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テクストート・ルド アルカナ戦記せんき (SS版)
アルカナ戦記せんき ルド (PS版)


プラットフォームセガサターン
プレイステーション
開発ファルコン
発売パイ
発売年月日1997年 12月 (SS)
1998年 7月 (PS)
ジャンルカード/ボードゲーム
プレイ人数1〜4人 (マルチタップ対応、コントローラーの使いまわし可能) 
セーブデータ1ブロック、5ファイルまで
中断データ1ブロック
※パスワードでPS・SSデータ間での対戦も可能


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
超難解 単純 不安定 ロック調? グダグダ 付録にタロットカードの意味一覧付き!





・ゲーム概要

 セガサターン、プレイステーション両方で発売されたボード・カードゲーム。
 巷にタロットカードをモチーフにしたゲームは数あれど、本作の様に「正位置・逆位置」の概念や「小アルカナ」の存在を取り入れた例は非常に珍しい。
 その意欲的な姿勢には本格的な内容を期待せずにはいられないものだが、はてさて・・・?


・タロットカード

 本作の内容に入る前に、先ずは「タロットカード」について軽くおさらいしておきたい。

 現代では「タロット占い」で有名なタロットカードだがその起源ははっきりとは分かっておらず、研究者の間では「元々はトランプ(プレイングカード)のような遊戯用のカードだったのでは」という説がとなえられているらしい。
 と、言われて「世界」や「愚者」といったカードからトランプの様な遊びを連想するのは難しいだろうが、実際にその感覚は正しい。
 本来タロットカードは22枚の「大アルカナ」と14×4枚の「小アルカナ」から構成されており、遊戯のキモとなるのはこちらの小アルカナの方である(らしい)のだ。
 小アルカナは「剣(ソード)」、「杖(ワンド)」、「杯(カップ)」、「金貨(コイン、ペンタクル)」の4つのスートが1〜10の数札と「小姓(ペイジ)」、「騎士(ナイト)」、「女王(クィーン)」、「王(キング)」の絵札から構成されているので、なるほどトランプに良く似ていると言える。

 さて大アルカナの方はというと、これらに混ぜてジョーカーの様な切り札として使用された・・・らしい。
 それが近代に入って特に神秘的なものと関連付けられ、占いの小道具としての属性が強くなったのだという。
 大アルカナ22枚にはそれぞれ秘められた意味が存在しており、これを読み取って事象や運勢を占うわけだ。
 またこの「意味」の持つ方向性を示すのが、正位置、逆位置と言った概念である。
 例えば自由奔放や独創性を意味する「愚者」のカードは正位置では「天才肌」や「好奇心」を意味するが、逆位置では「無責任」や「注意力散漫」を意味するという。
 まさに天才とパーは紙一重と言うわけだが、まぁ余談は置いといて。
 そういった神秘性や二面性が人気を呼んだのかこの「大アルカナ」はさまざまな創作作品にも引用され、どちらかと言えば我々にとってもなじみの深い物となっているわけである。

 そうして大アルカナやタロット占いが人気を集めた分、小アルカナは非常に影の薄い物となってしまった。
 本作はその小アルカナ、大アルカナをひっくるめた「タロットカード」全体をゲームに取り入れた一本なのである。


・ゲームルール

 さてそんな本作のルールだが、本作は「ボード上の『ゴール』マスに止まる」ことを目的としてゲームが進行する。
 そのうえで、
 小アルカナの数札がサイコロの代わり、
 小アルカナの絵札が大アルカナの引換券、
 大アルカナが特殊な効果を持つスペシャルカード、
 という役割をそれぞれ担っている。まぁ簡単に言えばスゴロクである

