サイトトップ/ゲームレビュー/時空探偵DD2 叛逆のアプサラル


時空探偵(じくうたんてい)DD2  叛逆(はんぎゃく)のアプサラル


プラットフォームプレイステーション
開発SACOM
発売アスキー
発売年月日1998年 8月
ジャンルボイスノベル
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
簡素 キャラクターは活き活きしている 一枚絵中心 ほぼフルボイス 無し 声優ゲー?





・ゲーム概要

 前作「時空探偵DD 〜幻のローレライ〜」から2年の月日を経て発売された続編。
 パッケージの裏には「鳴神雷蔵の新たな冒険が始まる!」というコピーとともに前作の2年前を舞台とする旨が書かれており、新しいんだか古いんだかよくわからない時空探偵の世界を端的に表しているようである。

 なお続編とは言えゲームシステムはまるで別物となっており、3Dで描かれた前作とは対照的に本作は2Dイラストで描かれ、ゲームの進行も文章を読むことで進む。ともあれ、詳しい内容はこれから順を追って見てゆくことにしよう。


・ストーリー

 23世紀初頭。過去へのタイムトラベルを自由に行えるようになった人類だが、それは同時に時空を超えた犯罪の出現を意味していた。  歴史の改変、別時代への逃亡、絶滅した動植物の売買・・・そういった「時空犯罪」の出現と共に、それらを取り締まる「航時法」が制定され、因果律を保護する「航時局」、違反者を取り締まる「時空警察」が誕生することになる。
 しかし、増加の一途をたどる時空犯罪に対して時空警察のみでは対応しきれなくなり、航時局は小規模な事件に限り民間の捜査機関が介入することを認めた。
 「時空探偵」の誕生である。

 西暦2232年。「航時局准二等査察官」である鳴神 雷蔵(なるかみ らいぞう)は、インドのバンガロールにそびえる「アプサラル・センター・ビル」にて「反航時テロリスト」が仕掛けた爆弾の解体任務に参加していた。
 同時に任務に参加していた「航時警察機動二課」所属で「多頭多腕(ヘカトンケイレス)」属「磁界共振者(チップダイバー)」種の「特種遺伝子能力保持者(キメリアン)」であるカオリ・ラジルやプログラマーの活躍によって任務はあっさりと終了したものの、不釣り合いなほど物々しい装備に対しては疑念が残っていた。
 そして、鳴神たちが引き上げようとした、その時。急に停止していたはずの爆弾が再起動し、駆けつけたカオリ・ラジルを巻き込んで爆発。ビルの上部を消滅させてしまった。
 呆然と立ち尽くす鳴神の頭上には、証拠を隠滅するようにもう1発の爆弾が落とされていた・・・。

 時は流れ、西暦2236年。時空探偵として活動を始め、退屈な日々を送る鳴神の元に2人の少女が訪れる。
 依頼人の向島(むこうじま) ミフユと、付き添いの霧姫(きりひめ)・アイスマンである。
 依頼の内容は、幼い頃「時空遭難」に会った双子の妹、ミユキの捜索。始めはこの話に難色を示した鳴神であったが、依頼人が「向島コンツェルン」の令嬢と知り調査を開始。
 紀元前の中国に「時空旅行」したときに事故を起こした・・・という漠然とした記憶を元に情報屋の手を借り、紀元前212年の中国への航行記録を発見することに成功して鳴神ら一行は時空移動を開始するのだった。

 紀元前212年、中国。とりあえず時空移動してみたものの何も手がかりを見つけられない鳴神の前に、「航時警察」のタイムライドが出現する。なんと鳴神を「航時誘拐」の被疑者として事情聴取しようというのだ。
 訳がわからず立ちすくむ鳴神をよそに、ミフユと霧姫の二人が逃走。タイムライドを起動させ、鳴神もろとも時空移動を敢行した。
 ・・・聞けば、二人は家出して今回の調査に臨んだ、という。
 だが後悔先に立たず、目標を設定しない時空移動によってタイムライドは遭難し、辛うじて不時着した時空は因果律の外に存在する未確認時空間、「時空サルガッソ」であった・・・。


 ・・・というところまでがだいたい序盤のあらすじである。物語はこの「時空サルガッソ」を中心に進んでゆくことになる。
 ここまで意味のわからない専門用語が大量に出てきたが、心配はいらない。本ゲームはいつでもメニューから用語解説モードを開いて単語の意味を調べることができる安心設計なのだ。
 ・・・誰がわざわざ調べるか

 いや、わざとわかり辛く書いたせいもあるが、本作はこのように「設定」に対する強いこだわりがあるらしい。前作で生かしきれなかった各種設定を深く掘り下げ、前面に押し出したいという意図があったのだろう。
 そのため、ほとんど19世紀のドイツ飛行船だった前作と比べれば独特の世界観を表現することに成功していると言える。ただし、物語に入り込みづらいという欠点と引き換えに、だが。


