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FOXJUNCTIONフォックスジャンクション


プラットフォームプレイステーション
開発トリップス
発売トリップス
発売年月日1998年 4月
ジャンルアクションロールプレイングゲーム
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
工夫あり 単純 やや粗い 個性豊か 単調 声優陣が豪華





※※今回のレビューは多めのネタバレを含みます※※


・ゲーム概要

 プレイステーション中期に株式会社トリップスから発売された最初で最後の一本、ダンジョン探索系アクションRPG。
 「新しいけれど古い、古いけれど新しい」をテーマに、オルゴールや歯車などアンティークなモチーフを用いて暖かで懐かしい雰囲気を演出している。
 メカニックデザイナーの沙倉拓実氏によるキャラクターデザインや、池田秀一氏、茶風林氏、山口由里子女史、といった豪華声優陣も大きな魅力となっている本作だが、さてその内容は・・・?

 なお説明書に掲載された「ライナーノーツ(プランナー)」によると、タイトルの「フォックス」とはお気に入りの小説「ネットワーク・フォックス・ハンティング(一条理希氏)」から引用してきた物でゲーム内容とは微塵も関係ないとのこと。
 ダメだこいつ、早くなんとかしないとなどと思いつつ、先ずはストーリーから内容を見て行くことにしよう。


・プロローグ

 旧都市の開放を記念して式典が開かれることとなったこの街は、朝からお祭り騒ぎだった。なぜなら今回の式典には、トップスターの歌姫リィリィと人気作曲家のシルカ、そして都市解放の功労者である名人ハンターらが招かれていたからである。
 事件は突然に訪れた。
 式典のクライマックスで、シルカとリィリィが解放された旧都市へ初めての市民として足を踏み入れたと同時に、大きな地鳴りと共に、内部の空間が暴走し、彼女らを何処かへ飲み込んでしまったのだ・・・。
 突然のアクシデントに混乱する式典執行部に救出を申し込まれたのは、数々の技術と名声をほしいままにしている名人ハンター「J.B.ランドシーカー」と、「ケイジ」と名乗る14才の少年の2人であった・・・。

(説明書から抜粋)

 「旧都市」、「ハンター」、「空間の暴走」、とよくわからない単語が並んでいるが、ゼンマイ仕掛けの超古代都市を発掘・調査して居住可能にしたと思ったら芸能人が入った途端に防衛システム再起動し拉致されてしまったので専門家が救出に向かうことになった、というところか。
 ゲームはほぼダンジョン内のみで進行し、キャラクターの会話も少ないことからそういった世界観設定が不明瞭であるあたり少々もったいない。


・キャラクター

 ・ケイジ (CV:宮崎一成)
 主人公。凄腕のハンターとして知られた亡き父を目標とする若きハンター。
 幼なじみのティズに誘われしぶしぶ参加した式典で事故に遭遇、父の形見である旧型ギアが事件解決に有効であると知りJ.B.ランドシーカーへ協力を申し出る。

 ・J.B.ランドシーカー (CV:池田秀一)
 かつてケイジの父と腕を競い合った凄腕のハンター。
 今回の式典にはゲストとして参加していたが、通常のギアを無効化する空間に対し自身の旧型ギアが有効であるとして事件解決に名乗りを上げる。
 ケイジとは別行動を取って旧都市を探索しているが、各地に「情報ドラム」を残しアドバイザーとして協力する。

 ・リィリィ (CV:岩男潤子)
 ヒロイン。愛くるしい声と少し小生意気なルックスが人気のトップアイドル。
 作曲家のシルカとは強い絆で結ばれており、今回の式典にも二人で参加し同時に事件に巻き込まれてしまった。

 ・シルカ (CV:山口由里子)
 ヒロイン。リィリィとのコンビで知られる人気作曲家。
 リィリィについては我が子の様に可愛がっており、今回の事件について責任を感じているようだ。

