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おねがいモンスター


プラットフォームニンテンドウ64
開発ボトムアップ
発売ボトムアップ
発売年月日1999年 4月
ジャンル育成RPG
プレイ人数1人〜(対戦可能)
セーブデータコントローラパック必須、1つ40ページ


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
難解 単純 粗雑 バリエーション少数 一発屋 500種類ものモンスターが登場!





・ゲーム概要

 相撲恋愛ゲーム「64大相撲」で知られるボトムアップが開発・発売した「64初モンスター育成ゲーム」。
 当時開発中であったポケモン金・銀をはるかにしのぐ500種類ものモンスターを搭載し、餌による飼育、分岐する進化、大陸規模の冒険、と本格的な内容を持つ大作
 ・・・の、斜め下に突っ走った珍作である・・・。


・ストーリー

 蒼い風を掴む広大な平原、黄金に輝く砂漠の砂、光をも遮る密林の露、生死が隣接する荒野と湿地帯・・・
 それはモンスターの巣食う大陸「ブライトン」と呼ばれていた。
 その名の示す通り幾多のモンスターがうごめく大陸である。
 人とモンスターの共存は、伝説の聖石「ベヘリウム」によって保たれていると信じられていた。聖石の存在が事実とも真実とも解らない未知なる物に、人の心は救われていた。

 大陸の北東、広大な平原に囲まれた城下町パステルップ。
 ここに一人の少年がいる。
 少年の父は、モンスターの心を理解し、モンスターの扱いに長けた、モンスターブリーダーであった。モンスターブリーダーという職業は、人命救助、土木作業、兵力、など様々な方面で活躍する。
 少年は小さい頃から父の育てたモンスターと会話が出来た。ブリーダーの特徴はモンスターとの交信(心での会話)ができることである。
 遺伝か、それとも小さい頃からの訓練かは解らない。
 しかし、ブリーダーになる前から少年は、モンスターの言葉を理解し、交信する術を身につけていた。

 この大陸では十歳の誕生日を迎えないかぎりモンスターを育てることが許されていない。

 少年の好奇心は時を重ねる毎に大きくなっていった。
 そして・・・今日、少年は十歳の誕生日を迎えた。

 (説明書より抜粋)

 ・・・という、なんとも期待をかき立てられるストーリー。
 変化に富んだ気候帯をモンスターと共に乗り越え、様々な形で人々の助けとなり、「聖石」の秘密に迫る冒険を繰り広げてゆく・・・という内容が目に浮かんで来ないだろうか。

 まぁ、結論から言うと全くそんな内容ではないのだが

 ゲームを始めた直後、布団の中で
 「きょうは ぼくの10かいめのたんじょうびだ
 「ぼくらのせかいでは 10さいになれば モンスターをそだてることができるんだ
 という説明セリフを一人つぶやく主人公(男の子)を見て、その期待は早々に曇ってゆくことだろう。


・チュートリアル

 ともあれ、そんなわけでモンスターブリーダーとなった主人公に、チュートリアルとして父からのアドバイスが与えられる。
 先ずは父からもらったタマゴからモンスターの赤ん坊である「プルリン」を孵化させる方法について。
 次に、「プルリン」を強いモンスターに育てていく方法について。

 モンスターには毎日「エサ」を与え、栄養と共に火や水といった「エレメンタル」を与えてゆく必要がある。
 主人公の父は、その上でエサを与える手順について説明してくれるのだが・・・。
 先ずモンスターのエサを入手する方法については、
 「おまえのモンスターで おまえのモンスターにあたえるエサをとってくるんだ
 と説明される。

 いや実際そうなのだが、
 「それだと野生のモンスターと変わらないんじゃないか?」とか
 「生まれたてのちびスライムにエサを採りに行かせるって酷くないか?」とか思わずにはいられない。
 実際、チュートリアル直後にエサ採りに行かせようとすると8箇所ある候補のうち8箇所とも成功率20%という絶望的な数字が表示されることだし。

 さて、さらに採ってくるエサの例について説明が続くのだが、その時の会話というのが


 父:「たとえば ふつうのマメをとってくる

 息子:「ふつうのマメ?