・キャラクター

 ・鳴神 雷蔵 (CV:森川 智之)
  本作の主人公で、「バンパイア」属「トランシルヴァニア」種の「特種遺伝子能力保持者(キメリアン)」である「時空探偵」、通称「DD」。
  性格は一見「軽いヤツ」で女好きだが、物事の本質を捉える観察力・判断力をしっかりと備えた「決めるときは決める」タイプ。
  航時局査察官時代に不審な事故に巻き込まれた過去を持ち、まるで無関係に見える今回の事件を通して隠された真実を知ることになる。
  また、時空探偵となった動機は「行方不明の妹を探すため」ということが明らかになったが、本作でその設定が回収されることは無かった。

 ・霧姫・アイスアン (CV:横山 智佐)
  本作では中学2年生で、親友であるミフユの付き添いとして登場。口が悪く思ったことをズケズケと言う性格で、出会った直後は雷蔵のことを全く信用していない様子がうかがえる。
  今回の事件がきっかけとなってタイムライド操縦の才能が開花し、以降雷蔵の助手となって活躍してゆくことになるのだが・・・?

 ・向島 ミフユ (CV:白鳥 由里)
  今回の依頼人で、向島コンツェルンの社長令嬢。依頼内容は「幼い頃時空遭難にあった妹の捜索」。
  親友の霧姫とは対照的に内向的な性格だが、特殊能力遺伝子保持者や航時機械の話になると人が変わったように目が輝きだすという意外な一面もある。

 ・向島 ミユキ (CV:?)
  依頼人の双子の妹であり、今回のターゲット。幼い頃に紀元前の中国で時空遭難にあった・・・というほかの情報がなく、捜索は困難と思われる。

 ・鉄鼠 (CV:高木 渉)
  鳴神の古くからの友人で、さまざまな情報を貯蓄する情報屋「ビーバー」。

 ・小金井 浩一郎 (CV:宝亀 克寿)
  航時警察捜査四課所属の高等捜査官で、鳴神とは古くからの因縁がある仲。

 ・リリア (CV:根谷 美智子)
 サルガッソで出会った、カルナバン(カーニバル・キャラバン)の女性。鳴神達に協力的な態度を見せるが、なにか秘密がある模様。

 ・シュミット (CV:大塚 芳忠)
 カルナバンの団長と結びつく謎の男。


・システム

 さて本作のシステムだが、前作の「シネマティック・アドベンチャー」は忘れてしまったほうがいい。本作はキャラクターの会話を読んでいるだけでゲームが進む、「テキストアドベンチャー」形式なのである。
 合間にマップを移動するなりミニゲームをこなすなりするが、選択肢などもなく、テキスト送りボタンを押す以外にするべきことはほとんどない。
 強いて言えば、ゲーム起動後にいきなり「予告編」の文字が表示されてオープニングムービーが始まる、主題歌が設定されている、キャラクターがイラストで描かれている、ほぼフルボイスである、などの特徴から「アニメを意識したつくり」と言えなくもないかもしれない。
 特にキャラクターのイラストに関しては背景と人物が一致した「一枚絵」がほとんどで、使い回しが利かないという難点を覚悟してでも独特の雰囲気を構築する、という意欲的な姿勢が見て取れる。

 そのぶん「ゲーム」と言うより、キャラクターボイス付きの「ノベル」と言った方が感覚が近いので、推理や捜査に過度の期待はしない方が吉である。


・まとめ

 前作の続編ではあるが、それは「ゲーム」としての続編というより、「物語」としての続編と言った方が適切な内容である。
 そのためアドベンチャーとして謎を解いてゆくような内容に期待すると肩透かしを食らうが、「時空移動」や「特殊能力遺伝子」といった前作の設定に興味を持った人ならばそこそこ満足できる出来ではないだろうか。
 また、ボイスが豪華なことも注目したいポイントだ。


・設定と物語

 蛇足だが、タイムトラベル物というのは何かとSF考証と対立する宿命にある。
 「実際に時間を移動したらどうなるのか?」という実験結果がないため難癖に近い面もあるのだが、やはり考察が「あまい」内容にも責任があると思う。

 「時空探偵DD」の場合、行方不明の人物を追って時空移動することがさも当然のように描かれている。その人物が「時空移動した後」の時間や場所に移動するわけだ。
 だが、冷静に考えれば「時空移動する前」の時間や場所に移動して制止をかけたほうがよっぽど効率がいい。
 それと、行方不明だった人物と再会したら歳をとっていてあぁ残念・・・という場面がある。いや、歳をとる前の時空に移動しろ、と。

 そういった不自然な場面のせいで今一つ物語に集中出来ない方もいると思う。
 いちおう「DD2」ではパラレルワールドなどでパラドックスを説明しようとしているが、具体性に欠く上に二転三転しているような内容なので期待しないほうがいい。
 結局はその場の空気に流されて物語を楽しめるかどうかが本ゲームの評価を左右する一番の条件なのかもしれない。





・関連作品

時空探偵DD 〜幻のローレライ〜前作。だが内容は全くの別物で、小難しい設定も存在しない。


サイトトップ/ゲームレビュー/時空探偵DD2 叛逆のアプサラル