サイトトップ/ゲームレビュー/注文しようぜ!俺たちの世界


注文ちゅうもんしようぜ!おれたちの世界せかい


プラットフォームプレイステーションポータブル
開発グローバルエース
発売グローバルエース
発売年月日2008年 11月
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1ファイル320KB


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
自由度あり おつかいのみ 質素 王道ファンタジー的 ぬるめ キャラクターデザイン:
コザキユースケ氏





・ゲーム概要

 同社のダンジョン作成アクションRPG「クロニクル オブ ダンジョンメーカー」および「2」の流れをくみつつ、よりRPG寄りの内容としたダンジョン作成RPG。
 その最大の特徴はダンジョンの階層や敵キャラクターを「注文」して冒険を作成する「アドベンチャーサービス」にあり、好きなダンジョンを楽しめる自由度と複雑な設定を必要としない手軽さとを表現している。
 またキャラクターデザイナーとして「押忍!闘え!応援団」などを手掛けたコザキユースケ氏を迎えており、「お金を稼ぐのが大好きな正義漢」という主人公像によって明るく、親しみやすい物語が描かれるのも魅力の一つだろうか。
 特徴的ながらも自由度と親しみやすさに富んだ内容は様々なプレイヤーの冒険心をくすぐりそうなものだが、さてその内容は・・・?

 また、本作は「Playstation@Store」にて無料体験版が配布された。
 システムに触れ、世界の広がりを感じられるゲーム序盤がセーブ不能ながらにプレイ出来、ゲーム本編への期待を生むに足る一本であったと言える。
 ・・・言いかえれば、実に見事な釣り針であった。


・アドベンチャーサービス

 システム・シナリオ両面において本作の目玉となっているのはやはり「アドベンチャーサービス」だろう。
 これは「客の注文に合わせて離れた土地と魔物を召喚し冒険の舞台を作成する」という施設で、ゲームはこのアドベンチャーサービスに様々なモンスターを呼び寄せて市民からの「クエスト」を達成してゆく、という流れを基としている。
 さてアドベンチャーの注文方法については、4つの項目を選択するというもの。
 フロア数を決定し、各フロアの地形を選択、召喚するモンスターを決めて配置される宝箱の数を選べば、注文に応じたダンジョンが生成されるという仕組みだ。
 またゲームが進行するとこれに「地下迷宮」が加わって倍のボリュームになったり、イベントが発生するクーポン券が使えるようになったりする。
 これらの注文は最下級の物を除いて「有料」であるが、ダンジョン内のお宝の売却や市民からの「クエスト」を消化することによってそれ以上の報酬を狙うことができる。これが主人公イカロス・マルコニーニの冒険の動機である
 例えば、ゲーム開始直後には「緑虫の羽」、「炎虫の羽」を入手するというクエストがある。
 本来であれば街の外へ出かけ、数日かけてモンスターの出る地域を巡り、アイテムを入手して帰還してくる、という冒険を必要とするのだろうが、イカロス・マルコニーニはこれをアドベンチャーサービスの中だけで完結することを思いついたのである。
 つまり「草原」に虫を注文して「グリーンバグ」を、「荒野」に虫を注文して「フレイムバグ」を、といった具合に獲物の方を呼びだそうというわけだ。
 これに応用を利かせ、いかに少ない元手で多くのクエストを消化し利益を上げていくか?が本作の醍醐味であると言えるだろう。

 とはいえストーリー自体にお金はあまり関係なく、ストーリーの進行に必要なクエストでは「特定の土地」のモンスターを討伐することが目的となっている。
 例えば「荒野を越えた森に潜む獣」といった条件ならば、フロア1を荒野、フロア2を森林にし獣を注文する、といった具合に条件と似せたアドベンチャーを注文する必要があるわけだ。
 難易度の定まった固定ダンジョンに挑み強力なボスキャラクターと対決する、という要素としてゲーム内容にメリハリを与えており、なかなかに心憎い。
 これでマップの作成に推理的な要素があれば・・・と思うのだが、後述するある人物のせいでストーリー自体は作業色の強い有様となっているのが悔やまれるところである。


・ダンジョンと戦闘

 さて冒険の舞台となるダンジョンは、地上が正方形の箱庭状、地下迷宮がランダム生成ダンジョンといった形式となっている。
 率直なところ中途半端に広いマップを走り回って宝箱やイベントを探す地上部分は大して面白くないのだが、まぁこれは本作の「戦闘」を邪魔しないための作りなのだと思われる。
 本作はランダムエンカウント制を採用しており、マップを走り回っていると不意に戦闘が発生。移動用のマップがそのまま戦闘用のマップとなり、障害物などを利用するタクティクス調の戦闘が繰り広げられることとなる。
 タクティクスとしてのシステムは、マップは正方形のマス6x6、行動順は素早さによる、行動量はAP制、ミスなしクリティカルあり、といったところに、
 攻撃範囲に入った敵を攻撃する「待ち伏せ」、
 「魔結晶」による魔法攻撃、
 を加えたもの。

