ある獣」たる人間達は森の恵み「繭」と驚異「森のしもべ」のはざまでささやかに暮らしていた。
 人々の暮らしは森のしもべを「聖魔」として従える力を持った「繭使い」と、彼らのパートナーである「聖魔術士」によって守られていた。

 だが、「知恵ある獣」は繰り返し森の神エルリムの怒りに触れ、ある時に「滅びの虫オニブブ」によって森に還る裁きを受けた。
 当時ある村で繭使いとなった青年「レバント」はこれに抗い、森の試練を乗り越えて森のしもべたちを「永劫の回廊」に封印することに成功した。
 今では「滅びの時代」と呼ばれる、遥か昔の物語である。

 時は流れ、やがて永劫の回廊と繋がる「異次元の森」である異変が見られるようになった。
 人間と対になるヤミの知恵ある獣、「カルマ」の出現である。
 「カルマ」は森のしもべたちに同化して知恵を授け、森の外へ出るべく進攻を繰り返した。
 森に害をなす人間を滅ぼし、成り替わろうとするカルマに対し、人間は「魔攻陣」という対抗策を編み出した。
 そして魔攻陣を操る繭使い集団「魔攻衆」を組織し、今日に至るまでカルマや森のしもべとの戦いを繰り返しているのである。

 そんな魔攻衆に憧れ、村を飛び出した一人の少年がいる。
 名前は「カフー」。明るく真っ直ぐな心を持つ少年で、間もなくして魔攻衆としてのライセンス試験を受けることとなった。
 しかし・・・順調に進んだ試験の最後に、カフーの目の前に「妖精の繭」が現れる。
 好奇心から妖精の繭に触れたカフーは妖精の呪いを受けてしまい、人間ながらその身に「カルマ」を宿してしまったのだった。
 このままではやがて身も心も蝕まれカルマに成り果ててしまうと言う。
 これを避けるために「森の試練」へ挑んで行くこととなったカフーは、妖精の繭の中に眠っていた「ニコ」と共に森の中へと冒険に旅立つのであった。


・キャラクター

 ・カフー (CV:坂本千夏)
 伝説の繭使い「レバント」に憧れて村を飛び出した少年。
 繭使いになるための試験の中で誤って「妖精の繭」に触れ、その身をカルマに蝕まれる呪いを受けてしまう。
 人見知りせず誰とでもほがらかに接する性格で、呪いを解く試練の中で様々な人々と物語を重ねて行くこととなる。

 ・ニコ (CV:新谷真弓)
 カフーが触れた「妖精の繭」の中に眠っていた妖精で、図らずも呪いをかけてしまった張本人。
 その後はカフーと行動を共にすることとし、毒舌家ながら冒険を導く相棒となる。

 ・魔攻衆
 「魔攻陣」を駆使してカルマを封印する現代の繭使いたち。
 好みの聖魔によっていくつかの派閥に分かれており、聖魔を象った仮面を身に付けている。

 ・ナム (CV:水樹洵)
 カフーと同様にレバントに憧れ、繭使いを志した少年。
 「火の森」にてカフーと知り合い、実力を示すために火のオーブの入手を競うライバルとなった。
 プライドが高く短気なところがあり、力のために道を踏み外すこともあるが・・・。

 ・ジル (CV:安井邦彦)
 謎多き森の魅力に取りつかれ、研究のために魔攻衆となった考古学者。
 「風の森」にてカフーと知り合い、風のオーブを共に求める協力者となった。
 またその知的で穏やかな性格から人を惹きつける部分が有り、森の中である精霊と友達になったらしい・・・?

