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LUNATIC DAWNルナティックドーン ODYSSEYオデッセイ


プラットフォームプレイステーション
開発アートディンク
発売アートディンク
発売年月日1999年 12月
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ7ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
自由度高し プレイヤー次第 顔画像以外は粗い 民族音楽的 粗い 悪人プレイも可能





・ゲーム概要

 アートディンクのフリーシナリオRPG「ルナティックドーン」シリーズをプレイステーション向けにリリースした一本。
 精霊やモンスターの息づくファンタジー世界の中で一人の冒険者となり、己の思うままの行動を楽しむことが出来る・・・というシリーズの魅力をそのままに、戦闘システムの変更や世界観のコンパクト化といった調整が施された家庭用ゲームらしい内容である。
 行き着く先は邪悪を撃ち滅ぼす勇者かはたまた欲望の限りを尽くす悪党か。それが自分だけの冒険の旅オデッセイ


・物語の背景

 本作の舞台となるのは精霊の加護を受け、モンスターに脅かされる幻想の大陸「アクエルド」。
 プレイヤーはここで育てられた15歳の若者として、明日から冒険の旅に発つことを決めている。

 ・・・という基本設定に加え、本作の主人公にはちょっとしたバックボーンが加えられている。
 主人公はある冒険者の子供であること。その冒険者は宿屋に生まれたばかりの主人公を預けたまま行方知れずとなったこと。主人公はそのまま宿屋で育てられ、村の子供たちと共に成長していったこと。そして、顔も知らぬ父と同じ冒険者となる決意を固めたこと・・・。
 いわば「父の行方を捜す」という漠然とした目的があると言えるだろうか。
 父の行方を捜して大陸中を旅し、様々な人から手掛かりを集めようとすれば、自然と壮大な冒険の旅を行うこととなる。システムに則したこのストーリーは、シンプルなようでいて実に心憎い。


・冒険の流れ

 さて、ではいざ冒険の旅を行うに当たって何をすれば良いのだろうか?
 人によりけりだとは思うが、先ずは「お金の管理」、次に「移動手段の確認」、「戦闘への対応」、「装備と鍛錬」、そして「人々との交流」、の順に見て行くとしよう。

 では「お金の管理」について。
 お金は旅の道具を購入したり町の施設を利用したりするのに必要となり、アイテムを売却するほか依頼を達成した時の報酬などとして手に入る。
 何にせよこれが無いと始まらないので、冒険初心者は「依頼」を受けて資金を貯めるのが先決だ。
 「依頼」とは町の住人から冒険者に当てた頼み事のことで、モンスター退治や旅人の護衛といった内容をこなして報酬を得ることが出来るもの。
 とはいえ依頼の種類はピンキリであり、初心者用としては報酬が低いがリスクも低い配達やお使いといったところが適当だろうか。
 無理に難易度の高い依頼を受けても期限内に達成できなければ罰金や指名手配というペナルティが課せられ、また最悪死亡する危険も有るのだから。

 そのうえで、期限内に依頼を達成するためには「移動手段の確認」も欠かせない。
 アイテムの配達にしろお使いにしろ離れた街を往復してこなければならないので、目的地での滞在時間よりむしろ移動時間の方が長くかかる物なのである。
 大陸における移動手段は主に無料の「徒歩」、有料の「馬」、長距離用の「船」、の3つ。
 交通費を節約できるが時間のかかる徒歩と、速やかに移動できるが交通費のかかる馬とを報酬や期限と相談して選択することとなるだろうか。

 ただしそのいずれにおいても、野盗との「戦闘への対応」を忘れてはならない。
 戦闘は移動時に野盗に襲われたり、ダンジョン内でモンスターと接触することで発生する。
 システムとしては素早さによって行動ゲージを溜め行動順や手数を決定する方式で、攻撃や魔法によって相手を全滅させれば勝利というもの。
 また逃走に成功しても戦闘を切り抜けられるほか、相手が人間の場合は「交渉」が発生することもある。
 「交渉」というのは、早い話が金か物を差し出せば命だけは見逃してやる、と持ちかけるものだ。
 駆けだしの主人公から見れば勝ち目のない相手というのも多いので、時には相手の要求を飲むのも勇気と言ったところだろうか。

 そして生き延びさえすれば、「装備と鍛錬」によって強くなるチャンスがある。
 装備は武器、盾、防具、アクセサリ、の4つを身に付けられる物で、店で買うほかにダンジョンで拾ったり返り討ちにした野盗から奪ったりといった形で入手できる。
 攻撃力や防御力などを左右し、また武器によっては特殊な効果が付くことも有るので良く吟味して選択したい。
 また主人公自身は町の施設である「訓練所」で鍛えられ、「教会」で魔法を覚えることが出来る。
 主人公の能力は「訓練所」に入門して訓練を積まなければ上がらないので、これについては要注意である。
 また精霊に祈りをささげることで習得できる「魔法」は戦闘のみならず旅そのものを強力にサポートしてくれる。
 装備・訓練・魔法のいずれにしてもそれなりのお金を必要とするので、依頼をこなして資金を貯め、貯めた資金で戦力を高め、高めた戦力で依頼をこなす・・・という好循環を維持しつつ、冒険の足を遠くへ伸ばしてゆくのが大まかな流れといったところだろうか。