 「待ち伏せ」は武器を構えた状態でターンを送り、相手が攻撃範囲に入ったら即座に攻撃を繰り出してダメージを与えつつ相手の行動力(AP)を奪うというもの。
 単純に正面から近づいてきた敵を撃退できるうえ、弓矢などで瀕死の仲間を援護するといった応用も利くユニークなコマンドである。
 反面範囲外からの接近や遠距離攻撃には弱く、また敵に使われると厄介でもある。

 そんな敵の待ち伏せに対しては「魔結晶」による魔法攻撃が有効だ。
 本作における「魔法」とは様々な力を備えた「魔片」を組み合わせた「魔結晶」の力を引き出す物となっており、装備している魔結晶の数だけ使用できるという魔法回数制に似た仕様となっている。
 この「魔結晶」の作成もまた、本作の自由度を形作る要素の一つだろうか。
 例えば氷、光、地、刃、という4つの魔片を持っていたとする。
 プレイヤーはここから氷+光の「治療(状態異常回復)」と地+刃の「大地の針(地属性ダメージ)」でバランス良く進んでもいいし、氷+地の「氷のつぶて(氷属性ダメージ)」と刃+光の「光の矢(光属性ダメージ)」で攻撃重視に進んでもいい。
 入手した魔片の種類や数に比例して「どういった組み合わが可能なのか?」や「どの組み合わせで戦うか?」に頭を悩ませて行くこととなり、自分だけの戦法が生まれて行くわけである。
 MP制でないので、回復用のMPをケチる必要が無いというのもしまり屋には嬉しいところだろうか。


・キャラクター

 では、そんな冒険を繰り広げるキャラクターと、それをサポートする仲間たちを見て行こう。

 ・イカロス・マルコニーニ
 お金儲け大好きな16歳。定職に就かず家でゴロゴロしていたが、王宮からの「クエスト」に関するおふれを機にアドベンチャーサービスで一儲けすることを思いたち、勢いで戦士になる。
 家族は行商人でほとんど家にいない父と、家事全般を担当する強気な妹の二人。そんな環境のためか軽口が多く短絡的なところもあるが、道理を通す意志を持つ正義漢である。
 武器は片手剣や両手剣。戦闘では魔法もそこそこいける勇者タイプ。
 なお、本人は「イカ丸」というニックネームを愛用しておりゲーム中はもっぱらこの名前で呼ばれている。
 ああ、お金大好き少年ってそういう・・・

 ・いずみ・グラスホッパー
 アドベンチャーサービスを利用しに訪れた自称魔法使いの謎多き少女。16歳
 新サービスの「ヒロインチケット」によってイカ丸と引き合わされ、なし崩し的にPTを組むこととなる。
 魔法使いらしく杖を使うほか、弓による遠距離攻撃も可能。もちろん魔法の威力はPT一で、古代文字の解読が可能。

 ・ガストン・ギュール
 山できこりとしての生活を送っていたが、向学心に目覚めて街に降りてきた30歳。
 とはいえ入学できる学校が無く、やむなく戦士として生活するうちにイカ丸達と出会う。
 戦士として最高の攻撃力・防御力を持つ反面、速度や賢さにはやや難あり。

 ・ピックロック
 本名不明の女盗賊。20歳。
 最後にPTに加わるメンバーであり、片手剣と投擲武器を使い分けるトリッキーな盗賊タイプ。宝箱のワナを確実に解除する特技を持つ。

 ・妹
 イカ丸の妹。本名不明。
 両親が不在のイカ丸家の家事をほとんど一人でこなしており、マイペースな兄に対しては基本的に厳しく当たっている。
 ゲーム中では、しかめっ顔以外のグラフィックが登場しない不遇な面も。

 ・親父
 イカ丸の父。本名不明。
 旅の行商人をしておりほとんど家を開けているが、その商いは決して好調では無いようだ。

 ・オーナー
 アドベンチャーサービスのオーナー。
 モンスターを召喚して訓練場とするアドベンチャーサービスのアイディアに自信を持っていたが、それをさらに発展させたイカ丸のアイディアにうなりサービスの拡張を約束した。

 ・役人
 クエストの受注と報告を担当する役人。
 イメージだけで冒険者になろうという若者に対して苦言を呈するが、一応イカ丸の活躍については認めているようだ。

 ・受付嬢
 アドベンチャーサービスの受付嬢。
 営業スマイルを絶やさないベテランながら、その発言は少々ズレている部分も。

 ・ウェポンサービス係員略してWS
 「安くてスゴイ」を売り文句とするハツラツとした青年。
 武器に対する知識はさすがにプロフェッショナルだが、販売にはあまり活かされていない。