 ・キュア (CV:増田ゆき)
 森の中で生まれ育った半聖魔、半人間の少女。
 「水の森」にてカフーと知り合い、「人間になりたい」という願いを叶えるために水のオーブを共に探す友達となったが・・・。
 臆病ではあるが打ち解けた相手には懐っこく接する性格で、カフーに好物のギヌイの丸焼きを勧めるなどする。

 ・スイーツナイツ
 4人の美少女で構成されたアイドル魔攻衆グループ。
 リーダーかつ最年長のココナ (CV:かかずゆみ)、
 クール&ドライな参謀役のシナモン (CV:折笠富美子)、
 武闘派でバトル大好きなショコラ (CV:清水香里)、
 両生類好きの不思議生命体バニラ (CV:杉本沙織)、
 で構成されており魔攻衆の中で絶大な人気を集めている。
 ただしプロデューサーは「最近マンネリ気味だよね」として、「地の森」を舞台にしたカフーとのオーブ争奪戦を企画してしまったとか・・・。

 ・ラー&ムー (CV:小島幸子)
 ケムエル神殿の中で繭使いに仕える使命を持つ双子の巫女。
 かつて光の選ばれし者として神殿を訪れたレバントを助け、それから現在に至るまで同じ姿で聖魔術をこなしていると言うが・・・?

 ・キキナク (CV:納谷六朗)
 かつて知恵ある獣との間に子を成し、「繭使い」の歴史を作り出した知恵の精霊アモスのなれの果て。
 森の神エルリムの怒りを買って追放された後はキキナクを名乗り、やがてレバントと知り合って友人関係となる。
 今作では魔攻衆と専属契約を結ぶ「キキナク商会」のオーナーとして巨万の富を築いており、様々なイベントのプロデュースもこなしているらしい。

 ・レバント (CV:郷田ほづみ)
 かつて光の選ばれし者として森の試練を乗り越え、聖魔を永劫の回廊に封印した伝説の繭使い。
 その際に竜神ケムエルを身に宿して不死となり、永劫の回廊とケムエル神殿を永遠に守る使命を与えられた。
 現在は永劫の回廊から訪れる滅びの蟲カルマに対する繭使い集団「魔攻衆」を指揮する長として、尊敬と信頼を集めている。


・魔攻陣

 さて、ストーリーやキャラクターを紹介する中で何度か登場した「魔攻陣」とは一体何だろうか?
 これは魔攻陣の使用者を中心としてタテ・ヨコ・ナナメの8方に聖魔を配置出来るボードの様な物で、本作の戦闘の要を成すシステムである。

 風○
 ☆水
 地○

 魔攻陣は「4つの面」、「配置された聖魔」、「魔攻陣を操る魔攻衆」、の3つの要素からなる。
 先ずは「4つの面」について。
 魔攻陣の上下左右の4つの面は火、水、地、風、と4つの属性に対応しており、戦闘においてはこのうち敵に向けた面で行動を行うこととなる。
 は主に相手への攻撃を行い、
 は攻撃と弱体化を得意とし、
 は味方の回復が可能な唯一の面で、
 は敵からの攻撃を防ぐ特殊な魔術を持つ。
 プレイヤーは毎ターン魔攻陣を回転させて各属性の面を切り替え、状況に適した行動を繰り出してゆくと言う流れであるわけだ。

 そして具体的にどのような行動を繰り出すかは「配置された聖魔」によって決定される。
 聖魔は自分の属性と、それに隣接した属性の技を1つずつ習得可能であり、対応した面に配置することでそれらの技を繰り出すことが出来るのだ。
 火属性の攻撃技「バーンヒット」を使いたいならば火の面のどこかに配置し、風属性の魔術「アドスラーム」を使いたいならば風の面のどこかに配置する、といった具合だ。
 またこの2つの技を両方とも習得した聖魔は、火と風の面が重なる「かど」に配置することでそれぞれの面の行動に参加することが出来るのである。

 では聖魔はとりあえずかどに配置すればいいのか、というとそうでもない。聖魔には「魔攻陣を操る魔攻衆」を守る役目もあるからだ。
 本作の戦闘は「配置した聖魔が全滅する」か「魔攻衆が一定回数攻撃される」かすると敗北となる。
 そのうえで正面に聖魔を配置すると魔攻衆への直接攻撃を防ぐ盾として機能するため、先ずはここに聖魔を配置することが基本となるわけである。
 逆に言えば、魔攻衆同士の対戦では正面の敵を集中して撃破し、敵魔攻衆への直接攻撃を成功させてゆくことが重要であると言える。


