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DARK CLOUD(ダーククラウド)


プラットフォームプレイステーション2
開発レベルファイブ
発売ソニー・コンピュータエンターテイメント
発売年月日2000年 12月
ジャンルジオラマRPG
プレイ人数1人
セーブデータ390KB以上、その後1データにつきおよそ70KB。12データまで。


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
不自由なジオラマ 影の薄い仲間たち こだわりを感じる 上質で個性豊か 射撃キャラ最強 仕様変更の嵐?





※※今回のレビューはやや多めのネタバレを含みます。※※


・ゲーム概要

 PS2の初期に発売されたRPGで、開発はレベルファイブ。パッケージの裏を見てみると
 「”PlayStation2”が可能にした、新世代RPG」
 などと書かれており、PS2のハイスペックをふんだんに用いたRPGであることをアピールしている。

 同じくパッケージ裏から引用すると大まかなゲームの流れは「魔神によって破壊された世界を再生する為に、ひとりの少年が不思議な力を精霊から授けられた。自動生成”シャッフル3Dダンジョン”の中で”世界のカケラ”を探し、プレイヤーが自由に世界を再生する。」というものらしい。
 「危険がいっぱいのダンジョンで”世界のカケラ”を集めよう」
 「可能性は無限大!君だけの”街”をつくりあげよう」
 など、レベルの高いグラフィックスを生かした「ジオラマ」の面白さをアピールしており、否が応にもその内容には期待が高まるものだが・・・。


・ジオラマ

 先ずは、ジオラマの舞台となるマップを見ていこう。


 ・ノルン村
 主人公「トアン」が生まれ育った村で、最初に攻略するマップ。仲間になるのはネコ娘の「シャオ」。
 いかにも田舎の町といった感じで、カントリー風BGMの中で風車などを組み立てていくのはなかなかに和める。
 対応するダンジョンは「神獣の洞窟」で、前半はチュートリアル中心、後半はシャオの独擅場となる。理由はダンジョンの項にて。

 ・マタタギの里
 深い森に囲まれた、狩猟者たちの村。野生児「ゴロー」が仲間になる。
 枯れてしまった木の精霊の為に水源から水を引いたり、ゴローの親の仇「キラースネーク」を倒すために情報を集めたり・・・と、イベントが豊富。
 対応するダンジョンは「白ひげふくろうの森」で、軽快で幻想的な音楽が印象深い。

 ・クィーンズ
 交易の豊富な港町。最強キャラの「ルビー」が仲間になる。
 町の中央に運河が走っており、それに沿って存在する広場にさまざまなショップを設置してちょっとした市場を作ることが出来る。
 対応するダンジョンは「沈没船」で、囁くように流れるBGMが心地よい悲壮感を感じさせてくれる。

 ・ムスカ・ラッカ
 砂漠の民が住む土地。槍使いの「ウンガガ」が仲間になる。
 村に立つ巨大トーテムポールと家の前にあるトーテムポールを向かい合わせる「トーテムのしきたり」を守っている。
 対応するダンジョンは「太陽と月の神殿」で、その内装や敵キャラクターはピラミッドを思わせる。

 ・イエロードロップ
 空に浮かぶ2つの月の一つ。銃使いの「オズモンド」が仲間になる。
 ここではジオラマではなく、ラストダンジョンに乗り込むための巨大ロボットを作ることになる。
 対応するダンジョンは「月の海」で、射撃能力を持つ敵が多く現れ、難易度が高い。

 ・時の回廊
 ラストダンジョン。
 ここで組み立てるものは非常に特殊で、ジオラマでもなんでもない。
 ダンジョンの内容は今までの総復習で、さまざまなタイプの敵が登場する。


 以上6つである。
 というか、巨大ロボとラストダンジョンを除けばわずか4つである。


 では、具体的にはどのようにしてジオラマを組み立てるのか?手順を追って見てみると、

 1.対応したダンジョンからパーツを集める
 2.対応したパーツ同士を組み合わせて家を作り、対応した住人を配置する
 3.住人の要望に対応させてマップ上に配置する
 4.道や木で彩を加える

 といったところ。
 ・・・お分かりいただけただろうか。実は制約まみれでこれっぽっちも自由度なんて無いということが。
 さまざまな土地のショップを組み合わせて商業の街を作ることも、
 好きなパーツを組み合わせて自分好みの家をデザインすることも、
 果ては自分の好きな位置に好きなオブジェを配置することさえも、
 このゲームには許されていないのだ。