 父:「そう ふつうのマメだ


 である。
 「いや、息子さんはふつうのマメってどんなマメを指すの?という意味で聞いたんじゃないか?」とか
 「なんでそんなに自信たっぷりに断言するんだ?」とかツッコミをこらえきれないのだが、
 では普通でないものを含め何種類のマメがあるのかと「エサずかん」を開いてみると、

 ・NO.039 ・・・
 ・NO.040 しびれる魚
 ・NO.041 ふつうのまめ
 ・NO.042 あかいまめ
 ・NO.043 もえてるキノコ
 ・NO.044 ・・・

 と、2種類しかなかったりする

 8種類ある「石」シリーズや7種類ある「グミ」シリーズを差し置いてなぜこれをチョイスするのか、あるいはなぜそれらシリーズに「ふつうの石」や「ふつうのグミ」が無いのか、理解に苦しまざるを得ない。
 このほかのエサについても「くさった水」、「かれは」といったゴミ 虐待スレスレの食事やゲーム中の通貨をそのまま食べさせる成金フード「きんか」などツッコミ所を挙げたらキリがない有様となっており、バカゲーマーからすると大変おいしい状態となっている。


・モンスターのデザイン

 さて、そんなゲーム内容を詳しく見る前に、モンスターのデザインについて見てみよう。
 本作のモンスターは基本的に主人公(10歳)と同等〜肉まん程度のサイズとなっており、そのデザインも「カッコイイ」より「かわいい」寄りのものが多くなっている。
 例を挙げれば、

 ・モヒカンのようなヒレを持つ1頭身の恐竜「プチザウルス(NO.012)」
 ・2頭身のバニーちゃんがカメの甲羅を背負った「バニガメ(NO.061)」
 ・ボウリングの球にクジラをペイントしたような「クジラボール(NO.092)」
 ・リスのような尻尾を持つヒヨコ「ピーコ(NO.111)」
 ・ウーパールーパーのヒレが葉っぱになった「ハッパールーパー(NO.171)」
 ・二足歩行するミツバチに見えるカメレオン「ハニレオン(NO.212)」

 など。
 デザインのみを見れば幼稚園〜小学校低学年あたり向けといったところだろうか。
 実際、「スタケラトプス(NO.488)」など何体かのモンスターは「○○ ××さんがかんがえたモンスター」と小学生(?)などから公募した跡が見て取れる。
 ・・・「500体」というモンスター数を稼ぐために公募で水増ししたのかと邪推してしまうと、なんとも微妙な気持ちになるところだ。
 これらモンスターはゲーム開始直後から500体中498体までが図鑑に載っている本末転倒 親切設計ぶりなので、早速好みのモンスターを探してみるのも良いかもしれない。


・ゲームの流れ

 さて本作の流れとしては育てたモンスターに3種類のコマンドを指示し、大陸の奥部を目指したり人々の助けとなったりすることを目的としている。
 3種類のコマンドというのは、

 ・モンスター自身にエサとなるものを採りに行かせる「エサとり
 ・新たなエサの生息地やアイテムを探しに行かせる「ぼうけん
 ・困った人を助けるためにアイテムを取ってきたり強敵を倒したりする「おつかい

 の3つ。
 主人公はモンスターがそれらに派遣されている間、モンスターにエサやアイテムを与えたり、モンスター同士を交配させてタマゴを得たり、城下町で人々から情報を得たりして帰りを待つわけだ。

 ・・・つまり、主人公自身は最初の街から一歩も外に出ないのである。
 この他力本願っぷりを表現したのかと思うと、なるほどよく出来たタイトルである。

 さて、そんな本作には当然と言うべきか「時間を進める」コマンドがある。
 1、7、15、30日の中から進めたい日数を選び、モンスターが帰ってくるまでの時間をスキップする物だが・・・。
 日数を進めている間、外出中のモンスターが戦闘に遭遇すると強制的に戦闘画面となり、時間スキップが中断されてしまう。
 モンスター4〜5匹を一斉に派遣し、まとめて報告を聞きたい・・・という時にこそ使用したいコマンドであるが、その場合はエンカウント回数が上がるのでまるで役に立たなくなってしまうわけだ。