 これらの要素から魔攻陣には面を切り替えて行動を選択するという明快さ、実際にどのような聖魔を配置するかの戦略性、が得られており、とっつきやすく奥が深いシステムとなっている。
 序盤のうちは魔攻陣に配置出来る聖魔も2体と少ないものの、「昇段試験」をクリアするごとに配置可能な聖魔が増えて行くので、ゲームの進行には戦略的な可能性が広がってゆく楽しみが感じられる事だろう。


・聖魔

 では、そんな魔攻陣の上で活躍する「聖魔」達を軽く紹介して行こう。
 本作の聖魔は大まかな「属」と個体ごとの種類に分かれており、幼生、基本種、上位種、最上位種、の進化の系統を持っている。
 前作の「合成」システムは「配合」というシステムに変更され、進化の上限を解放する、技やスキルを習得させる、という重要な要素であることは変わりないものの、外見や能力がブレンドされて行くと言う妙は失われている。
 すなわちポ○モン・・・もとい、育成や収集の楽しみを突き詰めた形と言えるだろうか。

 ・「オグ属」
 鬼型の聖魔が属する分類。前作の「ルチュー」系が該当する。
 攻撃力とタフネスに長ける聖魔が多く、火〜地属性の正面で活躍する。
 またオグ属の魔攻衆は熱血で体育会系の性格の者が多い。

 ・「ク属」
 犬型の聖魔が属する分類。前作の「ドレッグ」系が該当する。
 攻撃力と素早さに長ける聖魔が多く、火〜風属性の広い面で活躍する。
 またク属の魔攻衆は訛りのあるしゃべり方でのんびりとした性格の者が多い。

 ・「ルコ属」
 鳥型の聖魔が属する分類。前作の「ルコ」系が該当する。
 最高クラスの素早さを持ち、風属性の技で状態異常をばら撒くことに長けている。
 またルコ属の魔攻衆は早口でしゃべる癖があり、その内容も少々軽い。

 ・「バグ属」
 虫型の聖魔が属する分類。前作の「イメル」系が該当する。
 素早さとMPに長け、状態異常の効果を持つ風属性の技を得意とする。
 またバグ属の魔攻衆はインテリを気取った嫌味な性格の者が多い。

 ・「ヌメ属」
 両生類型の聖魔が属する分類。前作の「ギヌイ」などが該当する。
 MPに長けそこそこの耐久力もあるため、水属性の技でヒーラーとして活躍する。
 またヌメ属の魔攻衆はマイペースで掴みどころのない性格の者が多い。

 ・「ナ属」
 水生生物型の聖魔が属する分類。見慣れない聖魔が多い。
 水属性の中でも攻撃方面に長けた特徴が有り、MPダメージなど特殊な技を使う。
 またナ属の魔攻衆はオカマ口調で話す特徴が有り、少々近づきがたい。

 ・「リフ属」
 植物型の聖魔が属する分類。前作の「マーイェン」などが該当する。
 地属性の中で魔法関係に長けた特徴が有り、補助関係に活躍する。
 またリフ属の魔攻衆はおごそかな口調で話したがる癖があり、意図が掴みづらい。

 ・「ガラ属」
 甲羅や甲殻を持つ聖魔が属する分類。前作の「シャブ」系や「リグ」などが該当する。
 最高クラスの防御力とHPを持ち、タンカーとして活躍する。
 またガラ属の魔攻衆は武人の様な古風な話し方を特徴とする者が多い。

 ・「ドーラ属」
 竜型の聖魔が属する分類。前作の「ドラン」系が該当する。
 レアリティが高く入手不可能な聖魔もいるが、目立った弱点がなく強力な戦力となる。
 またドーラ属の魔攻衆は自信に満ちた者が多く、威厳のある口調を特徴とする。

 ・「マウ属」
 鼠型の聖魔が属する分類。マスコットキャラクターの様な位置を持つ。
 最初に入手できる聖魔ながらレアリティが高く、攻撃面のパラメーターが優秀。
 またマウ属の魔攻衆は赤ん坊言葉で話す者が多い。