 ・ティズ (CV:西村ちなみ)
 ケイジの幼なじみである少女。
 ケイジを式典に誘い、今回の事件に関係するきっかけを作った。

 ・司会者 (CV:茶風林)
 冒頭で登場する式典の司会者。

 ・スタッフ (CV:荘口彰久)
 冒頭で登場する式典のスタッフ。

 ・ナレーション (CV:渡辺篤史)
 オープニングの語り部。


・ゲームの流れ

 さて、そういった内容のムービーを見終えてゲーム本編を開始すると・・・何やら砂漠の様な所に立つ主人公が見える。周囲にはアイテムが落ちており、移動する敵の姿も見える。
 そう、プレイヤーは満足な説明も無くいきなりダンジョンのど真ん中に放り込まれているのだ

 説明書を読んでおけば大きな問題はないのだが、やはりここはゲームの目的とその流れを確認せねばなるまい。
 ゲームの目的は「ヒロインを救出するため、段階的に『目標地点』に到達してゆくこと」である。
 本作のダンジョンはなかなか個性的な作りで、プレイヤーが実際に活動するステージ「エリア」が縦ではなく横に広がっており、10×10エリア単位の「グランドマップ」を構成している。
 「エリア」攻略時に東西南北から次に進みたいエリアを選択し、「グランドマップ」内のどこかにある目標地点へと移動してゆく、という内容になっているわけだ。
 例えば歌姫リィリィの救出を目的とした第1ダンジョン「旅立ちの旋律」では、グランドマップのどこかにそびえる「塔」を探し出し、これを最上階まで攻略して「ボスエリアへの転送装置」を起動、今度はこれを探し出して「ボスと対決」すればダンジョンクリアという流れとなっている。

 さらに細かい流れを見てみると、「エリア」内では様々なアイテムを回収することが重要となってくる。
 「エリア」は建物や壁などの様々な障害物と次のエリアへの転送装置で構成され、ザコキャラにあたる「エビルマータ」、踏むことで様々な効果を発揮する「トラップ」、その他さまざまな「アイテム」が点在している。
 ザコキャラのドロップや拾い物として入手できる「アイテム」の中には目的地までの距離や方角を記録した「ヒントドラム」というものが存在しており、これを集めることで目的地の位置を推測、グランドマップ探索の方向性を決めることが攻略の第一歩となるわけである。


 もちろん、「ヒントドラム」以外のアイテムも重要な物ばかりだ。
 探索を継続するためにHP、ZP(ゼンマイポイント)の回復アイテムは欠かせないし、全体攻撃や能力上昇といった戦闘補助アイテムは有るほどに心強く、マップ表示やエリア移動を手に入れれば探索がぐっと楽になる。
 そして何より、主人公ケイジの代わりに戦う強力な「パルマータ」が無ければゲームは非常に厳しい物となるだろう。
 「パルマータ」とはザコキャラである「エビルマータ」の部品を回収して組み上げた味方キャラクターで、攻撃力・耐久力ともにケイジを大きく上回る戦闘の要だ。
 エビルマータがドロップする「ボディパーツ」のうち特定の数種類を組み合わせることで作成することができ、同様にエビルマータがドロップする「武器」を装備させて使用可能となる。
 ボディパーツはエビルマータと同名の一種類が、武器もエビルマータの装備がそのままドロップするようになっているので分かりやすい。

 と、ヒントの取得、消費アイテムの収集、強力な戦力の入手、がエビルマータとの戦闘に集約されているため、本作はダンジョンRPGらしい「狩り(ハクスラ)」の楽しみが大きい。
 これに収集したヒントから目標地点を推察する、という推理ゲー的な面白さが加わって、本作「フォックスジャンクション」というゲームが形作られているわけである。


・ボリューム

 ・・・と、なかなか楽しめそうなな内容なのだ
 ネタばらしになるが、本作は先ほどちらりと触れた第1ダンジョンでリィリィを救出した後、第2ダンジョンでシルカを救出するとゲームクリアとなる。
 時間にして(おそらく)5時間ほどと、非常にボリュームが薄いのである。