・NPCたち

 そして、同じくアクエルド大陸に生きる「人々との交流」が冒険の物語を豊かな物としてくれる。
 本作において、人々と触れる機会は多い。
 依頼の関係者として契約したり、町の情報源として会話したり、戦闘の相手として対峙したり、鍛錬における競争相手として競ったり、と様々な形で接触する彼らは、いずれもが主人公と同様のパラメーターを持つ登場人物なのである。
 すなわち名前や顔グラフィックはもちろん、装備や攻撃力といった戦闘関連の情報、筋力や知性といったパラメータ、各精霊への信仰心に、年齢や善悪の価値観といったものが設定されているのである。
 これらのステータスは会話できる相手ならば任意に確認することが出来、ぶらぶらと観察しているだけでもなかなかの楽しみを感じることが出来るだろう。

 多少の脱線になるが、手元のデータから数人をピックアップしてみると・・・。
 ・15歳にして老け顔の「セクハラ大王カロン」
 ・ダンディーなひげを生やしながらも筋力が「8」しかない「ひ弱な坊やアリストテレス」
 ・44歳にして総白髪、悪人度が最高クラスの「サディストのチョーサー」
 ・27歳の金髪美女、「どんくさいクサンチッペ
 ・少女風の外見で精神の値が「2」しかない「軟弱者のクララ
 などなど、なんとも飽きない。

 そして、こういった冒険者のうち酒場にいる者は「仲間に誘う」ことが出来る。
 会話イベントがほとんどなく物足りない面もあるが、1人より2人、3人での冒険のほうがより心強く、思い出深い旅となるはずだ。
 また、こうして苦楽を共にした異性は別荘を購入することで「プロポーズ」出来、新居で帰りを待つ人とすることも出来る。
 残念ながら子供が誕生してもゲームの引き継ぎなどは出来無いのだが、好みの異性を探す旅というのも本作の一つの遊び方であるわけである。

 また、故郷の村で待つ幼なじみと、冒険の途中で出会う世界一の美女・美男子は仲間にこそならないものの結婚に結びつく専用のイベントが用意されている。
 王道的なRPGを意識した要素として、こちらはこちらで物語の見せ場を形作っていると言えるだろうか。


・悪事の誘い

 と、真面目に冒険しているだけでも十分な自由度が感じられるのだが。
 本作にはもう一つの魅力として数々の「悪事」が用意されている。
 例えば店の高額商品を万引きすることが出来るし、他の冒険者から装備を盗むことも出来る。盗み損ねたとしても、そのまま戦闘に持ち込んで奪ってしまってもいい。
 こうして悪事を重ねるとさらに「悪の館」という闇ギルドに誘われることも有り、ここでは密輸や誘拐といった悪の依頼を受けることが出来る。
 当然、このような行動を繰り返せば指名手配されて追われる身となるのだが、これを切り抜けて犯罪行脚を愉しむのもまた本作の自由であるわけだ。

 ・・・ちなみに。
 本作の世界観では重婚はそれほど悪事でもないらしく、その気になればあらゆる町に別荘と伴侶を持ち、幼なじみと世界一も逃がさないという無節操なプレイも可能である。
 それなんてギャルゲ
 もっとも本作の顔グラフィックはリアル志向で彫りが深く、女性にしろ男性にしろ年齢の高めな物が中心となっているので、後で振り返ってみると偉人名鑑みたいなことになっていると思われるのだが。


・まとめ

 PC用のソフトとして開発された自由度の高いRPGを、家庭用ゲームとしてプレイステーションにリリースした本作。
 大まかに用意されたあらすじや、やや小規模に整えられた世界観など手軽さや親しみやすさを目指した調整が施されており自由度に対しての遊びやすさが守られていると言える。
 反面キャラクターエディットのパターンの少なさ、ゲームバランスのランダム性の強さ、町ごとの特色の乏しさ、と少々簡素すぎて物足りない部分も有るのだが、それがまた人々との出会いを強調している・・・と見れなくもないだろうか。
 気ままに冒険を楽しみたい人、オンラインゲームの様な雰囲気を試してみたい人、マンウォッチングに興味のある人、などは手軽に手に取ってみて欲しい一本である。


・ワンポイント攻略

 ・ゲーム開始直後に受けられるチュートリアル。省略すると装備やイベントなどで様々なデメリットを受けるので必ず受けておこう。
 ・エンディングは4つ?
 国王:善人となって順調に依頼を消化していると国王からあるモンスターの討伐依頼が発生、これを達成・報告すると選択肢が出るので了承する。
 闇の帝王:悪人となって悪の依頼を消化していると闇ギルドのボスとの会話が発生、この際の選択によって戦闘が発生するので撃退する。
 世界崩壊:とあるイベントで解放される精霊の世界で、4精霊全てを倒してしまうと発生。フラグ立てが難しく、序盤の行動や信仰心次第で達成できなくなる。
 寿命:以上のいずれの条件も満たすことなく一定の年齢に達すると、フィールドマップの移動時に発生。仲間の有無で微妙に内容が変わり、子供がいても引き継ぎなどは発生しない。





・関連作品

・「ルナティックドーン」シリーズPCソフトとして発売されたRPGシリーズ。
ファンタジー世界で思うままに行動する、という自由度の高い内容は初代から既に形作られている。
・ルナティックドーン IIIPC版「III」をPS向けにリメイクした一本。
オンラインゲームとしての内容を「リンクゲート」やアクションRPG調の操作で再現しており、元来の自由度も有ってMMOさながらの雰囲気が味わえる。
ルナティックドーン テンペスト文字通りシリーズを終わらせるテンペストとなった一本。
その内容はSIMPLEシリーズかと見まごうほどの・・・。


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