 ・「カルマ」
 本作の物語のカギとなる「滅びの蟲」。前作のボツ聖魔「ラシャババ」に酷似した姿を持つ。
 他の聖魔に取り付いて擬態化などの知恵を与える能力を持ち、人間たちに成り替わろうと進攻を繰り返している。
 魔攻衆に擬態したカルマは人語を話せず、これによって本物の魔攻衆と区別できる。


・森

 さて、これら魔攻陣や聖魔、そして魔攻衆の活躍の場となるのがダンジョンたる「森」だ。
 本作は「火の森」、「風の森」、「水の森」、「地の森」、の4つの森を並行して攻略してゆく流れを持ち、それぞれの森は小さなマップを攻略して次のマップへと進んで行く「階層」の概念を持っている。
 マップは固定で有るのだが、そのプレイ感は「不思議のダンジョン」系に近いだろうか。

 では、それぞれのマップの攻略の流れについてもう少し詳しく見て行きたい。
 マップ上には敵である「森のしもべ」、次のフロアへの階段である「ヒメカズラ」、そして小部屋への入り口である「オニカズラ」、が存在する。
 「ヒメカズラ」はマップに到着した直後には機能していないため、どこかに隠された「カギホウシ」を探すために「森のしもべ」をさばきつつ「オニカズラ」を一つ一つ巡ってゆくのが主な攻略の流れとなる。

 うち「オニカズラ」の中身はカギホウシに留まらず、アイテムが落ちていたり、カルマが潜んでいたり、と様々なサプライズを隠している。
 中にはキャラクターとの戦闘やサブイベントが発生する物もあり、これらミニイベントがプレイヤーの期待感や不安感を絶えずくすぐってくれる。
 意図しない会話イベントが続いて攻略のテンポを削ぐ、という難点もあるものの、食傷感を和らげ探索の楽しみを支えるシステムであると言えるだろうか。


・フィギュア

 また、そうして森の奥深くまで探索の足をのばしひとまず物語の結末を迎えた後も、本作の内容は終わらない。
 新たに開放される階層、新たに登場するキャラクター、最強の魔攻衆を目指す大会「グランドスラム」、と、ゲームクリア後にも楽しめる要素が様々に用意されているのだ。
 中でも「フィギュア」については、ゲームクリア後にようやく登場する新システムとなる。
 これは登場するメインキャラクターのモデルを自由に眺めることが出来るというシステムで、ボスキャラクターのドロップや対戦の景品として入手してゆくコレクション要素となっている。
 キャラクターによってはポーズ別に複数のバリエーションを持っており、その収集には一筋縄ではいかない難易度が感じられる事だろう。


・まとめ

 前作との繋がりを持ちつつも、シナリオ面、システム面ともにほぼ別物と呼べる内容となった本作。
 前作と比べると人々の暮らしや森に包まれた神聖さなどの世界観が薄れ、最大の特徴であった合成を失った反面、活き活きとしたキャラクターたちによるにぎわいや軽快かつ奥の深い魔攻陣システムなどを得ており、飽きる間のないゲームテンポを感じさせてくれる。
 一方で聖魔の育成やフィギュアの収集、対戦向け魔攻陣の構築など長く遊び込める要素も用意されており、ライトからヘビーまで広く楽しめる内容だと言えるだろうか。
 前作からのプレイヤーには世界観を共有する新作のRPGとして、新規プレイヤーには親しみやすく末永く遊べる単独作として、オススメしたい一本である。


・ワンポイント攻略

 ・オニカズラの中で出会うキャラクターは、繰り返し話しかけることで会話パターンが変化する。
 2回目、3回目に話しかけた時にアイテムなどをくれることもあるので、期待するならばしつこく話しかけてみよう。





・関連作品

玉繭物語前作。若き繭使いレバントが森の試練を乗り越えて行く物語で、伝承的な世界観や聖魔の「合成」システムが特徴的であった。
本作とは良くも悪くも雰囲気が大きく異なる。


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