 かと思っていると、オプション内には戦闘の進行を「オート」にするという項目がある。
 モンスターにはオートバトル時のAIを左右する「かしこさ」というパラメータもあり、なるほどこれを活用すれば快適なプレイが送れるわけだ
 ・・・と、思うところだが

 ・・・実際にオートバトルにしても、戦闘が発生するたびに戦闘画面に入り、時間スキップが中断されるのは変わらないのである。
 それどころか、戦闘が始まると最初に「オート」か「マニュアル」かを選択する必要がある。

 オートの意味あるの?と思わずにはいられない。

 これで「オート」を選択し、モンスターが意味なく防御してターンを消費するのを苦々しく見ていると・・・
 次のターンも「オート」か「マニュアル」か聞いてくる。


 オ ー ト の 意 味 あ る の ?


 早い話が、バトルを「オート」にするのはモンスターの無駄な行動を眺めるだけの完全な地雷行為となっているわけである。
 ザラキを連発する神官のほうがよっぽど可愛げのある話だ。


・モンスターのシステム

 ところでモンスターの育成・進化について見てみると・・・これまた非常にややこしい。
 先ず、モンスターのステータスについて。モンスターの強さは、

 ・戦闘のほか「ぼうけん」や「おつかい」等の経験値によって上昇する「Lv」、
 ・Lvと共に上昇する「たいりょく」や「こうげき力」といった「能力値」、
 ・エサに含まれ、特殊技の威力を左右する「エレメンタル」、
 ・装備することによってエレメンタルを上昇させたり特殊技を使えるようになる「アイテム」、

 の4種類のパラメータからなる。
 一般的なRPGに置き換えてみればレベルとステータスはそのまま、「エレメンタル」は属性に、「アイテム」は装備に当たるわけだ。
 このうち最も重要なのは「アイテム」による特殊技だろう。

 以下の例は「育て方が悪い」と指摘されるとなんとも反論できないのだが、例えば「火エレメンタル」を装備して特殊技の「はな火」を使用した場合。
 最大HPが20強で、通常攻撃で17〜20ほどのダメージが通る相手に「はな火」が命中した場合・・・120ものダメージが入ってオーバーキル、という有様になったりする。
 1戦闘に1回しか使えないという制約こそあるものの、特定のエレメンタルを集中して上げ、強力な特殊技で瞬殺するのが本ゲームにおいて重要となっているわけだ。たぶん。

 さてそんな特殊技の威力を左右する「エレメンタル」の値には成長の限界値が設けられており、特殊技の威力が制限されるようになっている。
 だがモンスターは「進化」することによってこの限界値を突破することが出来、更なる威力の特殊技を放てるようになってゆく。
 モンスターの進化もまたエサから吸収した「エレメンタル」の量によって左右されるため、特殊技の成長を見据えて「どのようなエサを与えるか?」が本作の育成におけるキモとなっているわけだ。

 ところが、モンスターの進化には「真の進化」と「偽の進化」という概念がある。
 体内に蓄積されたエレメンタルが一定量になり進化するときまでに設定された「条件」を満たせたかどうかで判断され、満たせなかった場合はエレメンタルの上限値が解除されず、前の形態と能力の変わらない「偽の進化」となってしまうのだ。
 この条件は「ぼうけんを一回以上成功させる」や「エサとりを三回以上成功させる」、または「特定のアイテムを与える」「特定のアイテムを装備させる」といったものが設定されているのだが基本としてノーヒントであり、「たまたま条件を満たしていた」か否かで強さが変動してしまうのはどうにも釈然としない。
 こんなのが500体のうち進化先のあるモンスター全員に設定されているかと思うと、どうしようもなくやる気を萎えさせることだろう。


・まとめ

 このほかにも特殊技の演出で自社ゲーを広告してみたり、ライバルキャラが魅力のみの字も無いヤツだったり、風邪で寝込んだ祖母のために数日かけて塩水を採りに行ったり(自宅で作れ)、とネタになる部分ばかりでゲームとしての出来はどうしようもない一本。
 とはいえ500体もの子供向けモンスターに興味があったり、バカゲーとして刺激が欲しかったり、といった変わった楽しみ方をしたいなら非常においしい内容なので、そういう方向で根気の続く人ならオススメの一本である。





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