 それも塔1つとボスエリアの入り口1つを探し出せばクリアとなる第1ダンジョンに比べ、第2ダンジョンは3×3、9倍の広さを持つグランドマップの中で4つの塔を順番通りに回った後ザコから鍵をドロップしてボスエリアの入り口を探し出すという非常にめんどくさい工程を踏まなければならないのだ。
 「順番通り」ということで、第2、第3の塔を道中で発見しても無視して通り過ぎるほかなく、第1の塔発見後は来た道を引き返すだけの退屈な内容となりかねない。
 第1ダンジョンはチュートリアル程度の短さ、第2ダンジョンは水増ししたせいでコンセプト崩壊、とどうしようもない。

 一応、クリア後に「トライアルモード」としてクリア時間を競う第3ダンジョンが登場するのだが・・・。
 こちらは2つの塔を順番通りに回った後ボス戦、という中間程度のボリュームとなっておりそこそこ遊べるものの、性質上ノーセーブでクリアしきらねばならず、気軽に遊べる内容とは言い難いだろう。


 なお、ゲームを中断する手段は主に二通り。
 一つは「DISCONTINUE」。任意の場所で行うことができ、現在の所持品や進行状況をセーブしてゲームを終了するコマンドだ。
 単にセーブしたいだけの時は強制終了の部分がうっとおしいほかないが、どこでもセーブできる、セーブ地点から再開できる、という点が魅力的である。

 そしてもう一つは「RETURN」。こちらも任意に行うことができる、一旦ティズの待つ控え室へと帰還するコマンド。
 ・・・なのだが、実はこのコマンドには使用すると所持品がすべて消滅しダンジョンもスタート地点からやり直しになるという副作用がある。
 早い話がいつでも全滅コマンドである

 もっとも本作にはアイテムを売買する街もアイテムを保管する倉庫もないため、一度ダンジョンに入ったらそれっきりでも全く問題無いのだが。
 全く問題無いのだが、それはそれで大問題な気がしなくもない。


・エリア

 と、ボリュームの薄いゲームではあるのだが、冒険の舞台となる「エリア」は豊富に用意されている。
 「第2ダンジョンは10×3の2乗で900エリア!」など数の話は置いておいて、全13種類+αと多彩なエリアが用意されているのである。

 プレイヤーが最初に訪れる「砂漠都市」、夜空と星座が美しい「夜の町」、コミカルな広告が散りばめられた「看板の町」、などなど、エリア毎にグラフィック、構成、音楽、などが大きく変化し、プレイヤーを楽しませてくれる。
 統一感に欠けると言われればその通りなのだが、繰り返しの多いゲーム内容にこういった変化が散りばめられているのはなかなかに嬉しい。
 特に音楽については質が高く、力強い風土を思わせる「草原」、幻想的な中に悲壮感を感じさせる「森」、の2曲は個人的に名曲として推しておきたい。
 これらエリアはグランドマップ上で色分けされているので、好きなマップを選んで進んで行く・・・というわがままも多少は可能である。

 ・・・まぁ、ここでも「茶色とあずき色と黄土色」や「緑色と黄緑色と深緑色」などと非常に見分けづらい分け方が混ざっているというオチが付くのだが。


・まとめ

 基本システムには魅力を感じる物の、実際に遊んでみると様々なところに粗さや薄さが見られる本作。
 細かいところを挙げれば「アイコンが一緒くたのため落ちてるアイテムが判別できない」、「アイテムを拾える上限数が表示されない」、「メニューを開くとせっかくの音楽が切り替わってしまう」、などキリがない。
 次回作があれば多少改善されたのかもしれないが、残念ながらその辺は冒頭の通り。

 とはいえ一応「狩り」や「推理」の面白さに触れられる程度の内容はあるので、それらのジャンルに興味があれば手を出してみてもいいかもしれない。
 決して傑作や良作と呼べる物ではないが、それを含め素朴で味のある一本である。


・ワンポイント攻略

 ・ゲーム開始後はとりあえずアイテムを回収しながら操作に慣れよう。
 ・パルマータのレシピを得たらとりあえず一体作ってみよう。強力な武器を装備でき、ゲームが一気に楽になるはずだ。
 ・アイテムは頻繁に整理して、強力なアイテム入手のチャンスを増やそう。





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