 もっとも、オブジェの配置については住人の要望を最初から無視してもいいし、叶え、報酬をいただいた後で配置しなおしてもいい。良心がとがめなければ、だが。


 正直、自由にジオラマを作成するジオラマゲーと言うよりいかにして住人全員の要望を叶えるかというパズルゲーに近い。ムスカ・ラッカのトーテムポールなどその最たる例だ。
 肝心要のジオラマパーツはそこそこに完成度が高く、個性的で作りこみもしっかりしており、主観視点モードで眺めているだけでもそこそこに楽しい。
 町の音楽も質が良く、どうしてこんなシステムにしたのか・・・ただただ、そればかりが残念でならない。


・ダンジョン

 ついでにダンジョンの内容を紹介しよう。

 ダンジョン内はアクションRPGのような作りになっており、リアルタイムで敵の攻撃を回避したり隙間を縫って攻撃したりして進む。
 そういうわけで剣を持つトアンは上手く相手の攻撃を避け、攻撃し終わった相手のスキを付いて闘うことになるのだが、最初のダンジョン中盤で仲間になる「シャオ」はパチンコで遠距離攻撃できるキャラクター。距離をとって攻撃しているだけでどんな敵でも倒せてしまう。
 普通は、遠距離攻撃と言うと威力が低いとか回数に制限があるとか、あるいはキャラクターの防御力が低いとかといった制約がつくものだが、シャオの場合は序盤であることもあってパラメータの低さが気にならず、「耐久力」という回数の制限に関しては剣を使ってもボキボキ折れてくれるのでどうでもいい。
 近距離武器でも遠距離武器でも、耐久力を回復させる「リペアの粉」が手放せないという、どこか理不尽なバランスとなっているのだ。

 そして、「遠距離が強い」、「武器の耐久力が気になる」という2つの要素を満たしたのが、ゲーム中盤で仲間になるルビーである。
 魔法の腕輪からさまざまな属性魔法を放ち、力を溜めることで耐久値の減少をそのままに威力を高めることが出来る。
 基本的に属性攻撃のため弱点も突き放題で攻撃力が高く、溜めなければ攻撃のスキも皆無で、防御力の低さなど近寄られる前に倒せるためほとんど気にならない。

 ・・・とまぁやりたい放題してくれているわけだが、だからと言って他のキャラクターの存在理由が無いわけでもない。ダンジョン内にはキャラクター固有のアクションでなければ越えられない障害などがあるからだ。
 ジオラマパーツはトアンでなければ拾えないし、途切れた道などはシャオで飛び越えなければ渡れない。ダンジョン内で自由にキャラチェンジできるため、そういう場面に出会った時がそれらのキャラクターの出番と言うわけだ。

 逆に言えば、トアン以外でゲームを進めているとアイテムを入手するたびにキャラチェンジしなければならず、非常にわずらわしいのだが。


・シナリオ

 一言で言うと行き当たりばったりである。
 思わせぶりに語られる「2つの月」は物語中1つしか登場せず、仲間たちは自分の町以外で一切登場せず、敵か味方か?ポジションの美形キャラは最初と最後に登場するのみで、そもそもその行動や正体がかなり唐突・・・などなど、やる気がまるで感じられない。
 それでも大まかなあらすじを紹介すると、復活した魔神に世界が滅ぼされかけているので、壊された町を元通りにして人々から情報を集め、魔神を再度封印する方法を探せ・・・と言った感じ。
 ちなみに魔神を復活させた踊り子の皆さんも、キャラが立ってる割に気がつけばザコキャラになっていた。


・まとめ

 そんなこんなでそこかしこに残念な点が見受けられるこのゲームだが、ジオラマの項で少し触れた通り音楽の出来はかなり良い。ダイナミックで幻想的なオープニングを始め、エスニックなノルン村の踊り、軽やかな「白ひげふくろうの森」、悲壮感ある「沈没船」、スローテンポなドラムが心地よい「ブラウンブーの森」・・・など、個性的で質の高い音楽がそろっている。
 ゲームバランスも大して難しくなく、攻略に手間取ることも無いはずなので、音楽を楽しむためだけに入手してみるのもいいかもしれない。


・ワンポイント攻略

  ・複雑でどうにも判りづらい武器の強化システム、「ステータスブレイク」。生成される合成玉は、パラメータをレベルの低い武器に移して再度レベル上げを行っていったり、他のキャラクターの武器に付けて強力な武器を共有したりとその用途は意外と広い。
  ・シャオの武器、しゃべるパチンコ「スティーブ」君。作中最も会話パターンが多い彼をダンジョンに装備してゆくと貴重なビルドアップ情報などをもらえるぞ!(大半は雑談だが。)
  ・なお、2週目などは無い。クリアしてTHE ENDの文字を見たら電源を落とす必要がある。





・関連作品

ダーククロニクル事実上の続編。本作の反省点が生きており、ジオラマの自由度・重要度がだいぶ増している。


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