 各プレイヤーはターンの初めにカードを一枚引き、手札に数札があった場合はそのカードを使用して移動。
 止まったマスの効果によってさらにカードを引いたり妨害用のモンスターを召喚したりしてターン終了。
 この間に絵札を消費して大アルカナを作ったり、数札を消費して大アルカナを変質させたりして狙いの大アルカナを発動させ進行をサポートする・・・といった具合だ。
 そのうえでゲームの舞台となるボードはいずれも特定の「分岐マス」に止まらなければゴールできない構造となっているので、手札に分岐マスに止まるための数札、分岐マスからゴールするための数札、を温存して進むのが一つのコツとなっている。


 ・・・と、わりとシンプルそうな内容なのだ

 問題は特殊な効果を発揮する「大アルカナ」の存在である。
 大アルカナは手札の絵札2枚、もしくは絵札1枚と数札2枚から合成可能なほか、止まったマスによって単体で入手できる。
 早い話があっさりと手に入るわけだが、その効果は

 全プレイヤーを振り出しに戻す「0:愚者」、
 他のプレイヤーを強制移動させる「3:女帝」、
 全プレイヤーの手札を破棄させる「16:塔」、
 自分以外のプレイヤーの手番を飛ばす「17:星」、

 といずれ劣らぬ極悪っぷり
 こんなのが22枚も存在するため、ゲームは妨害に次ぐ妨害で遅々として進まない。

 ・・・と、いうだけならまだしも。
 今挙げた効果は全て「正位置」の効果であり、大アルカナにはさらに22種類「逆位置」での効果が用意されている。

 「0:愚者」は全モンスターを召喚位置へ戻し、
 「3:女帝」は全プレイヤーの移動を1ターン禁止し、
 「16:塔」は全モンスターを問答無用で消滅させ、
 「17:星」は自分の次の手番を飛ばす・・・

 と、計44種類の効果を把握しなければ適切な戦略は組み立てられないわけだ。
 またこの正逆は手札に来た時点で決定され、自由にひっくり返すことはできない。
 正位置の大アルカナは手札の数札と合わせることで加算した数字の大アルカナに変質し、逆位置の大アルカナは同様に減算した数字の大アルカナに変質するため、その順番も含め効果を完全に記憶しておきたい


 ・・・と、いうだけでも相当キツイのに。
 さらに大アルカナは手札から「解放」するほか、特殊なマスである「祭壇」に安置してプレイヤー全体に特殊な効果をもたらす能力も秘めているのだ。
 当然、この効果にも正逆のバリエーションが存在する。

 分岐点に止まらなくても分岐ができる「0:愚者(正)」、
 全モンスターが移動禁止になる「3:女帝(正)」、
 戦闘の勝敗が逆転する「16:塔(正)、」
 全モンスターの戦闘力固定値が2倍になる「17:星(正)」、
 分岐点でも分岐できなくなる「0:愚者(逆)」、
 手番が逆回りになる「3:女帝(逆)」、
 他の祭壇効果をすべて無効化する「16:塔(逆)」、
 モンスターの戦闘力の固定値が半分になる「17:星(逆)」、

 その他、合計88種類もの特殊効果を使いこなして勝利につなげてほしい。


 もう勘弁してください。



・対戦

 さてそんな「ユーザーフレンドリー」の真逆を突っ走る本作だが、対戦のバランスはどうだろうか?
 まず、対戦モードで使用可能なキャラクターは「人間(ソード)」、「ドワーフ(ワンド)」、「エルフ(カップ)」、「ピクシー(ペンタクル)」、の男女計8名。
 それぞれ戦闘力や契約・守護カード(合成可能な大アルカナ)、召喚可能なモンスターに差があり、それなりに個性づけがなされている。
 ・・・が、低い戦闘力の代わりにあらゆるカードで移動力2倍の恩恵を受けられる「飛行」能力を持つピクシーが頭一つ突き抜けている気がしないでもない。

 もっとも、初心者同士だと毎ターン大アルカナの効果を確認してのグダグダ対戦となるうえ、えげつない妨害カード連発で人間関係が冷えかねないのでどの道対戦はあまりお勧めできないのだが。