 ・アーマーサービス略してAMS
 少々やさぐれ気味な防具屋の青年。
 自分に正直で愛想が悪いが、かわいい女の子(いずみ)には態度が豹変する。

 ・マジックサービス係員略してMS
 魔片を販売する妖艶な女性。
 イカ丸に対して強い関心を持っており、事あるごとに「男の魔片と女の魔片の組み合わせ」を勧めてくる。CERO表示が心配である。

 ・アイテムサービス係員略してIS
 消費アイテムを販売するほがらかな女性。
 手のかかる息子が居るらしく、イカ丸と重ねて長話を始める悪い癖がある。

 ・魔王ディシプリン
 アドベンチャーサービスを快く思わないモンスターの首領。
 物語の途中までショッカー並みの妨害作戦を繰り返していたが・・・?

 ・博物学者モーズリー
 武器やモンスターなどあらゆることに知識を持つ老学者。
 ・・・にして、本作のストーリーを微塵に粉砕した危険人物
 というのも、本作のストーリーにおいて「特定のモンスター」を呼び込みたい場合には地形のヒントをモーズリー氏からもらうことになるのだが、よりによってフロア1の地形はこれ、モンスターはこれ・・・と、ヒントどころかいきなり答えをネタばらししてしまうのである。
 かといって闇雲に注文しようとしてもノーヒントからではどうしようもないことが多く、ストーリーの進行上ほとんど避けては通れない状態となっている。

 すなわち「イベント発生→モーズリー氏に必要なダンジョンを聞く→ダンジョンを作り、攻略する→新たなイベント発生→・・・」という流れを淡々と繰り返すお使いゲーとなってしまっているわけである。
 せっかくの自由度を試行錯誤の楽しみと切り離してしまっているあたり、モーズリー氏のヒントはもう少し自然な形に出来なかったのか、また正解となるダンジョンにある程度の誤差は与えられなかったのか、悔やまれてならない。


・装備について

 また、主人公:イカ丸の「お金大好き」と言う点があまり活かされていない点も残念だろうか。
 というのも、ゲーム中の強力な装備は大抵ダンジョン中にて現物で手に入ってしまうため、溜めこんだお金の使い道がほとんど無いのである。
 一応、「カジノ」のミニゲームがあるほか、一定額以上の金額を溜めると隠しアイテムが購入可能になる、という要素はあるものの・・・。
 いずれも中心とするには厳しいおまけ要素であり、使い道も無く余りだした辺りでゲームへの熱は冷めて行くのではないだろうか・・・。


・まとめ

 ダンジョンを自作するアクションRPG「クロニクル オブ ダンジョンメーカー」をよりとっつきやすい内容に調整したであろう本作。
 実際面倒な部分を取り払いつつ自由度を残した内容は遊びやすいものの、ストーリーや強力な装備について試行錯誤する部分が薄く、早々に底が見えてしまうのが残念なところである。
 序盤のうちは様々な要素の開放に伴って組み合わせのパターンが増え心を躍らせるだけに、中盤以降の食傷感は一層強く感じられるだろう。

 それでも1ダンジョンあたりの時間が短い事、戦闘には「魔結晶」など工夫の余地あること、などから、余暇時間に少しずつ遊ぶゲームとしての魅力はあるか。
 各アーカイブスやモンハン2G、PSPo2、DFF、と強すぎる対抗馬の存在が厄介ではあるが、ダンジョンRPGにこだわるのならば一考の余地あり・・・かもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・各種チケットは1枚しかストックできない。積極的に使って行こう。
 ・ダンジョン中で出会う憎いヤツ、スライギー。クリア前に彼のイベントを完全消化してしまうとゲーム中最悪のイベントを見ることとなるので、イベント消化前のバックアップの作成をオススメする。
 ・ちなみに本作には酷いバグとしてロード後の一枚絵(本来は自宅)が正確に読み込まれないというものがある。
 最後に表示されていた背景が表示されてしまい、例えばワールドマップで兄を起こす妹、その場で眠りについてしまう兄、というシュール極まる光景が繰り広げられることとなってしまう。
 実害は無い・・・と思いたいが、ここまで再現率の高いバグはそうそう見ないだろう・・・。
 ・アイテムのコレクション要素を持つゲームだが、本作は倉庫の容量や機能が貧弱。こまめに整理することを心がけよう。





・関連作品

・「クロニクル オブ ダンジョンメーカー」シリーズ本作の源流。マップチップ単位でダンジョンを作成し、冒険するという内容。
ちなみに「七魂」は無料体験版あり。
・己のダンジョンクロニクル オブ ダンジョンメーカーに遅れて登場した「ダンジョン育成RPG」。


サイトトップ/ゲームレビュー/注文しようぜ!俺たちの世界