 また、そんな内容でも物語本編に当たる「キャンペーンモード」を進めて契約・守護カードを更新したキャラクターを使用可能という、ちょっとした育成要素がある。
 これはプレイステーションのメモリーカードを持ち寄って対戦できるほか、キャラデータを記録した「パスワード」をメモしてプレイステーション版、セガサターン版の境界を越えた対戦が可能なのだ。
 そんな機会はまずないと思うが この点に限ってはなかなか心憎い計らいである。


・ストーリー

 ところで、本作のストーリーは世界から失われたアルカナの力を取り戻すために人間の若者が世界各地のアルカナ神殿を巡り歩く、というもの。
 ステージにいくつか分岐が用意されており、一周当たりのストーリーが短い周回プレイ向けの内容となっている。
 とはいえ、グラフィックは世界地図を背景に顔グラフィック1枚とメッセージボックスのみ、会話中のBGMは全編通して同じ、登場人物は対戦モードの8人から4人のみ、と恐ろしく簡素な内容でイマイチ盛り上がらないのだが。


・まとめ

 タロットカードを題材としたゲーム・創作作品の中で、大アルカナに加えて小アルカナも取り扱ったものはなかなか貴重だと言える。
 ただ貴重なだけで、ゲームとしては見事に破たんしているのが本作の概要なのだが。
 カードゲームとしてはデッキを組む面白さが無く、ボードゲームとしてはダイスを振る楽しみが無く、いずれにしても妨害カードの強さ・種類が過ぎていて対戦にならない、とどうしようもない。
 それでも強いて言えば・・・大アルカナ22枚、絵札16枚のイラストという若干の楽しみがあるので、余程のタロット好きならば参考程度に手を出してみても悪くないかもしれない。




・おまけ:モンスター能力表

・人間(ソード)
ペイジコボルド
1C+1
オーク
2C+1
ワーウルフ
5C、再生
――――
ナイトスケルトン
1C-2、再生
デュラハン
2C、再生
ヴァンパイア
4C+2、再生・吸収
――――
クィーンバンシー
1C-3、再生
フューリー
2C+1、再生
サキュバス
4C、飛行・再生・魅了
――――
キングリザードマン
1C+3
バジリスク
1C+8、石化
ワーム
4C+5
ドレイク
8C、飛行

・ドワーフ(ワンド)
ペイジグリフィン
1C、飛行
マンティコア
2C+5、飛行
スフィンクス
5C、飛行
――――
ナイトサラマンダー
1C+2
ワイアーム
2C、飛行
ワイバーン
5C、飛行
――――
クィーンワーキャット
1C+2
アルケニー
2C、呪縛
ラミアー
4C+4、吸収
――――
キングゴブリン
1C
トロール
3C
ギガント
5C
コロサス
9C

・エルフ(カップ)
ペイジホムンクルス
1C-2
キマイラ
3C
ゴーレム
6C
――――
ナイトゴースト
1C-3、再生
レイス
3C-8、再生
スペクター
5C-5、再生
――――
クィーンハーピー
1C-1、飛行
セイレーン
1C+10、飛行・魅了
バルキリー
3C+15、飛行
――――
キングインプ
1C
グレムリン
2C
デーモン
6C-8
マイルフィク
9C-9、飛行・吸収

・ピクシー(ペンタクル)
ペイジスプライト
1C-4、飛行・再生
シルフ
2C-4、飛行・再生
ジン
5C-8、飛行・再生
――――
ナイトロック
2C-6、飛行
コカトリス
2C+2、飛行・石化
フェニックス
5C、飛行・再生
――――
クィーンマーメイド
1C+1、魅了
ネーレイド
2C+1、魅了
スキュラ
8C-24、魅了
――――
キングマーマン
1C+5
マーフォーク
3C
サーペント
6C
クラーケン
10C-20






・関連作品

エンドセクター大アルカナをテーマにしたカードノベルRPG。
白熱する対戦と起伏あるストーリーが楽しめる。


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